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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
さっそく始める倹約生活
46/121

2 仕事です2

「失礼します」


ドアを開くと、真っ先に目に入ったのは、座高と同じ高さに積まれた書類を前にしたお父様と、もっとたくさんの書類の山に囲まれた眼鏡の美男だ。

この男がマクス。本人曰く、犯罪者(盗賊)と、自分勝手な輩(親の威を借る貴族とか貴族とか)、時間を守らないやつが何より嫌いだそうだ。

ただし新しい記憶が蘇らないので、ゲームには登場しなかったのだろう。たぶん。科学の学問さえないこのご時世、眼鏡は高価で金貨1枚。なのに執事といえばの期待を裏切らない。

そうそう、あのマクスに仕事を押し付けているくせ、頑張っている風にしているのがお父様だ。


(あーダメダメ!アリコスはそんなこと思わない子なの)


あきれ顔になろうとひき下がっていく頰を強引に引き上げる。


(そうよ、お父様だって仕事はできるタイプだし、それでもあの書類の山には勝てないってだけよ。だから大まかな書類の仕分けは任せて、最終決定でサインだけをしてるんだわ)


「お仕事、大変そうですね」

「ああ。しかし今日二人が見たような領民、しいては国民を笑顔にできるなら、私はいくら大変でも構わないさ」


かっこいい事言ってるだけにも聞こえるが、マクスの書類をめくる音の速さといったら。


この気の遠くなる書類の山を、一日とは言わずとも、数日かかって終わらせるには十分な速さだと思う。よく見ているとお父様も目は通しているらしい。疑っていたのも不思議だが、忙しいのは本当なようだ。


「あの…」

「なんだ?」

「今日はいっぺんに多くのことを頼むので申し訳ないのですが…」

「なんだ?」

「少しの間、マクス様から館の管理について伝授していただきたくて」

「いいだろう。しかしあまり拘束するなよ。一日二時間までだ。そうでないと私の仕事が、その、より大変になってしまうからな」


さすがは親ばかだ。ものすっごく優しい。


「はいっ!!ありがとうございます、お父様っ!」


今はかつてなくいい反応で、笑って感謝してくる愛娘にデレデレだが、主の過保護な父親っぷりのせいで、視界の端でただならぬ殺気を感じるせいで、マクスは息が持たない。


「そういうことなら、すぐにキリをつけます。それと明日までにマニュアルを作りますから、その後はわからないことがあれば聞きに来てください」


つまりこれは危機感からの、遠回しの出てけというメッセージである。


「ありがとうございます、マクス様。ただ一つ、急いでいることがありまして」

「なんでしょう」


まだなにか。という表情で、マクスは答える。どうやら今のお礼のせいで怒りを買ったらしく、やはり背後からの殺気のせいで冷や汗が流れる。

もし仮にアリコスが部屋の中まで来れば、位置的に、視線でセドリックに簡単な弁解ができる自信がある。しかし断定した、書類の紛失とを天秤にかけて、マクスは執務室への招待を断念して、返答を待つ。


「これまでの我が家の金銭管理と、我が家の現在の物の在庫が確認できる書類、そして私専用の貯金箱が欲しいのです」

「わかりました。ざっと用意に3日ほどかかりますが、いいでしょうか」

「もちろんです。ありがとうございます、マクス様、お父様。それでは失礼します」


扉を閉めると、ようやく深呼吸ができた。

なぜかお父様とマクス様、ふたりともピリピリしていて、すっかり、緊張がぶり返してしまったほどだ。

部屋に戻ると、カイがまだタンスを運んでいた。


「あとはろうそくを全部運び終えたら、戻っていいわ。明日も来てね」

「わかりました」


アリコスの笑顔に、カイはぞくっとしたものを感じて、タンスを運んびながら明日の予定を思い返した。

一方アリコスは早々に布団に潜る。外出といい、貯金と管理の件といい、忙しく体力も使い、相当疲れていたようだ。ほどなくしてすぐに眠ってしまっていた。

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