3 アリコス目線→ノエタール目線
ノエタールが居ないならわざわざ今日する必要もない。
第一倉庫に戻って、《知》の魔法への興味で、途中で放り出された本達をきりまで読む事に努めよう。
程よい眠気を持ち、一人っきりの倉庫で一人。この状態のせいでつい、色々と考えてしまう。
昔から図書館は絶好の遊び場だった。
ただだし、公園と違ってうるさくないし、姉はつまらながってすぐどっか行くし。
おかげで2時間とか3時間とか小説とか漫画読んでられた。小説も大半が恋愛物だから、純文学とか手付けてなかったけど。
そしてそんなに行く場所でもなかったからこそ、いつまでも最高な場所。
(あ、でももうないのか)
代わりに第一倉庫があるからね。ここに置かれている恋愛物の小説も、レイお姉様なら、ひとつやふたつ知ってるに違いない。
いくらゲームの世界で、いくら王道の登場人物に選ばれていても、フィクションの話が起きる確率は低い。トキメキは供給しなければ。
そういえばノエタールはどこに帰るのだろう。彼はどんな身分の誰なのだろう。カルレシア公爵家に仕える人間だろうか。
でも彼が誰であろうと、ゲームのサブキャラでない限り、いや攻略対象でない限り、また会いたい。初めて魔法を使うという神秘的な日を共にしたのは、何かの縁に違いない。
(いやでも、サブキャラの友人でもストーリーには巻き込まれるかもしれない。だけどスティラにはもう嫌われちゃったし、イネックとも会わないといけないっぽいし、どっちにしろ登場する?まあ今日はその手の事を考えたくない)
それにしても3冊か。
読み切れなかった2冊と読みかけの『魔法の使い道』を机に残し、手に持った2冊を返却する。
ここでは魔法といえば勉強だけど、結構読めたかも。
倉庫の敷居の手前で、真反対を向いて灯を消す。
「また来よう」
階段に人の居るような温かみを感じ、一人きりの場所に、そっとそうつぶやいてみた。
………
…目線が変わります…
…
「おじさん、ありがとうございました!」
「おおノエタール、気をつけてな」
これまで通り、ノエタールは本の持ち主に礼を言ってすでに歩き出した父の後を追う。一方少女は、彼らが数名の使用人に囲まれ、朗らかに言葉を交わす様を異様に思った。
「おじさん!?」
少女はパニックになったらしい。いきなり大声を発し、カルレシア公爵様の方に駆け寄った。
ノエタールは驚き、ゆっくり音源に顔を向ける。声で予想した通り少女は、赤いワンピースの、アリコスだ。
アリコスは僕と目が合うと、一瞬そらして公爵様と向かい合ったが、ちらちらとこちらの様子をうかがっている。
「アリー、どうした?リドは一緒じゃないのか」
「リドレイとは喧嘩したの。今頃ルードリックお兄様と遊んでるわ。あのお父様、あの子は誰?」
「あれはノエタール君だよ。こないだ話しただろう。ファリムス家の……」
立ち聞きするつもりではないが、つい聞こえてしまう会話に聞き入り、ノエタールは最初の2、3言分そこを離れなかった。
それからはダッシュでお父様の後を追う。
(んんん?待てよ、ルードリックというとカルレシア公爵家の後取り、つまり長男?ならそれをお兄様というアリコスは、……カルレシア公爵家のお嬢様か。派手なワンピース服だとは思ってたけど、まさかお嬢様なんて。あぁこんな所でなんでミスしたんだ!令嬢をバカにするなんて…)
ノエタールの中でめいっぱいの危険信号が流れる。
ノエタールのカルレシア公爵家への外出は、ノエタールが自分で本を読むために名乗り出ているだけの仕事だ。それがご令嬢の機嫌を損ねたとなると、二度と領地へ入れないかもしれない。




