表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
私が私(アリコス)であるという事
31/121

4 頑張れ、ケーカ!

「さて、人混みで見にくかったかもしれないですが、今通ってきたのが領内で最も栄えている、城下町です」

「なるほど」


たしかに見にくかったかも。というか値札が全く見えなかった。

これじゃあ物価もなにもわかったものじゃない。


「やっぱり、ルードリック様は目立ちますね」

「ん?」

「その…美形が」

「そうか?」


ルーお兄様も、一応自覚はあるんだ。

でもまああれだけ騒がれてたからな。

サイモンは馬を降りて、地面にリュックを下ろし、中か緑の何かを取り出そうとしている。


「だからルードリック様は…」

「隠すんですか?」

「!はい、よくわかりましたね」

「今、マントが見えたもので」

「ああなるほど。お嬢様の分もありますがいりますか?」

「えっと、どうしましょう。かなりお忍び感ありますね」


マントを頭までかぶったルーお兄様が、なんだか不審者や魔術師のように見える。

これが日本なら職務質問されそうだ。


「まあ、マントですから。それでも集まる人はずっと減ると思いますよ。ルードリック様は人気者ですから」


ノートによるとマントは銀貨2枚前後。アリコスのこの特注ワンピースが銀貨5枚。

高い。つまり庶民には手の出せないものだ。

アリコスは、私はいいです、と断った。


「お忍びはよくするのですか?」

「ええ。でもマントがないとこの盛況ですから、普段はすぐに引き返します」


金持ちを見に来る見物客より、ずっと人を引き寄せるルードリックパワー。

妹から見ると、ルーお兄様の容姿や優しさ、カリスマ性は芸能人並らしいと考えられる。


「なあなあセサリー、僕は美男か?」


後ろでなにやら声が聞こえる。


(ケーカ。それは人に聞く事か、普通。)


思った通り、セサリーも苦笑いになっている。


「うーん、えっとー……突然どうしたの?」

「え?あっ!ああ!ほら、美男だったら俺も隠さなきゃ騒がれちゃうだろ⁉︎」

「それなら大丈夫。普通じゃない?」


今更だけど、ケーカはセサリーが好きなんじゃないだろうか。

さっきからの挙動不審さといい、今の灰になってるのがかわいそうだ。


「それよりケーカ」

「…それより…」

「昼食の食べれるような木陰はこの辺にある?」

「あああるよ。さっき言ってた花屋の近くだよ」

「わかったわ。ありがとう」

「…ありがとう⁉︎……」

「ああそうそう、この外出で女遊びはしない方がいいと思うわ」

「…そんなつもりじゃないのに……」


可哀想に、ケーカはまた灰になった。

それに気づかずセサリーは追い討ちをかけるように、ルードリックの方へ馬を歩かせる。


(セサリー鈍感すぎ!!)


「ルードリック様お似合いです」

「そうか」


そうでもないと思うのだけど。

誰がかぶろうとこれは不審者だよ。だって顎しか見えないよ?


「アリーはどう思う?」

「ぐっ……お似合いです」


負けた。

自身がマントを持ち上げて見える顔が、パッと笑顔になった。

みんなが馬に乗ると、両耳の斜め後ろで声がする。


「それでは行こう」


こうして何箇所か通りを周り、みんなが笑って生活しているのを見て、みんなで喜んだ。

買うことが目的ではないし、そもそももったいないので、買い食いはもちろんしない。


「この近くがさっき言っていた花屋です」

「そうだ!この少し先が丘なので、そろそろ昼食にしませんか?おっきな木があってちゃんと木陰だよ、セサリー」

「それなら、問題ないでしょう」


また後ろでケーカの喜びの声が聞こえる。


「やった!」


ケーカって案外可愛いやつなのかもしれない。頑張れ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ