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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
ひとつ折りたいフラグがある
26/121

2 今後も掃除はお願いね

掃除が終わったのは夕方らしい。

特に意味もなく、偶然出た廊下の窓から、埃だらけのセサリー達がまとまって第一倉庫から出てくるのが見えた。

第一倉庫が広いからか、結構な人が集まったようだ。

疲れていないのか、みんな笑って何やら話している。

レイシアお姉様のような恋バナを、彼らもするのだろうか。でもまただれかが付き合い始めたのなら、レイシアお姉様も昨日の夕食にはいたことだし、当然わかるはずなんだけど。

アリコスの見立ては間違っていない。彼らが盛り上がっているのは、セサリーの自慢話から始まった、アリコスが丸くなったことについてなのだ。


「まあいいわ。迎えに行こうじゃないの。それともう一回、綺麗になった倉庫を見に行かなくちゃね」


そうしてスキップしながら、館の出口へと向かった。


「みんなお疲れ様!」

「いえいえそんな」

「ええ、とーっても疲れましたよー」

「カイっ!お嬢様になんて口の利き方だいっ」


よくある感じで、レンドーが息子であるカイの頭を下げさせる。

まだ14、5歳の子供らしさと反抗期を持て余した感じが、懐かしくて仕方ない。昔の私も、お金に関してはこうだったんだろうな。


「ふふふっ」


自分と重ねてみると我慢しきれず、若干吹き出すように笑ってしまったのだが、どうした事だろう。

高笑いみたいな音だ。子供ってみんなこうだっけ?


「アリコスお嬢様、どうか長年勤めてきた私に免じて、この子をどうかお許しください」


急にかしこまり、90度に頭を下げようとするレンドーに、正直面食らってしまう。

しかしそんな様子を、本気で罪に問おうとしていると勘違いしたのか、レンドーの夫、ジルが土下座をし始めた。その横でカイも並んで土下座をする。


「え?」


すごく小さな声が口から溢れる。ひたすら動揺していると、その周りのセサリー達までどんどん膝を折っていく。


(ちょっと待ってよ、子供相手に土下座なんて普通じゃない。それともアリコスが、こうなだけ?)


そう思った瞬間、ゲームの画面が思い出された。アリコスにとってエンドのひとつとなる、罪状を読み上げられるシーン。それも婚約者のイネック王子や、リドレイの友人で騎士隊長で攻略対象の、そうだ確か名前は、キース。

『使用人にも辛く当たり散らし……』

『人を人とは扱わず……』

『罪を悔いず笑ってごまかし……』

etc。と終わり方(エンド)の台詞は様々で、正確な判決は覚えていないけど、やっぱりロクなことにはならない。

この笑い方がいつかの罪につながるのか。絶対に改善しなくては。

そして何よりこの状況はだめなやつだ。早く誤解を解かなきゃ。


「私、そんなつもりじゃっ。あの、みんな顔を上げて。カイも気にしないで。と…」


カイを友達と思っている、と言おうとしてちょっと言葉が詰まる。果たして使用人は友達でいいのだろうか。

よき理解者である事に違いはないはずだけど。


(そうよ、貴族社会について何か記憶はないかしら)


いつもスキップボタンを連打していたから、内容は覚えてないけど、そういえばアリコスも、貴族の作法には敏感なタイプだったからな。ヒロインに色々と口を出していた光景が思い出されるよ。

一刻も早く誤解を解かなければと思いつつ、最善の言葉を選ぼうと、病み上がりの頭を回転させる。

ちょいちょい記憶を掘り起こすと、なんとかヒットした。

結果は残念ながらアウト。でも親しくするのは構わないみたい。

では「と」の言い訳に、なんと言えばいいかしら。


「…とにかく気にしないで」


なかなかいい言葉が思い浮かんだ。


「だからみんな立って」

「本当ですか?」「いいんですか?」

「ぼ、僕も?」


レンドーとジルがハモっている。夫婦仲良いんだろうな。


「ええ、もちろんカイもよ。許すも何もはじめから何も思ってないわ」

「でもそれじゃあ…」


カイはすごく申し訳なさそうにしている。

これで私に怯えてるのが理由でなければ、すごくいいやつだ。


「あら、何かしたいと言うのなら、他の倉庫も頼もうかしら?」

「アリコスお嬢様、それは勘弁してくださいよ。今日のひとつだけで十日分はつかれます」

「どうせいつかやらないといけない事よ。ほら、頑張ってね!」

「はーい」

「元気が良ければもっとよろしいっ」


なんて言える元気は私も回復してきた。

カイも断る気は無かったようで安心した。それにしても中身は半分別人で、一般庶民の出?だから気を使わないで欲しい。


「それとね、みんなありがとう」


膝が白くなっている一人一人の顔を見て言う。言い終わり数秒経つと、みんなの口角が上がっていくから不思議だ。

何があったのかはよくわからないけど、とにかく喜んでくれているようなので、お礼を言う作戦は成功なのだろう。罪フラグをひとつ折れたようでよかった。

───後書き────

読者のみなさまへ

私、本日より、よりスピード上げて頑張ってみたいと思います。投稿スピードについて予定が変化したので現時点の予定をお知らせします。

週7日で毎日投稿していく事になりそうです。

再度申し上げますが、行き詰まったらまたお知らせして、投稿スピード戻します。

これからもどうか『貧乏性の公爵令嬢』をよろしくお願いします。


尚、この後書きは投稿スピードの変更について再度お知らせする日より30日をもって削除させていただく予定です。(まだその予定の目処はついていません)


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