2 第一歩はお父様におねだり作戦‼計画編
ノートの区別がつくよう、上から順に【一冊目】【二冊目】【三冊目】という具合に【十冊目】まで表紙に書いていった。
そして二段目に【※個人的なことにて見るべからず】と書いた。
きっと誰もみないだろうが念のためだ。
昨日書いていた【一冊目】をとってみかえす。
特に目についたのは【物価などについて視察】。すると少し見つめていただけなのに名案が思い付いた。
(お父様だ!名付けてお父様におねだり作戦‼)
【物価などについて視察───お父様におねだり作戦‼】
アリコスはこれを見て、満足気に笑った。
(アリコス。その調子よ!)
カルレシア公爵家はわが国でも五本の指にはいるほど、大きな領土を誇っている。その中には当然、大きな街から村、農村地帯まであり、物価を調べるには十分なほど。
それなら調べるにはカルレシア領だけでいい。
そしてその外出も、アリコスを溺愛しているお父様なら、かわいくお願いすれば承諾してくれるはず。
ノートを閉じると扉がノックされた。セサリーだ。
「おはようございます。アリコスお嬢様」
「おはよう。マクスの事はどうなったの?」
「それが旦那様がいらっしゃる間、しばらくとても忙しいので会えないだろうと」
「そうね…」
そういえばお父様は、家にまで仕事を持ち帰るタイプだ。
あーなんでそこまで考えなかったんだろ。
でもそれでは危ない。それは危ない。
[調べるものを決めずに外に赴く
↓
せっかくの外出許可が無駄になる…⁉」
(ありえない。それだけはだめ)
しばらく考えていたが、自分だけで考えていても一向にまとまらない。ここはセサリーと情報共有をして、一緒に考えてもらおう。
でも何て言おう。また少し考えて、適当なものを選んだ。
「私、街に行って、自分で物を買ってみたいの。みんな私を心配してくれたから、家族に何か贈り物をしたくて」
倹約して溜まったお金で。
倒置法で後に続く話はいわないことにした。なんとなく面倒なことになりそうな気がしたからだ。
そうはいっても、遠からず露見するだろう。遅くとも贈り物をする頃には。
なぜならまさに今みたいに、浪費を見過ごせる気がしない。貴族として失格だ。
「素晴らしいです!アリコスお嬢様はすごく家族思いな方ですね」
まあまあいい言い方ができたと思ったが、まさかこんな反応をされるなんて思わない。
「そ、そうかしら」
「ええ、そうですよ。とっても素敵です」
それでもキラキラした笑顔で褒められるとうれしい。
(そっか、悪役でもアリコスは家族思いなのね)
アリコスというキャラクターへの評価が何段階か上がった。
「それで、何を悩んでいらっしゃったんですか?」
あ、危ない。続きを言い忘れるところだった。
「なにを贈り物にするか、とかそれがいくらあればできるのか調べたいの」
「なるほど」
セサリーが必死に考えているところ悪いけど、予定では足りないことにするつもりなんだ。ごめんね、セサリー。