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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
魔法ってできるんですか?
15/121

2 トレースでさえ(?)難しい

「それでは私がお手本を作るので、同じように書いてください」

「わかったわ」


魔法陣といえば丸い円に色々書き込んでいく感じだ。

セサリーはその通りに書いていく。

ただ1つ面白かったのは、この国でいう漢字を書いたこと。

意味は模写トレースである。


「そのまんまね」

「ええ、まさにそうです」

「あー、うまくいかなかったらやり直せるの?」

「もちろんです。念のためたくさん用意しましたから」


セサリーは横に3つ、筒状にしてある新品の反物を手で示して見せた。


「私がそんなに失敗すると思うの?」

「お勉強もダンスも、なにもかも努力していらっしゃるアリコスお嬢様でも、可能性は十分にあります」


その通りだ。私はいつだって頑張っている。決して天才肌ではない。しかもそれを続けるのだって、由緒ただしいご子息や、王子であるイネックに嫁げるように。両親の期待に応えるように。

でもこれは魔法が楽しそうだと思う、自分の意思でやってのけたい。

だからこそセサリーの言葉に、燃えてきたのだ。


「きっぱり言ってくれるわね」


アリコスは躍起になって答えた。


「十回以内で成功する。かけてもいいわ」

「わかりました。なにもかけなくていいですから、頑張ってください」


先程セサリーのやったように円を書く。

これが意外に難しい。布なのでぐにゃっとなって余計うまくいかないのだ。

こうして2枚無駄にした。

そうだ、試しに紙に鉛筆で書いてみればいい。

こないだのノートの上に円を書く。何度も何度も何度も何度も。もちろん同じページで、だ。


「失敗」「失敗」「上手くいかない、」「あー」「もうっ」「これも失敗」「これも」


何度も何度も……。

セサリーが布を切る音がする。

そして、


「できた」


この手の感じを忘れないうちに筆に持ち変える。

今度は緊張しているうちに墨が垂れてしまった。

次の布に取り替える。


「丸っっっ」


墨に気をつけて円を書く。

今度はうまく行った…かと思いきや、丸がなんというか、またもやぐにゃっとしてしまった。


「セサリー、まち針ない?虫ピンか、普通の針でもいいわ」

「ふふふっさっき、動かないようにしてたのバレちゃいましたか?」


なんとなく胡散臭い。


「実は、魔法かけてたんです」

「魔法?」

「ええ。でもそれはアリコスお嬢様もいつかできるようになりますから、今日は針を持ってきます」


こうして縫い針を四方にさして準備完了だ。

今度こそ綺麗な円を書きたい。

一応できたにはできたが納得がいかない。

今度は太さが均一ではない。


(習字習っておけばよかった)


マナーの一環としてペン字は習っているが、習字は筆の持ち方くらいしかやったことがない。

しまったとつくづく思う。

書き直そう。

また一枚、また一枚と布が減り、あと2枚になった。


「布はまだありますよ?」


見透かしたようにセサリーは言うが、能天気な彼女にそんな芸当はできないだろう。

ムッとしてしまう気持ちをこらえて、深呼吸する。

ゆっくりと丁寧に動かす。

さっき上手くいった円のように、結構綺麗にできたと思う。


「できた」


次は文字だ。

これは簡単だ。字を潰さなければいいだけだ。


「ほら、できた」

「上出来ですね。さて、もうこのあとは簡単ですよ。紙にこの布を重ねてください」


言われた通りにする。

セサリーが布を押すと、真似て押す。

開いたノートに布を押すと、真似て押す。

セサリーが布を持ちあげると、魔法陣だけが発光していた。

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