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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
倹約という野望
41/121

4 質疑応答

ノートから私の方へと視線が傾いた。


(くるっ!)


「アリー、家具に【シンプルかつ実用的な物が好ましい。生活するには机、クローゼット、椅子さえあればいい】と書いてあるがまさかこれで暮らすわけではないよな?」

「そうですが?」

「な、なんと言ったの?」


お母様が信じられないと言ったように声を上げる。

最初の敵はお母様か。お母様は時々無くし物をするから、なんとか組み込みたいな。


「必要最低限で生活するつもりだと言ったのです」

「それはカルレシア家の品位に関わります」

「何故ですか?お母様もレイお姉様も、令嬢方をお茶会に招く時、わざわざ部屋の全てを見せはしないでしょう?」

「そうだけど、そんなもので暮らせるわけがないわっ!アリー!」


お母様が椅子を立ちそうになる。

が、お父様がお母様の肩を押し返す。


「フィオラ、落ち着きなさい」

「でもあなた…」

「お母様、品位は全ての部屋の総合ではありません。人に見られる場所だけです。特に自分の部屋はプライベートですから、人を呼ぶことは滅多にありません。そうでしょう?」


お茶会ではバルコニーへ案内し、お泊まり会でもそこに一番近い部屋へと案内する。レイシアお姉様から聞く限り、伺う場合もそうらしい。

この聞き方に依然として下を向いているレイシアお姉様は、そのままそっと頷いてくれた。

ただしアリコスはまだ、お披露目会へ行ったことがないので時期に現れる取り巻きとも交友がなく、そういうことはしたことがない。


「しかし生活をする場所や、料理する場所など、頻繁に動く場所の物は壊れやすいのです。例えば、リドもまだ部屋で走ってはランプを壊したりしていますし」


ガラス製ランプ。うちで使っているものはお値段なんと銀貨5枚。日本円相当5万ほど。


(こんな高価なものをうちのリドはしょっちゅう壊している。と今更ながらにわかった。マクスを飛ばして今日言い出した理由は、夕食と被害が増えるまえに、一刻も早く改善したかったからだ)


リドレイが笑顔で若干肩をすくめた。

どうやら、うちの天使は賛成してくれているのかもしれない。

それだけで途端に嬉しくなった。


「加えて精密なものほど壊れやすいので、髪飾りとドレスの量を減らそうと考えた…」


まだ話の途中だが、お母様はまだ納得がいかないようだ。それどころか余計力が入った。

レイシアお姉様も、ルードリックお兄様もそうだ。三人とも流行には敏感だからな。

お父様も服には気を使うが、身じろぎひとつせず、アリコスをじっと見ている。正直怖い。


「…のも今言った通り、多くのものが値段に見合わずすぐに壊れてしまうからです。…レイお姉様?」

「何?」

「お気に入りだと言って二、三度しかつけなかった銀の蝶の髪飾り、ここ数ヶ月つけていらっしゃらないですよね」

「ああ。ええそうよ、随分前に壊れたわ。でもまだあるもの」

「それです。あの髪飾り自体がいくらからは存じませんが、銀貨8枚はするでしょう。それを三度しかつけていないとなると、一回あたり銀貨2枚と銅貨70枚。高すぎるとは思いませんか?」

「ええ。まあ…」


レイシアお姉様は引いてくれたようだ。

続いてルードリックお兄様が声をあげた。


「でも私の紋章の入った制服。あれは壊れやすいが、なくてはならない」

「存じています。それを含めた【必要最低限】です。あくまで量を減らし、【安価で壊れにくい部屋着】と、外に着ていく為の、これまで通りの【外出用のドレス】と、公務や学校用の【正装】を分け、場所に応じて着まわします。ルーお兄様も、まさか毎日買い変えたりはしないでしょう?」

「ああ」

「その感じです。加えてそしてパーティ用のドレスはこれまで通り新調する。こんな感じです」


アリコスが必死に話している間、セレルドはノートを読み返して感心していた。

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