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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
私が私(アリコス)であるという事
29/121

2 ケーカの自慢話

「大人しい馬ですね」

「ああ。この馬はお父様とお母様が普段、デートに行くときに使っているから、多分慣れているんだろう。馬は怖くはない?」

「はい。ちょっと高いですけど」


(中学の林間学校で乗った、ゴンドラに比べたら全然マシです!)


みんな無事に馬に乗り終わり、とりあえず屋敷の出口を目指す。その途中でケーカの自慢話が始まった。

ケーカ曰く、サイモンとケーカは特に腕が立つそうで、


「今はルードリック様と同じ部署に配属されて、俺らはとにかくすごくすごく大活躍中なんですよ!」


とのことだ。

だが幼少期よりそばにいたアリコスからすると、ケーカは女好きのイメージが強く、この話も本当かどうかはわからない。

だが時期にルィフラエル王国で最も有名な、『素晴らしい魔法団』の一人としてその名を知られ、ルードリックお兄様と共に戦う二人だ。なんでこんなダサい団体名なのかはゲームのシナリオライター聞いてほしい。私もぜひ改名すべきだと思う。

とにかく現役活躍中かはわからないが、優秀なのは確かだ。なぜなら三人ともルィフラエル学園の、魔導士養成科のエリート、1組の生徒だからだ。


「ルーお兄様も、ケーカ様もサイモン様もすごいんですね」

「いやいやぁ。僕なんかルードリック様に比べたら」

「当たり前だ。お前は俺と戦っても、いっつも負けてるだろ」

「それはいつもお前がズルするからっ」

「ズルじゃない。ケーカが連続技を見切れないのが悪いんだ」

「んな。お前だってこないだ僕の会心の一撃、全力で食らってたろ」

「いつの話だ」

「こぉ…こないだの!こないだの模擬練習だ」

「だからいつのだ?」

「…六回前」


ケーカがしぶしぶといった具合に答える。

きっとこの六回は負け続きだったのだろう。

その連続技で。


「そんなに練習するんですね」

「ああ。月8回模擬練習の授業があるんだ」

「ルーお兄様も?」

「もちろん。ルィフラエル学園※は庶民から貴族まで待遇が同じだ。いいことだよ」


アリコス達が話している間も、ケーカ達はやり合っていた。


「じゃあ今度は負かせてやる!」

「そっかそっか頑張れよ」

「なんだよ、その調子乗りやがって!」

「おいおい、そんなんじゃいつまで経ってもルードリック様の右腕にはなれないぞ?」

「はぁ?」「ん?」


話に入ろうともしないルードリックお兄様が、珍しく困惑している。


「なんだとぉ?僕はお前みたいな弱っちい諜報志望じゃなくて、剣士なんだ!ケンシ!」

「弱いだと?連敗してる奴が何を言う!」

「ちょっと待て!いつから俺の右腕がどうのとかいう話になってるんだ⁉︎」

「え?ずっと前ですけど?なあ」

「ああ。ルードリック様の右腕は俺で決まりだ!」

「勝手に決めるな!俺だ」

「だから、俺はそんなの決めてないっ」


男同士の話も見えないだけで、意外と複雑なのかもしれない。

アリコスがそう思った矢先、セサリーがたった一言仲間に加わった。


「あら、みなさんとっても仲がいいのね」

「ふふふっ」


本人は全く意識でしていないであろうセサリーの言葉で、ケーカもサイモンもルードリックお兄様も面食らったように静かになった。

今アリコスが思っているように、セサリーも子供っぽくてかわいいと思っていたのだろう。


(やっぱり女の子の方が賢いのよね)


そしてまた言い合う二人を見て、笑いがこみ上げてくる。


「仲良くなんかないっ」「仲良くなんかないっ」

「ハハハッ」


そしてルードリックお兄様が一笑する。

すると、ようやく静かになって屋敷の門が見えてきた。


「街だ!」

「ああ。アリーは見た事なかったかな」

「ええ」


ゲームでは王都なら見ていたけどね。


「アリコス嬢」

「何ですか、サイモン様」

「外出許可はカルレシア領にしか出ていませんが、どこか行きたいところはありますか?」

「今日は行き当たりばったりで構わないので、色々なところを見て回りたいです。それと…できればスティラさんのところへ行きたいです。見てくるだけなんですが」

「じゃあサイモン頼んだ」

「わかりました。たくさん見るのに一番効率の良いルートで行きましょう」


こうして、私のお出かけは始まったのだ。

ルィフラエル学園は、ルィフラスティラエル国立学園、別名 国立共立学校の学生なりの略称です。

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