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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
倹約という野望
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〜番組外編〜あくる日の夕食

普段通りの時間。

無駄にこった家具と、ちりひとつない床。

いつもは何日もせずに帰ってしまう、お父様、ルードリックお兄様、レイシアお姉様が座っている。

そして机の端までならぶ料理。

毎日毎日、気が滅入りそうだ。

夕食が随分進んでも、料理は半分も減らない。

こんなに残すのはもったいないと、たくさん口に詰め込む。

気づけばみんなの視線が私の口元に集中していた。


「アリーお姉様、リスみたいだね」


素朴に笑うリドにみんながどっと笑った。

アリコスはそんな言葉に色々と気を巡らす。

口に次々と運ぶのはお行儀悪かっただろうか。でもちゃんと断りも入れた…

『レイお姉様、もういらないの?』

要らなそうだったから、目の前に大皿を引っ張ってよそいきったら、

『え?』

とか

『リドお腹いっぱい?』

『ううん、これ嫌いっ』

リドレイのフォークで突く、端に追いやられたキャロー───人参と似た味、姿───を見て、思わずもったいないと思ったから、

『私がもらってあげる』

とか。

他にもあまり手をつけられていない肉料理などを自分の皿に移した。

けれどハイスピードで食べていただけで、教わったマナーはちゃんと守っている。

ほら。手元を見るとやはり、切り終えていない肉の塊がある。


(これだけ食べ続けると、せっかくのステーキもただの肉の魂に見える。もうお腹いっぱいかも。もしかしたら、腹十分目も超えてるんじゃないかしらってくらい食べたはず。でもあんなに残ってるし…)


でもリドにあんな風に言われるなんて、何より恥ずかしい。

でも可愛い。

もう一度ちらっと、リドの席を見る。すると笑顔でこっちを見ているリドと目があった。

可愛い、かわいい、KAWAII!

さすがゲーム。さすが我が家。


「アリーは随分寝込んでたからな」

「気にしなくていいわよ」

「ええ、大丈夫よ」

「腹減ってんのも無理ないからさ」


みんな口々に気遣ってくれている(?)ようだ。いやそうに違いないが、この状態は…。

キョトンとしているのはアリコスとリドレイだけのようだ。


「ほらアリーお姉様、これもあげるー」


そう言われて思い出したように机を見ると、まだまだ、ドーンと品がある。


(うん、まだ入るわ)


「もらうわ。でもね、リド。好き嫌いしてると大きくなれないのよ?」

「えー!大きくなきゃ、ナイトになれない?」

「ええ、騎士様(ナイト)はうんと強くて大っきくなきゃなれないわよ?」

「そうそう、ルーお兄様みたいにね!」


便乗してレイお姉様が言う。しかも、ルードリックお兄様の腕を掴んでいる。


「そっか…。じゃあ僕、アリーお姉様を守れるように大っきくなるよ!」

「それは楽しみね」


リドレイは、キャローを返そうかと思って差し出した皿に気付かない様子で、サラダのところから新たにキャローを取りわけた。

どうせなら食べてくれた方が…とは思っても、変わらないか。

そして決闘にとどめを刺すように、キャローをフォークに刺したリドは、そのまますこし見つめ合う。

そして大きな口を開けて食べる。

しばらく噛んでいたリドの顔が、なんだか歪んでいく。


「やっぱり美味しくない……」


またみんながどっと笑った。


………

……


そしてその翌朝。お腹の調子がすこぶる悪い。

やっぱり昨夜、食べすぎてしまったらしい。

それからは大量の料理に気を揉みながら、腹十分目で諦めるようにした。

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