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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
子供も魔法使いになれるかもしれない
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4 予想外の展開

ノエタールの走る様子が、アリコスの視界に入る。


「ところでアリコス、その本は魔法についての本か?」


またねと呟きそうになっていたアリコスを、セレルドの声が現実に引き戻した。


「そうですが」

「ああ。アリコスに言ったことはなかったか…。魔法関連の本はなんであろうと暴走しやすい。そういう場合に備えるため、誰であろうと持ち出しを禁じているんだ。倉庫の本はそれ以外ならなんでも借りていい。でもこれだけはだめだ。わかってくれるね?」

「はい」


(ノエタールのバーカ。こんな所にもあるじゃない。バカはどっちよ、バーカバーカ)


内心でノエタールの後ろ姿に毒づいてみる。

今度会ったら絶対からかうネタにしよう。

そこまで考える途中、ノエタールの『おじさん』の声が耳に蘇った。


「そうだお父様。さっき聞こうと思ってたのですが、ノエタールという人に会ったのですが、彼とはどういったその…」


なんといえば抽象的になるだろう。これで親戚だったら恥ずかしい。


「私の」


アリコスはごくりと喉を鳴らし、言葉を待った。


「友人の息子だよ。オルティース・ファリムスの三男。前にも話したつもりだったが、そうか。実はこないだも来ていてね、あかりを…どうちゃらこうちゃら…」


ファリムスってあのファリムス!?侯爵家じゃないっ!私が勝手に粗相をしたとなっては、お父様の友人関係を悪くし、お父様からの信用が下がり、もう貧乏性も貯金も認めてもらえなくなってしまう?

それはだめだ。


「お父様。ノエタール…様は次はいついらっしゃいますか?」

「そうだなぁ。私かオルティースの研究を見せる時かな。でも私のだったら来月中旬…」


あと5週間ほど。

そんな呑気なこと言っていたら、雪が降ってしまう。


「お父様!私にお手伝いできることはありますか?」


このアリコスの言動に、セレルドは大きな勘違いをしていた。

顔に騙されるなんていけないよ、と思っていたのはセレルドに留まらず、本の返却を任されるかと思っていたマクスも、ようやくアリコスを見つけたセサリーとカイもだった。

しかし期待の込められた目を向けられて、うなずかずにはいられない。それが愛娘を前にした親というものだと、セレルドは自負する。


「大した事じゃないが、いいだろう」

「やった!じゃあ早速行きましょう!」

「アリコスお嬢様、既にお夕食の支度が整っています」


側でマクスが声をかける。


「それなら夕食のすぐ後に行きます」

「アリー、夜道は危ないからまた明日来なさい。マクスに言付けを残しておくから、ね?」

「はい」


それなら一刻も早く寝て、あしたを待ちたいところだ。残った料理もみんなが食べてくれるし、思い残すことはない。そこまで考えると、今頃館に戻りたくて仕方がなくなっただろう。お父様が圧をかけていなければ。


「夕食はみんなで食べるものだぞ?」


見透かされた言葉に、アリコスは笑うしかなかった。


………

……


翌朝、寝ることを最優先にしたせいで倹約について、新しい指示に手がついていないことに気がついた。

セサリーもカイもうまくやってくれていて、この数日で随分館が片付いた。

そろそろマクスに、物々交換してもらえないか請け負うには頃合いだ。


「セサリー、そろそろ行こう?」

「ええ?でも今日もこのワンピースなんですか?」

「破れるまで使い回すんだからいいのよ」

「はあ」


資料によるとたとえばろうそくなんかは今、母屋にたくさんの市販のろうそくの在庫があり、その点こちらにたくさんあるアロマキャンドルは少なくなってきている。

他にもできればいいが、とりあえず、こういうのを対象として考えている。

それでもダメ元に違いはない。でももし場所がないのを理由とされても、この館には使え切れないほど部屋があるから保管もこっちですることもできる。

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