5 ステータスオープンっ!
気になった私は鏡を凝視している───と思いたい───セサリーに声をかける。
「セサリー、今何かみた?」
「な、なにをですか?」
「文字見えた?」
「え、いやまさか私を疑ってるんですか?私、パスワードとか名前とか、ぜんっぜんみてませんからねっ!?」
自爆がひどい。こんな人初めてみた。
「セサリー、ちょっと…」
軽く睨み付けると、つり目が丁度いい感じに動いた。
そうだな、追い出して拘束して、記憶を消す魔法で、って今の私にできるのか?
(うーん)
「お、お助けください!」
「え?」
「これは今後一切漏らしません。私はアリコスお嬢様に一生使えます。だからどうか、クビにしないで?」
「ん、んん?」
なんだこの状況は。
「おば様からお言いつけなのです。だからどうか!」
なんだか懇願されているようだ。
でもどうしよう。1つ聞いてみるか。
「あのさ、転生者って普通?」
「い、いいえ?初めて聞きました」
「あそうよね」
困った。
一言に尽きる。
まあ後で処遇は考えておこう。
「悪くするつもりはないから、着替え室を出て、この部屋にいて。誰にも会わないで。食事は後にしてと伝えてね。この部屋、声は聞こえるから誰かに言ったらわかるからね」
つまり、ゆすった。
「はい!」
と、速やかにセサリーは着替え室を出た。
「ここで待ってます!」
しばらくみていたが、椅子を引きずって、着替え室のドアから10メートル、1メートル、2メートルと動かし、ちょうどいいと思ったのかそこに腰を下ろした。
聞こえ、ないわけないけどまあ仕方ない。
気を取り直して鏡に向き直る。
《同期化をしますか?
YES/NO》
YESを押す。
《同期化にはしばらく時間がかかります。データの同期化は24時間から72時間、ユーザーの体内で行われます》
なんじゃそりゃ。そう思っていると次のページが開いた。
《誰にもみられないようにステータスをあけたい場合は「ステータスオープン–フォアミー」
ステータスを閉じたい場合は「ステータスクローズ」
半径1メートル圏内の人にのみ、ステータスを見せびらかしたい場合は「ステータスオープン」
※それ以上の圏内にステータスを見せびらかす事は出来ません》
見せびらかしたいってなんだ。というか、私がやったのはこれなのか…。
あと1メートルって近くない?
そして次のページ
《ステータスにロックをかけたい場合は、かけたい部分のみ3秒以上押して「ロック」
ロックを解除したい場合は、鏡に人差し指を触れて「オープン」
ステータスを見せびらかしたあと、記憶を消したい場合は、ロック画面を表示し、相手の頭部に触れて「フォゲット」
10秒気絶し、ステータスについての記憶が全くなくなります
※ステータスを見せびらかした場合、その後7日以上経ってから記憶を消す事は出来ません》
随分便利な機能もあるものだ。
早速セサリーを呼んだ。
「ステータスオープン、ロック」
セサリーがどぎまぎしながら見ている。
そうだ。これをする前に1つ聞いておくことがある。
「ステータスってみんな開けるの?」
「ステータス自体聞いたことがありません」
「ゲームの世界ってあると思う?」
「ははは、そんなわけないじゃないですか!」
すっごく笑われた。
(私はね、セサリー。ゲームの世界にいるんだよ!!)
「フォゲット」
おでこに指先を上げて唱えると、セサリーは気絶した。幸い着替え室の椅子に座らせていたので、ガタンとか変な音はしなかった。
さて、その間に
「ステータスオープン–フォアミー」
《ただいま同期化中です。
同期化にはしばらく時間がかかります。データの同期化は24時間から72時間、ユーザーの体内で行われます》
同じのが出た。するとページが変わった。
《ヘルプを見たい場合は、ヒントを押してください》
もろゲームだ。
ヒントを押すと、
《「ステータスオープン–フォアミー」について
「ステータスクローズ」について
「ステータスオープン」について
「ロック」について
ロックの解除について
「フォゲット」について》
一覧が出てきたようだ。
試しに「ステータスオープン–フォアミー」を押すと、さっきと同じものが出てきた。
セサリーがうなりながら目を開こうとしたので、慌ててステータスクローズと言って、場を誤魔化す策を講じた。




