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貧乏性の公爵令嬢  作者: あまみや瑛理
何かが変わる予感
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家族会議


「よかったな。アリーが気を取り戻して」

「もうっ、あなたの方もですよ」


とても晴れた日だった。


「お姉様、悩み事があるんでしょ」

「なになに?」

「「わっ、レイお姉様っ」」


アリコスたちの会話が途切れ途切れに聴こえる。


「なあフィオラ、なんの話してるだろうか」

「さあ」

「気にならないのか?」

「気になりますけど、今はそれより。まあ…」


セレルドが見るとフィオラはもじもじと、「気になりますね」と答えた。


「⁉︎なによアリーもリドも。私そんなに影薄いかしら?」

「…いや…」

「…そんな事……」

「レイ、アリーは倒れてたんだぞ。それもお父様の研究室で。恋で倒れたわけないだろう」

「そう、かしら」


恋、という言葉でセレルドがシャンとしたのが、フィオラには手を抱いていてわかった。

アリコスがチラリとこちらを見た。


「そうですよ。私まだ当分の間、身内以外の男性とそういった話にはなりたくありませんからね」


何をしでかすかと思えば、あの子ったら。

フィオラはハンカチを取り出してセレルドに手渡した。


「はっはっは。いやぁ、何にしてもよかったよかった」


セレルドは泣かなかったが、落ち着くのにはすこし時間を要した。おかげでもうアリコスたちの声は聞こえない。


「ところで、私、思うのですけれど」

「ん?どうした。アリーに縁談か?」

「ふふふっ冗談ですよね?いつかはさせますからね?」

「…そうか」


しゅんとしてみせるセレルドに、フィオラはまたハンカチを渡す。


「いつか…か。それで、話とは?じゃあレイか?」

「もうっそんな気分ならいいですが、違いますよ。子供たち4人全員の話です」

「どうした?」


セレルドが大声を出そうとするのを、フィオラは制す。


「あの子たちに聞こえますから、静かに」

「悪い」

「いいえ。ほら見てください、みんな仲が良いでしょう?」

「そうだな。仲がいい」

「それが問題なんです」

「…?どこが?」

「あなたには分からないんですか。ルードリックもレイシアも、まだ異性とお付き合いしたという話がありません」

「そうなのか、レイシアはずっと恋の話ばかりしているそうだが」

「それは恋に焦がれる、というか。そう言ってわかりますかね」

「いいや」

「とにかく、お付き合いがないのも、私への相談も報告もないのも、全部仲がいいせいに違いありません」

「どうして」

「愛情を注ぐ相手も、くれる相手もいるから、本当の恋を探さないんですよ」

「悪いことなのか?」

「ええ、大いに悪いですね。私はレイ達にわかって欲しい。本当の恋がどんなものなのか」

「なあフィオラ」

「はい?」

「見てみなさい、みんなで仲がいいのはいいことだろう」


前方ではレイシアがアリコスに飛びついているところだった。


はしたない…、とフィオラは思ったが、愛する人の満足げな表情を見ていると非難できない気になってしまった。


「それでは、この話は後でしましょう。もうマリコッタにはもう連絡をしてありますから。あとで来る時、部屋にマクスも連れてきてくださいね」


セレルドはただ一回、頷いてみせると、4人の元へ速足に進んでいった。



3時間後。

その会議はご飯の後で行われた。

議題は言うまでもなく、4人の仲の良さであった。その場に集まった、セレルド、フィオラ、マクス、マリコッタの全員が4人に近づきすぎているだけに、話し合いは難航した。


「レイシアお嬢様とルードリックおぼっちゃまは良いのじゃありませんか?」


とマリコッタは言ったが、フィオラは引かない。


「2人の結婚相手はどうするのです。恋をさせない気ですか?」


マリコッタはもちろん、フィオラとセレルドの恋愛結婚を知っていたから、これへの反論は潔く諦めた。


この日の話し合いはここまでだったが、その後、セレルドが家を離れるまで、そしてその後の一度の帰省でまた会議の席を設けて、とかなり長い時間を経て方針だけはかろうじて決まった。


「少しずつ兄妹同士距離を取ることを慣れさせる」


こう、決まったのだ。

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