1 倹約ノート1
「アリコスお嬢様、夕食へは着替えて行きましょうね」
「わかったわ」
セサリーはそうは言うが、アリコスはあまり汚れていないと思う。
だが日本でも部屋着と外行きは着替えるもの、という考え方もあった…気がするし、面倒なだけで大して嫌な気はしない。
「本当に教えてくれないんですか?」
「ええ」
晩御飯で話す事といえば、やっぱり倹約についてだ。
先に話してしまえば、何度も反対されることになりかねない。外出で既に疲れていることだし、これ以上面倒ごとは避けたい。
「セサリー、今日もって行ったノートを二冊とも見せて」
「これです」
「ありがとう」
今日見て回ったのは領地の極めて一部だが、そこで売られていたものは、ノートと比較してもあまり差はなかった。それぞれ場所によっては値段が違っていても、あまりにぶっかけすぎているということもなかった。
つくづく、カルレシア領はよく管理されていると思う。
「セサリー。私、先に着替えるところに行ってくるから、ノートを片付けてから来て」
「え?あ、はい」
念には念を。
ステータスは…
「よし」
出ていない。
「セサリーです。開けますよ?」
「どうぞ」
セサリーは着替えるドレスを持って、着替え室へ入ってきた。
(さてさてさてさて?)
外出してノートに書かれていた商品のなにが、どんな使い方をするものなのか、どんな使い方ができそうなものなのか、大体わかってきた。
しかし、同じ使い道でも売られている様々で、家の中にある、無駄に高価なものと交換できるものが、たくさんあることもわかった。
ついでに一度試せば、簡単に代用できそうなものもたくさんあるらしかった。
夕食まで少ししかないから、まずは部屋の要らないものと要るものをノートに分けていくことから始めよう。
着替えの時間でも、アリコスは十分に考えがまとめられた。
「終わりましたよ」
ドレスに着替え終えたらしい。
さて次はノートを用意しよう。
早速、本棚から【五冊目】のノートを取り出し、【倹約】と日本語で題を書く。そしてページを開いて、まとめていく。
まず【ろうそく】。部屋にあるものは香り付き、色付きのものばかりだが、全く無用である。
アロマで心が安らぐ、と前世で聞いた事はあるが、今日の夕焼けで再確認した。私は香りより景色で心が癒される。
なのでろうそくは白くて長細い、市販のもので構わない。
次に【家具】。当然部屋にはある。無駄にこった、タンスやら机やら椅子やら、とにかく色々だ。
しかしこれらはせっかくあるし、デザインも嫌いではないのでわざわざ変えるつもりもない。だがもし壊れたら、大半は買い替え不要、あるいはもっとシンプルなものにしようとしようと思う。
家具なんて使いやすければ、見た目なんてシンプルなくらいがいいのだ。
あとは【髪飾り】。これは精巧なだけに壊れやすいが、アリコスはこれまでじゃんじゃん買い替えている。
しかし記憶によれば、髪飾りは何点かを使いまわしてもいいらしい。それなら気に入ったものだけを晴れ舞台用に丁重に扱い、多くは安めのものを使えばいいだろう。