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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
何かが変わる予感
118/121

ツヤツヤコックのディールさん。

【作者より】

明けましておめでとうございます!

作者の2021年のやり残したことは、受験の為来年分まで書きためることでしたがこの通り。ww

読者のみなさんはいかがでしょうか?

今年も『貧乏性の公爵令嬢』をよろしくお願い致します。


「あれ、待って?」


みんながきょとんとしている。


「私が何を言ってるか理解する前に意見を聞くけど許してね」

「はい」

「僕にできることであれば」

「メイト?」

「ほんとに大丈夫ですって」


ハレルドはメイトの視線の先にある、生き生きした様子のアリコスをみて笑みを漏らした。誰かを楽しませようとして自分まで楽しんでいる、ケーキを作ったアリコスの顔だったからだ。こういうときは大抵面白いことが起きると、ハレルドはセレルドを通して知っていた。


「領民にいい噂を聞いてもらうには?」

「さぁ?」

「メイトスパッと。思い付いたのでいいから」

「えっとご飯中ですかね」

「なら店内で食べるものよね」

「はい」

「クッキーは店で食べる?」

「そうでもない、ですね」

「あ、でも歌いながらものを売る売り子はいい宣伝になりますよ!」

「売り子!」

「ねえ、領民に人気のある売り子はだれ?」

「そうですねぇ……」

「何を言っておいでですか。エマンセペット達はすごく有名ですよ」

「エマンセペットって?」

「え、アリコスお嬢様もこないだお会いになったんじゃないですか?大体の孤児院は、売り子として生計を立てているのです。なかでも…あ……」


メイトの失言をハレルドはいいから、となあなあにして引き継いだ。


「カルレシア領の寄付だけでは運営ができないのです。入るひとが増えてしまって…」


なにとなく重苦しい空気だ。


(孤児。そうか、ケイト達もみんな…。)


初めて親がいることの暖かみを不公平だと、いやきっとそれ以上にその幸せを噛み締めた。

 

(信じられないわ)


「ああ、それであそこの孤児院は増設工事を繰り返してるのね」

「セサリー?」

「ああ、アリコスお嬢様。お気付きになりませんでしたか。あそこ、ご飯を食べた大きな講堂の隣は別館になっているのです。外は庭になっていますが、少し狭い印象を受けました。エマンセペットの飼育小屋も変な位置にありましたし、移動されたんじゃないかと、すこし気にしていたんです」

「そうなの」

「ああそういえばあそこのエマンセペットはもとは領内で飼育されていたものなんですよ。僕らもともと飼育当番だったので、見たときピント来たんです」

「あ、僕は今もだれがだれってわかりますよ。僕はお陰さまで飼育当番週一になったので」

「こんにゃろー名前はつけるなってあれほどっ」


両方のこめかみを拳で押している。本当にやっている大衆は生まれてはじめて見たが、見ていて痛い。


「あーいたいいたい」


(…うぅっ…)


「ポンとポンデとリンとリングだけです!四つ子だったから、かわいいな、と」


(あ、照れてる…)


何度でもアリコスはおもう。この世界の住人はビジュアルがいい。


「愛着がわいたら殺せなくなるだろうが!」

「ハレルドさんが殺さないなら僕は万々歳で…」

「お前にやらせようか?」


家畜を殺す。食べる為にする行為だが、その辺りは実装されていないらしく、このあと聞いたところによるととても生々しいらしい。カルレシア公爵家邸宅の厨房係は特に決まっているわけではないが、ハレルドが率先しているように感じられる。

ところで、ハレルドがそうであるように貴族も解体をする。巷の女もするが、女の貴族はそれを避けるというのが一般的らしい。だからアリコスも無駄に関わろうとは思わないでいた。


「い、いえ!」

「……はぁ。無理にしろとはいわないが、殺すことに罪悪感を覚えないやつはいない。俺なんかは特にそうやって育ってないからな。でも名前ってのは相手の存在を強くする。哲学を信仰してるわけじゃないが、時々、ああやっちまった。こいつは誰かが名前つけたなってわかる時がある。正直胸くそわりぃんだよ、もうやめろ」


後ろで笑い声がきこえた。裏口から入ってきたばかりらしく、長靴を脱いでいるのが見える。あれは、たしかデールというらしい。


「ハレルドがそうだったんだもんな。ハハハ」

「おい、デール」


(あってた)


誰も答えないからと黒板に書かれた解答が緊張する瞬間。その瞬間に味わう感覚と今の感覚はにていた。


「デールさんごめんなさい、僕の仕事代わってもらってしまって」

「いいやいいんだよ。倒れるくらい働く姿も見てたしな。なによりお前の菓子はうまい!」


グッ!と親指をつきだし、メイトにウインクをしている。

話ついでにこちらへ歩いてきたのだろうが、近くで見るとなによりもまず癖の強い人にみえる。


(ツヤツヤコック…?)


思わずそんなあだ名をつけてしまうくらいに。


「ああ、失礼しました。アリコスお嬢様。ハレルド(こいつ)の死角で見えなかったもので」


最近はみんな安心しきっているらしく、アリコスにはみんな気軽に声をかけるようになった。


「いいえ。はじめまして、ディールさん。私からも仕事を代わっていただいてお礼を……」

「「「頭をおあげください!」」」

「そうです、こんなやつに…」

「そういう問題じゃないでしょう!」

「アリコスお嬢様、お願い致しますからどうかもう二度とこのような真似は…」


(あーれれー?またやってしまった!?)


マリコッタは品位がおちます!とガミガミ言うが、当のアリコスがこれを変える気がないのだからひとまずどうしようもない。


「あ、そういえば。俺はメイトを休ませてきます」

「すみません。ねむくって」

「ふふっ。はい。ゆっくり、やすんでね、メイト」

「ふぁあ~い」

「こらメイト!」


ポカッとでも音のしそうな殴られるかたをして、メイトはうめき声をあげた。


「っで!」

「では」


アリコスは厨房の扉が閉まるのを見届けると、ディールに向き直った。


「メイトに頼んだのは私ですし、焚き付けたのも私です。あそこまでするとは思っていませんでしたが…。ですからメイトの雇い主として私からなにかお礼がしたいのです。なにかできることはありませんか?」

「うーん」


ディールは困ったなと言って考えていた。


「そうだなぁ…。ポーションかクッキーでしたら、どちらが楽でしょうね」

「クッキーですね!」


大したことじゃなくてよかったと胸を撫で下ろすのは、アリコスだけではないらしい。セサリーがアリコスがマリコッタを怒らせずにマナーのレッスンを終えたときにするような声を出している。


「では20枚ほどいただいても?見ての通り、家族も食べるのが好きなんですよ。ギャッハッハッ!」


(ううぉ~元気なひとだなぁ。怖いひとには見えないんだけど、ちょっと二人きりではいたくないタイプかな)


「それなら僕が包んでおきます。たくさんあるので選び放題ですよ!」

「いやぁ助かるよ。余裕があったら、リボンもつけてくれないか。一応妻への誕生日プレゼントってことで渡すからさ」

「あははっ!わかりました!」

 

(やっぱりいい人なんだろうな、ディールさん)


「それで、どうしますか?」

「そうね、エマンセペットに依頼するわ。お金はどのくらいかかるかしらね」

「ふふふっ大丈夫だと思いますよ。現園長のロイヤーさんは足下を見るような方ではありませんし、エマンセペットにかかれば最初は確実に売れます。ましてクッキーなんて、彼らも美味しさを知っているので売り上げからひくとかなにかマニュアルがあるでしょう。資本金は要らないとおもいます」

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