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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
はじめまして、ヒロイン
34/121

2 料理していいですか?

馬に乗ると徒歩より随分早い。もう『マコリの花屋』が見えなくなった。


(全く、マコリ夫婦は一体どんな教育をしてきたの。一応言葉には気を使ったつもりだけどこんなのがいたら、例え私が“落ち着いた淑女”に教育されていたとしても怒るに決まっているわ!)


といった具合にアリコス自身は相変わらず、怒りが収まらずにいた。

しばらく経ってサイモンが、俺の考えた一番のプランが…、とブツブツ言い出した頃、ルードリックお兄様が声をかけてきた。


「いいのか?ちょっときつく言い過ぎだのではないか?」

「元々、お母様がスティラを気にかけていたので、少し見てみたかっただけですから。それにしても、あのスティラ、いえスティラさんは態度が少し、いや相当…」

「まあ俺も注意しようかとは思ったのだ。だが周りに人がいたからな。アリーが言ってくれて助かったよ」

「アリコス様!」


アリコスが、結局ルーお兄様もアイドル気質なんだなー、と思っているとサイモンが馬を隣に寄せ、声をかけてきた。


「スティラ嬢の事なんですが」

「ああ」

「態度はいつもあんな感じなのですが、妙に評判が良いようです」

「妙に?」

「ええ。なぜか評判が下がらないといいますか…」


ヒロイン効果、とかかな?


「まあそういう事もありますよね」


それならば考えても仕方ないので適当に答える。


「まあはい。でももし仮に、スティラ嬢がアリコス様の悪い噂を流しでもしたら、アリコス様の評判は一気に下がるでしょう」

「それはそれは」


ルードリックお兄様も事態を深刻にみたようで、真剣に考えてくれているらしい。

イネック王子推し。

魔力量も上。

しかも評判もいい。

アリコスにとっては難題だらけだ。

その時アリコスには閃きが舞い降りてきた。


「パンケーキ!餃子!クレープ!」


突然アリコスが手を上げて喜んだので、ルードリックお兄様はなんだ、なんだと困惑した。

『豆腐やタピオカを振舞って』

悔しくもスティラの言葉からだが、これを振る舞いさえすれば少なくとも、社交界の評判は下がらない。


(そうすれば…ぼっちは回避できるはず!!!)


悪役のアリコスとして、今後取り巻きになってくれるであろう令嬢たちの信用まで落ちるのは、どーしても避けたい問題なのだ。


「ルーお兄様。私、料理しても怒られないかしら?」

「うーん、どうだろう。もし油が飛んだら、もし火傷したら、もし魔法が暴走したら、ってお父様とリド、あとお母様が騒ぎそうだな」

「それなら……んー料理長に手伝ってもらえたりはするかしら?」

「どうだろうな。料理とアドバイスくらいはできるだろうが」

「そうね」


(それじゃあレシピがあればいいのよね)


イネック王子についてどうこうとはまだ言いようがないし、魔力量はもう仕方がない。

それならあとは、領内での評判を保つ事。

でもそれは割と簡単かも知れない。前世で読んでいた小説では王道だったけど、孤児院で何かすること。

小説のように運が良ければ、誰か味方になってくれるかもしれない。

でも悪役は、悪役ってだけで運が悪かったりして。


(今のは嘘よ嘘!むやみにフラグ立てていい事ないわ!今のなし!私は運がいい!…はず。人並みになら)


「サイモン様、領内に孤児院はありますか?」

「ええ。最初の城下町をまっすぐいったところと、この通りの突き当たりを横に行った所にあります。が、どうしましたか?」

「今度こそ様子を見るだけなんですが、次来た時に彼らが喜ぶことを何かしてあげたくて」

「なるほど。それはいい心がけですね」


どうやら領民への好感度上昇の意を察したらしく、サイモンは穏やかに笑った。

ルードリックも安心して提案した。


「それなら突き当たりの先の方がいいよ。前に俺が何度か行っているから、きっと優しく出迎えてくれると思うよ?」


セサリーはアリコスと目が合うと、よかったですね、と口を動かした。


「はい!」


後方では相変わらず、ケーカがセサリーの気を引こうと気さくに話しかけている。

実はルードリックとサイモンは、ケーカがただ話しているだけのようで注意深く周囲を見ている事を知っていた。そしていつもの女遊びも、実はサイモンとは別な諜報の一種であることも。

そして我ながら、よくできたチームだとルードリックは思うのである。

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