〜番組外編〜 夕暮れ時
日暮れの少し前に孤児院を出て、ルードリックお兄様達と合流する。
そこから屋敷へ向かうと、割とすぐ着いてしまった。
屋敷の中へ入ってからは、馬の足並みを一層ゆっくりとさせて夕焼けを楽しむ。
「夕焼けですね!」
「綺麗だな」
「はい、とても」
夕焼けには個々に思うところがあっただろうが、アリコスはなんだかヘトヘトになってしまった。
スティラがあんな子だったとは。でも転生者が何人もいるということは、他にもいる可能性があるということ。心細くはなくなっだが、神さまはなんていたずらをするのだろう。
ふと、そんな事を思った。
「夕日か。そうだな」
無関心を音にしたような、サイモンの様子にどきっとしてもう一度空を見上げる。
陽のお陰で空が赤く染まり、雲がそれをぼやけさせて、心を落ち着かせてくれる。その様子はとても綺麗だ。
こんなに綺麗なのになんとも思わないとは、サイモンは本当にそういう事に全く興味がないのだろう。
「綺麗」
後方からきこえる聞きなれた声の主は、セサリーだ。
ケーカは夕陽に照らされたセサリーの横顔を見て、また夕陽を見た。
たまたまそれを見て、凝視してしまったアリコスは、まるで青春ドラマでも見ているような気がしてならない。
(ケーカ、頑張れ!)
本日2度目の応援は届いただろうか。
こうしてもうすぐお出かけが終わる。
夕焼け鑑賞が終わると、みんな話に花を咲かせる。
「楽しかったですね!なあ、セサリー」
「うん。そういえば、あそこにいたコーミアったら、キャロー(人参と似た味、姿の野菜)が嫌いなんですって」
「リドとおんなじだな」
「ええ」
「そういえば僕の方でも言ってましたよ。誰だったっけな、多分マーカストーマスのどっちかなんですけど、料理がすっごくまずいらしいです」
「そんなに?」
アリコスはつい心配してしまう。
我が家では量は多いが、素材といい料理人といい、味はそこそこどころか一流だ。
「言い過ぎました。でもケイトとかもご飯はあんまり好きじゃないそうです」
「ふーん。金はちゃんと行き届いているはずなんだが…」
「そんな専門的な話はよそうぜ。そうだ、サイモンはどこ行ってたんだよ」
「ちょっとな」
「ああ。ちょっとな」
「ルーお兄様、何か困ったことでもあったんですか?」
「あーそれが…いや、今日の晩御飯で話すよ」
「わかりました。そうだ、私も晩御飯では色々話したいことがあって」
「何ですか?」
「うーん。私も、ちょっとね」
「いいじゃないですか、私にくらい話してくださっても!」
「事情が、いや大したことないけど、ちょっとね」
「もーっ」
「ふふふっ」
こんな風にセサリーがからかわれているのを見て、ルードリックも、アリコスが丸くなったと思った。




