2 瞬間移動を使ってみたら
「アリコスお嬢様!廊下は走ってはいけません」
「はいはい。もう行きましょう」
「はい。それどうするんですか?」
「剣は護身用よ。モンスターが出るかもしれないじゃない」
「そんなことは無いと思いますが…動物に襲われるかもしれませんね。アリコスお嬢様の腕なら十分でしょうが」
「じゃあ今のうちに素振りしておこうかしら」
「行きに時間がかかりますから、体力は取っておいたほうがいいと思いますよ」
セサリーは廊下の机で、アロマキャンドルと昼食の入ったバスケット置き換えて、出口へと歩き出した。
「?まさか徒歩で行くとか行かないわよね?」
「徒歩ですよ。馬なんてどこに繋いでおくんですか」
「はぁ…瞬間移動使える?」
「いいえ」
「じゃあちょっと試すわね」
(瞬間移動)
目をつむって、我が家とダンジョンの背景に使われていた森のイラストを、一本の線でつなげるイメージをする。やはり不思議なくらい立体的に見える。
呪文を唱え終えると、風のゴオオオッと吹く音がした。
ピロロッ
鳥のさえずりが聞こえる。
正直、杖を持っていなかったので失敗だと思っていたのだが、剣でも杖代わりになるのだろうか。
二度目のさえずりとともに目を開けると、視界一面に現れたのは常緑樹の森だ。
正確には、私達が森に現れたらしい。
「セサリー、ここがその山?…セサリー?」
だがそれさえ勘違いらしく、周りには私しかいない。どうやらセサリーを置いてきてしまったようだ。
「どうしよう。慌ててるかな?戻るべき?」
ちょっと考えた末、両手の重みから、自分がまだ袋とスケッチと真剣を持っている事に気がついた。
「道具あるし、せっかくだし薬草採ってこう。それまでに捜索が来るだろうし、こなければ安全を確保して寝れば、魔力量回復するっぽいし」
昨日本読んでいてよかった。魔力量が尽きると危ないのはわかったけど、そんなことで死んだらしたら元も子もない。
たとえBクラスなら大概使える魔法でも、連続で二回も使ったら尽きるかもしれない。
「でも重いな、この袋。アイテムボックっ…」
仮に取り出せなくなったらどうするんだ。試すものといえばマッチだ。
「マッチを取り出すには……ステータス!鏡…」
収納の反対ってなんだ。このままだと詰んでしまう。遭難して死ぬのも立派な死亡ルートだ。
「アイテムボックス、マッチ出現?発生?取り出し?開示?」
もろもろいろいろ口に出してみるが、どれも反応がない。
しかたがない。あれやってみるか。
足元に落ちていた枝を、杖の代わりに見繕ってやる。
(実体化)
即興の呪文だが、まぶたの裏にはうまく立体化してみえる。
唱え終わるのと同時に、目を開け、手元を探す。するとマッチの燃えカスが足元に落ちていた。
成功、してようだ。ステータスといいアイテムボックスといい、リアルの初見だとこんな使いにくいものなのだ再確認した。
だがもうこれで心置きなく使える。
アイテムボックスは当初と同じ便利道具として使っていこう。
「収納」
持ってきた袋とスケッチが次々と消えていく。
ホルダーにさした剣と、リュックのように肩に下げた袋。お嬢様らしい華奢な体にはまだ重いが、両手が開いて、意識が外に向けられるようになった。
それでは散策を始めよう。
後書き
読者の皆様へ。
この度、ツイッターを開設しました。
本当は数日前なのですが、割と他の作者さん達もここに書いているので、私も失礼します。
I.D.は真琉美蓮@小説家になろう
@nzQf0wETWUDPwtu
です。
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