6 実は不本意です
────私に大義があるからなのです!
(=私は貯金したいのです!)
「いえ、私には大義があるのです!お父様のような…大義(?)が!」
バラバラに拍手が送られる。
去り際のセリフのように自分の必死さをアピールしようと咄嗟に出した言葉だが、意外と説得力(?)があったようだ。
セサリーに至っては目を見開きながら涙を流している。
「そこで貯金をしたくて…」
「そうか。そうだったのか、うんうん」
「あれ?お父様?」
(涙目ですが…?勝手に深く考えないでください。だって……まだ、具体的に何をするのか、大義とやらについて決めてないのです)
言ってからはもう遅いし、このいい感じのムードで事は続けていきたい。
でも、これは期待されすぎるのも、困る。
「そうか、アリーはそこまで考えていたのか。そうと知らずに怒鳴ってしまった。悪かったな。いいだろう、お前の館のことは自分で管理しなさい。ただ夕食だけは譲らんっ」
お父様は軽く笑って見せると、目元を抑えた。
(あ、あれ?あれれ?また泣くんですか?)
「…ありがとうごさいます!」
でもどうしよう。嬉しいのに、すごく胸がズキズキする。
さっきのハンカチで涙を拭いているお父様に、そしてこちらを見ている家族全員と目を合わせられない。
そして私の複雑な心境には御構い無しに、ルードリックお兄様が、そっと私の右肩を叩き、館から出て行く。
「えっ?」
ルードリックはそのまま歩いていく。
特に大した意味もなく、ルードリックお兄様の座っていたところを見ると、席の前に肉が乗っていた。
(えーーー!ルーお兄様、話さないんですか?そして料理、まだお皿に残ってますけど?もったいないです!)
慌てて扉の方へ顔を向けると、ルードリックお兄様は扉を開け、外へ出たところだった。
「アリー!」
レイシアお姉様が両手を合わせて、いつになくにっこりしていた。全員がそうしているなかで、いまひとつ理解できずにぼっーとしてしまう。
(あの、なんだか私、すごく期待されちゃってませんか?)
何か大事なことを察した気がしたが、残念ながらプレッシャーは苦手なタイプだ。考えないようにしよう。順に館を後にする、レイお姉様、お母様、お父様を見送ると一つ溜息をついた。そしてアリコスも足早に扉を閉め、寝室へ急ぐ。
バタン
部屋のドアを思い切り閉め、身体をふわふわのベッドに横たえ、思いを巡らす。
「ふぅーー…」
予想外に予想外の輪をかけたような状況だけど、今日の成果は大きい。
多額の貯金をする許可、そして《アリコスの館》の倹約の許可を得る、という当初の目的は達成されたのだ。しかも家族全員と衝突することもなく、すごく上手くいった。
もうしばらく、食事については考えないようにしよう。
さて善は急げ。ここまで来たら即行動だ。
「セサリー!カイを呼んできて。他にも手が空いている人。急いでね!」
「はいっ」




