6 お友達できたかもしれない
「10……んー?2っじゃなくて3!」
「あははっ惜っしー!12歳よ」
「は?嘘だよな?」
「本当よ?疑ってるの?いくつよ、ノエタールくんっ」
「12…」
「え?」
「お前に負けるわけねーじゃんバーカ!何がノエタールくんっ❤︎だ。きっしよー」
「❤︎なんかつけてないわよ、バーカ!負けたんだから大人しくアリコス様って呼びなさい?」
「お前が年上だったら俺が敬語で、三回勝負で勝ったらお前がノエタール様って呼ぶんだろ?だからノーカンだ」
「そうだったかしら」
「さっき自分で言ったことも思い出せないのか?さすがはバカアリコス」
「急に呼び捨てしないでよ、ノエタールのバカっ。それにレディに失礼よ?」
「何がレディだ。レディがバカなんて下品だぞ?」
「あんぽんたんに言われたくないですねっ。私は才子なのよ?」
家庭教師にそう言われてるもの。
「そうですかそうですか。その割には記憶力も知識量も残念なようですねー」
「なっあっあんたなんか、将来魔法で吹き飛ばしちゃうんだから!」
「そんな魔法聞いたことないんですけども?」
「ほら見なさい、ボロ出したわねっ。て、ば、うー低能!さて問題です。瞬間移動はなんの魔法を使ってるでしょうか?」
そのまま教えても良かったが、クイズ形式にすれば優越感に浸れそうな直感が働いた。
せっかくの機会だ。これを逃す手はない。
「魔法も何もそれはBクラスの特性で…いや?魔法なら、あ!」
「ざんねーん時間切れです!正解は《知》!」「《知》」
「かぶせてこないでよ!」
「ただのあてずっぽだよ」
「じゃあ理由は説明できないわね?」
「ぐっ…はい」
悔しそうにするノエタールを見て、どうしようもない喜びがこみ上げてきた。
さっき覚えたばかり知識で、うまく理解はしていないが勝ちは勝ちだ。
くだらない勝利だと頭ではわかっているが、私は単純なのかもしれない。そう心のどこかで客観的に自分をみている。
(アリコスはそういう子じゃないの。素直に喜びましょうよ、私!)
「やった、勝った!」
自分にできる最高の表現法。
それは想像以上に安易なものだった。手を思いっきりあげて、その表紙に本を落とす。
一連の動作にノエタールは吹き出して笑っていた。
「もうっ。瞬間移動は《知》の魔法の応用版で、Bクラスの、白に近い色の(パステル)物、全体が黒に近い色の(ダーク)物を隠せる魔法の消費量を、すべて20キロまでの物を触れずに動かす力に変換し…」
ふくれっ面でさっき読んだ内容を暗唱する。
きっとアリコスとして既に覚えている知識を組み合わせただけだから、覚えることも言うことも大して難しくないのだろう。
すらすらと言葉が出てくるに違和感も感じない。
「ちょっと待て、物を触れずに動かすはCクラスの魔法じゃ?」
「そう、なの?いえ、そうよ。それをなんかちゃちゃと?形式魔法を変えて、自分に使うらしい。私の言ってたのはそれを他者に…」
「どうやって?」
「どうやってって…!ねえノエタール君。魔法使った事ある?」
「なんだよ急に」
「閃いたの。今暇?」
「暇…?まあやった事ないけど。子供は使えないから」
「ふふんっやっぱり何も知らないのね。いらなさそうな、紐で縛られてる本持って外に出て」
「なに?僕なにかした?」
「色々してるけど、そういうんじゃないわよ」
聞けば色々教えてくれそうだから、たとえ新入りの使用人でも無礼は許してあげようじゃない。同い年でもバリバリ上から目線で、ノエタールに指示を出し、階段を降りていく。




