5 放任主義
【作者より】
投稿完了ができていなかったようで、すみません。
カロとセサリーに調べものをさせて、アリコスはマリコッタと授業をする。セサリーの仕事はカロにまかないを届けに来た、カロの母、レイチェルを呼び止めて頼んだ。
こうしていくらかの資料ができて、アリコスは満足げにノートを埋めていく。
(気付かなかったけど前世ではネットは繋がってたから実質なんでもできたのね。ちょっとでもTEDみててよかった。どうせならプレゼンの仕方も調べておくべきだったけど)
もちろんTEDほどの出来ではないが、アリコスは約4日でマリコッタへのプレゼンテーションの内容を完成させ、練習を始めた。
「カロ、まだ時間ある?」
「すみません、そろそろ父さんのところいって大工仕事手伝って来なきゃいけないんです」
「そう。ならいいわ。セサリー、相手をして。自分がマリコッタさんのつもりで、私の話に対して質問をして」
「え?私ごときに務まるものでしょうか」
「いいのいいの、きにしないで。さあ、始めるわよ」
………
……
…
「ですから、旦那様がおっしゃったのです」
「ほんとにいいんですか?」
マリコッタによると、さきの倹約計画の折、「面白いじゃないか」というセレルドの一言でアリコスの放任主義が決まったそうだ。
「もう3度目ですよ。社交界のマナーとしてはあまりしつこいというのも…」
「ええ、わかりました、分かりました。大丈夫ですからっ」
「はあ…。」
大きなため息をつかれてしまった。
「ああそうだ」
アリコスは今度こそ何かあるだろうと気張って話をきく。
「商売時は良いですが、カルレシア領を抜けると関税が発生しますから。くれぐれも他の領家と無駄なもめごとは起こさないように」
内容にアリコスをいさめるようなものはやはりなかった。
「はい」
「頼みますよ?」
「あの、マリコッタ様、今回、アリコスお嬢様はエマンセペットに販売を代行するそうなのでそのあたり、問題はないと考えます」
「そうなの」
「はい。メイトが教えてくれました」
「メイトが…」
アリコスにはマリコッタが明らかに眉をひそめるのが見て取れた。
(使用人と親しくしすぎるなって言いたいのね。これからは言わないほうがいいかしら)
「そ、そういえば、リドも最近厨房に良く出入りしていたようですが…」
「まあ。リドレイお坊ちゃままで…はあ。」
マリコッタは自分で注いでいたお茶を半分近く飲み、吞み込んだ。
「アリコスお嬢様、リドレイお坊ちゃまとは距離を取られませ」
「金融にご興味がおありですし、領内の町の金銭に触れる経験は大いに結構。勉強態度も(少し前とは)比べ物にならないくらい素晴らしいです。ですが、旦那様のご好意をどうか無下になさらないでください」
アリコスは自分が何も言えなくなっていることに気がついた。
「わたくし、アリコスお嬢様がレイシアお嬢様であれば金融は絶対にお教えいたしませんでした。しかし近年は承認が男爵や子爵の地位を買う時代。貴族に多少の余計な知識があってもよいでしょう。ですがリドレイお坊ちゃまはまだとても幼い。簡単に影響される。ことにアリコスお嬢様の事に関しては一層でございます。一生の価値観の決まる年頃に余計な知識などは不要です」
「お返事は?」とマリコッタさんは強い口調できいた。アリコスは「…分かりました」というほかなかった。