5 カタログ読んでて良かった
「…ところでノエタールさんは魔法に興味はないの?」
「あるけど、いまいちそういうのわからないんだ」
「というと?」
「大体の魔法は読むより実践した方がいいに決まってる。でもこういう知識は本からしらわからない。それならそれでって」
「え?でも魔法は魔術書から覚えるんじゃないの?」
「バカなのか?こんな場所に魔術書があると思うか?魔術書からでも魔力は暴走すんのにこんなとこに置いとけるわけないじゃないかっ」
「そんなはず…」
「本当になんにも知らないの?そういうのは全部ルィフラエル学園だよ!」
「そんな断言しなくても…」
「最後まで聞けっ他にも魔術書はあるにはあるらしいが、とにかくここにそういうのはない。そういうものなんだ。…これだからバカは…」
「バカバカ言わないで!ちょっと本を読んでるからってなによっ。まだ何十冊も読んでないくせに」
「何十冊くらい…」
「バーカっ!ここのよ!」
ノエタールは動揺を隠し真顔を貫いているが、アリコスにはおちょくった顔にしか見えない。
そんな顔したってなんにもならないわ。根拠くらいはあるのよ?この屋敷に人が入っても、うちの使用人パイプのせいで顔が知れるまではたった数日。それに引っかからない四、五日間で何十冊も読めるもんですかっ。私だってざっとなら20冊(弱)は読みましたよーだっ!…カタログだけど。
「…じゅういちだ」
「え?」
「21冊だ!僕の読んだここの本」
「え?」
「聞こえなかったかアンポンタンっ!」
「あ…?」
「僕のが多いだろー!」
「バーカっ聞こえるわよ!でも!私だって20…冊弱……読んだもん!」
「やっぱり僕のが多い。通ってる時間が違うんだよ!」
「はぁーー?これから読むもの、めいっぱい読むもの。それであんたなんか、あんたなんかさっさと越してやるんだわ!」
「じゃあ始めっ!」
ノエタールはニヤリと笑って、階段に積み上げた本を開いた。
「あーっ!」
アリコスも慌てて灯を持って来て読み始める。
しかし途中で気がついた。意味のわからない言葉のある本は読みにくい、と。小説を探しに行くのには時間がロスするし、どうしようかと悩んだ末、このバカの妨害をする事に思い至った。
「ねえねえ、魔力加護って何?」
「魔力を加護の形に変え、なんらかの加護を作り、人体に授けること、受けること。又はその事自体を指す」
「応用魔法って…」
「魔法を…魔法を応用させるんだろ?」
「あ!説明がある!なーんだ言ってるのと違うじゃない、バカねぇ」
そしてまた少し経つ。
「…形式魔法ってなに?」
「呪文を形式にあてはめて…あーうるさいなっ!辞書は向こうだ」
ノエタールにわからなかったものだと言うのは一目でわかるが、辞書のありかがわからない。
指さされた方向は棚がとにかく並んでいて、ここからの灯も通らず、真っ暗だ。
「魔法に辞書なんてあるの?どこに?」
「…ないっ」
「嘘つき!ねえなぁに?なぁに形式魔法って!」
「子供みたいなことすんな!」
「うるさいわねぇ、ノエタール君だって子供でしょ?」
「お前いくつだ?」
「私のが年上だったらアリコス様っていいなさい」
私の方が背高いんだから、年上の可能性高いわ。
「わかった。ふけてるんだな?年当てたら年上でもノエタール様って言えよ?」
「失礼ね。絶対当てられないから三回勝負なら受けてあげるわ」
「14っ」
「ううん」
「15っ」
「ううん」
「15ならそこまでチビじゃないか」
「まだ成長期だもの」
成長期過ぎたら男子にどんどん背越されていく、屈辱。まだ違うんだから。




