勉強嫌いの監禁システム
今でも監禁生活はかなり辛いものだったと言えるが、慣れてきてからではその価値観は変わっていく。
「お嬢様、そろそろ」
「はーい」
十数分の仮眠を終えて、ドレスを着替えさせてもらう。
なんともう3ヶ月が経つ。
思えば色々あったが、書き出そうとすると大したことはない。それはすごく些細な変化で、例えば今のようなこと。
セサリーに頼ってばかりと、前世の記憶に邪魔されて、どうも慣れられなかった貴族のしきたり、例えば服を自分で着替えないとか、廊下は走らないとか、赤いカーペットの歩く場所とか、そういうものに慣れてきた。
「ふぁ…、」
「きつくしますから、ちゃんと立っててくださいね」
「はーい」
だって昔は、という気持ちよりも眠気の方が勝ってしまうのだ。だからアリコスはかなり従順になったとセサリーは思う。
とはいえもともとアリコスの挙動は、ここ数ヶ月急におかしくなったが、厨房や例の宣言に比べればどれも些細なことばかりでセサリー以外には、叔母さん、もしかしたら奥フィオラ様とレイシアお嬢様も気がついているかもしれない。しかしその程度で、事態は大きくない。この3ヶ月はセサリーとマリコッタにはちょうどいい調整の時期も兼ねられた。なので、当時のアリコスの監禁期間の倍はこうして少しずつ改善するために費やされる予定だ。
「はいっ、終わりました」
セサリーは最後に強く力んで後ろの方で手早くリボン結びにすると、早々に思考を切り上げた。
「さあ行きましょうか」
「うん」
ここ数ヶ月、家族でご飯を食べるのは実は毎日ではない。
毎週末、3食を、と決まっている。そう決めたのはフィオラの独断で、それがアリコスの体を労るためということと、
「少し座っていい?」
「はい。お待ちしています」
「もうっお母様ったらねー。私が疲れてるの知ってるんだから」
アリコスが外へ抜け出さないようにすること。それらが理由であることはアリコスにとって非常にわかりやすいことであった。
しかしひとつ、アリコスの知らないことがある。これはもう一つの理由を持つ。これはセレルドとフィオラ、そしてマクスとマリコッタの以上4名で考えてられていた、計画が基盤にあるのだ。




