3 孤児院へ行ってみよう
孤児院に着くと、アリコスは思っていた事を言ってみた。
「お兄様。私、身分は伏せておきたいの」
身分が高いからと寄付をせがまれてもお金も持ってきていないし、変にかしこまられるのも嫌だ。ついで、人の勝手なアリコスへの先入観と、身分差から来る他人行儀な話はしたくない。そう思ってのことだ。
「そうか、わかったよ。じゃあ俺は顔でバレるから、外で視察をしてくるよ。サイモン、ケーカ、どっちかアリーと一緒にいてくれ」
「俺が行く!」「僕が居る!」
「ハハハッ決まりだな」
アリコスはルードリックお兄様の返答に安心し、そしてケーカが即答でセサリーと一緒にいたいと言うなんて、とある意味感心していた。
孤児院の園長にだけ身分を話すと、なんだかんだで中へ入ることになってしまった。
「みなさん、今日はお客様が来てくださいましたよ」
「こんにちは。はじめまして」
「かわいい!!」
「お嬢様に可愛いとはっ」
「セサリー、いいわ」
先程かわいいと言ってくれた少女の方へ歩いていく。
金髪の、やはり整った顔立ちの女の子だ。かわいいもの好きの、クラスの中心にいそうなタイプに見える。
そしてその数歩横には横には白いワンピースの、気の弱そうな女の子もいる。
「こんにちは。お名前は?」
「私?」
アリコスは金髪の少女に向けて、こくりと頷く。
「シーマよ」
「よろしくシーマ。私は」
アリコスは言葉を詰まらせた。アリーと呼ばせようか少し迷ったのだ。
記憶によればすごく親しい、家族や恋人、友人の間でしか愛称は使わないそうだ。
それならどうせお忍びだし、適当に変えてしまおう。
「リコよ」
「リコっ!」
きっと後ろでセサリーが驚いた表情をしているのだろう。セサリーのかすれた声と、ケーカの押し殺した笑い声が聞こえる。
「リコ、よろしく!お人形さんごっこしましょう?」
「いいわよ」
「シーマ、僕もいいかい?」
「どうぞお兄さん」
「ありがと」
「お姉さんもやる?」
「え、ええ」
「ちょっと待てよ、シーマばっか!」
ガキ大将風の男の子が現れた。
「セ、セシルだっているもん!」
おお、見かけによらず強いんだな、この子。
白いワンピースの女の子がガキ大将に、声をあげる。
「そうよ!ケイトやローズだっているじゃない」
シーマが加勢する。
「だけど人形なんてつまんねーじゃんか。三人もいるのに女子ばっかズリーぞ!」
「つ、つまんなくないもんっ!」
これは喧嘩になりそうな予感…。
「じゃあさ、みんなで鬼ごっこするのは?」
すかさずケーカが仲裁に入る。
ナイス、ケーカ。
「それじゃ男子のが強いからすぐ捕まっちゃうわ」
シーマの返答に、周りの子たちは口を出す間も無い。だが、極めて正論である。
「シーマばっかじゃねーの、お兄さんが一番強いに決まってるじゃんか」
「馬鹿とは何よ、馬鹿とは!」
「馬鹿は馬鹿だろ!」
(あー、やってるやってる。子供だなー)
アリコスと同じ事を思ったケーカも、アリコスもそういう所が子供である。
「それならかくれんぼにしませんか?」
「かくれんぼ…」
「いいんじゃない?」
「いいね、しようしよう!」
「俺はそれでもいいぜ」
「俺もいいと思う」
セサリーの提案に、ケイトやローズと呼ばれていた子達、それとガキ大将と一緒にいた男の子達も賛成してくれている。
シーマもガキ大将も乗り気らしい。
セサリー、すごい。さすがこれまで、アリコスという個性派を相手にしてきただけある。
「それじゃ、よーいどんっ」
1回目の鬼はケーカで、その後何度か続き、ガキ大将ことコース、セサリーも鬼になった。




