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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
何かが変わる予感
113/121

心が楽になりました。2


(なんていえばいいのよ。リドがぐずってるのすっごいかわいいけど、こういうときは姉として…どうすれば?)


「私は、リドレイとレイシアと一緒に遊びたいです」

「だめよ。レイシアにはアリコスの指導に来てもらうのよ。レイにもリドにもアリーにも、すべきことがあるでしょう?」

「僕!僕ないです!」

「リドはまたマッチから逃げたそうじゃないの。言うのは好きにすればいいけれど、リドは上手に馬に乗れるようになるまでだめよ」

「でも僕、一昨日は…」

「ではマリコッタさんから、リドがちゃーーんと2キロ馬で走れたか聞いておくわね」

「お母様、いじわるです」


リドレイの目がうるうるとしている。白いテーブルクロスにシワをつける姿をアリコスは見逃さなかった。


(リドかわいい!しかしこの状況はやばい)


「すきにすればいいわ」


お母様は目もあげずにナイフを20度ほど振ると、ララコレットを切り続けた。


「アリーお姉様ぁ!」


リドレイは椅子を飛び降り、アリコスの膝へ駆けてきた。

飛び降りた瞬間、そしてアリコスの名前が呼ばれた時から、アリコスはフィオラからの強い眼力を感じた。


「リ、リド‥?お行儀が悪いですよ」

「アリーお姉様ぁ、お母様がぁ」


(リドレイ、姉は見ていましたよ。そしてかわいい。ものすごく。)


また。


(ひっ!お母様がこわいっ)


手を載せようとしていた足が揺れて、リドレイは驚いた顔をする。


「大丈夫ですか?」

「んーー」


(お母様がこわいよ!)


「リド、涙が」


アリコスはハンカチをリドレイの頬に当てる。


「アリーお姉様はやっぱり優しいですね」


(リドレイの笑顔が眩しい…あわわ、また涙が。かわいすぎる!)


「リド、泣かないで」

「うわーん!うわぁーーん!」


扉が2回ノックされる。


「失礼します」

「ほらこちら。さっきの通りにね?」


リドレイは相変わらず泣いている。


「リドほら、きたわよ」


一転して優しいお母様の声に、リドレイは恨めしいように「なんでずが?」と鼻声で答えた。


「リドレイ様、クレープです」


リドレイの大好物のクレープの香り。声の主はいくばくか身長の伸びたメイトだった。


「これはなんの味ですか?」

「ちょこれーとです」


アリコスの視線にうなずくと、メイトはリドレイの前にかがみ、続けた。


「これまでのクレープに、ちょこれーとの苦味を加え、甘味のあるクッキーを散らしました。食感も楽しめます。他に、クッキーの中になまくりーむを入れたお菓子もありますよ」


後ろにそれらしきものが見えた。

大判の、大福のようなクッキーだ。


「私も頂いても?」


アリコスよりも先にフィオラが聞くと、メイトは紳士的な笑みで「ええ」という。

しかしそれを遮るように、リドレイが「だめ!」というのでフィオラは起こった口調で「たくさんあるものね?」という。


「でもだめ!」

「リド、私は?」

「ハッいいですよ!」


リドレイは海面に顔をつけていた少年のように、生き生きとして見えた。

結局リドレイは本当にクレープを食べきった、訳ではなく、3つを食べ、用意されていた8つのうち残りの5つを自室へ持ち帰り、結局独占した。交換ノートによると、厨房ではリドレイお坊っちゃまがが大変かわいらしいと、笑いの種にされたらしい。

よってフィオラは別として、アリコスはクッキーを口にした。それは本当においしく、前世の生クリームパンが思い出された。


「どうやってつくっているの?」

「それは…」

「アリー、そういうのは厨房でやってちょうだい」


フィオラはそっとリドレイに許されたクッキーを手に取りながら、そういうと、一口噛んだクッキーに「おいしい」と言葉をこぼしていた。

アリコスはメイトと共に苦笑いをし、この先の休憩の中で度々この話をするようになる。


(リドは出てっちゃったけど、このクッキー、本当においしいわ)


アリコスは一口で残りのクッキーを食べてみる。すこし塩が入っているらしい。何枚でも食べれる味だ。


(それにしてもお母様もリドを叱らないなんてね)


フィオラはまじまじとこのクッキーを見つめると、目を輝かせてクッキーを頬張った。


「ふふふっ」


アリコスもそれを真似る。


(我が家は本当にいい家族だわ)


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