3 再びダンジョンへ
1週間の勉強をやっと終えて、アリコスは早く眠る。
『朝ごはんはいらないから明日は起こしに来ないでね。ゆーーーーっくり寝る日なの』
実際あながち間違いではない。
前世で目覚まし時計には頼りきりの生活だったので、アリコスとしての私がどうなのかは賭けである。
遅くまで眠ってしまったらそれだけダンジョンにいられる時間は短くなってしまうのだ。
明日は起きて身支度を整えたら裏山のダンジョンに向かう予定だ。
なので今日は3切れのパンをアイテムボックスに入れて、ワンピースと剣と『裏山にいるから夕方迎えにきてね』と書いた手紙を棚の中に入れる。
「さてさてさてさて。ふふふっ」
モンスターが出るか出ないかもわからない。薬草が取れるかもわからない。だがどうにも楽しみで仕方がないのだ。
「まるで遠足の気分ね」
アリコスは真っ暗な部屋につぶやくのである。
………
……
…
翌日は想像以上によく眠れたが、残念ながらセサリーとレンドーとジルがベッドサイドに配置されていた。
「?…‼︎」
目を開けて、目を閉じて、目を開けて、そして驚いて飛び起きた。
「マリコッタ様のお話で」
「裏山にいかれては困るので」
「我々が監視を…」
アリコスはちょっとの混乱を抱えて、にこやかに笑うととりあえず走る。
寝起きに走るというのは初めての経験だが、その時ワンピースと剣を抱えると、《瞬間移動》と心に唱える。
「アリコ…」
レンドーの転ぶ音がする。
「アリコスお嬢様!」
ジルのパニックじみた声が聞こえる。
セサリーも唱えていたらしい、ドアにセサリーが突然立ちはだかったのには驚いた。
それはともかくとして、こうして急ブレーキをかける間にアリコスは屋敷からいなくなっていたのである。
アリコスの胸はまだドキドキとしていたが、セサリー達にとっては大問題であることに違いはない。
………
……
…
鳥の声が聞こえた。
そこは森だった。
「さてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさてさて?」
ショートした思考回路で何度もそれを呟いて、ようやく昨日、替えのブーツとワンピースをアイテムボックスに入れた自分に感動した。
ワンピースは走ったときに落としてしまった。きっとレンドーはそれで転んだのでありがたいといえばそうなのだが、靴の方は予想外にも素足なのだ。
(あ、鳥)
モンスターがいないことを確認して、その中で正面の木に例の木の表皮に苔のような、黒い物体、懐かしい薬草が張り付いているのが見えた。
「やった!」
まずはマリコッタの教えに反し、剣を手放し服を着替え、靴を履く。
「よしっと…」
キィ――――――ン
しばらく忘れていた、超音波のような音が走り、慌てて剣を取って身構える。
そして案の定、スライムが出てきた。
前回に比べれば、随分慣れた手つきで斬る。
ピコン、とこれもまた懐かしい聞こえる。
すると今度はゴブリンが、ちらほらと現れる。
こちらもピコン、ピコンと倒して行く。
そうして剣を振るっていたが、数が前より減ったような気がする。すぐにモンスターはいなくなった。
カサカサ
草むらに音がして、一体のゴブリンが見えた。




