1 目標が出来ました
アリコスは部屋に戻って改めて、マクスに会いたいと思った。
そして今日の夕食について問いただしたい。他にもいろいろとこの家の浪費について。
「セサリー、マクスはどこにいるの?えっと、今」
「マクスさんは多分…旦那様と一緒に執務室にいらっしゃると思いますが、どうかしましたか?」
アリコスはとてもがっかりした。
(執務室か…)
これは残念だが今日は見送らなければならない。お父様の仕事に入るのはとてもよろしくない。
ルードリックお兄様もレイシアお姉様もリドレイもアリコスも、執務室には絶対に入ってはいけないと教育されてきた。お父様達はきっと書類の紛失や破損、情報漏洩を気にしているのかもしれない。
どういう理由にしろ、これまで一度も入ったことがないのだ。バレないようにするためにも、おとなしくしていよう。
「マクスに会いたいのよ。聞きたいことがいくつもあるから、できるだけ早く」
「わ、わかりました。では予定を聞いておきます」
「ありがとう。おやす…セサリー!」
部屋を出ようとするセサリーを呼び止めると、セサリーは驚いたように肩を震わせた。
そして、いかがなさいましたか、と引きつった笑みをアリコスに向けた。
「ノートを持ってきてくれない?」
ふと、前世でなにかあった時のためにノートに書い留めていたのを思い出したのだ。これさえあれば、聞き漏れや、忘れてしまう事もない。
あとどうせなら、ノートは種類ごとに分けて使いたいな。
「そうね、できれば10冊くらい」
「え?あ、失礼しました。わかりました。ただいま持って参ります」
これまでノートをそんなに使ったことがなかったからだろうか。セサリーは今度も困惑してるようだ。
(そういえば、ノートはどこに置こう)
机の上やその隣の本棚を見ていると、みるからな辞書と以前レイお姉様にもらった恋愛小説のあいだに空間を見つけた。つめれば10冊くらいははいるだろう。
先ほどの本棚の立てかけれた本を綺麗にしていると、セサリーが戻ってきた。
「これでいいでしょうか。無地のものはなかったのですが、一応10冊そろっています」
セサリーがノートを机に置くと、早速中身を確かめた。ちゃんと横書きの行が付いている。
「むしろこの種類のほうが好きだわ。使いやすいのをありがとう。おやすみ」
「はい、おやすみなさい、アリコスお嬢様」
扉が閉まる音がしてからペンを持つだけもった。
「さてさてさてさて?」
ノートを開いて考えこんだ。何から書けばいいのだろうか。
とりあえず昔と同じように【やることリスト】とだけ書いた。
「えっと、やっぱり身近なところからかな」
【私の正体?について】
「これは…もう少し状況を把握してからね」
みんなを信頼していない訳では無いけど、今の私では説明不足で誤解させそうな気しかしない。
【もったいないを失くすために】
「倹約でしょう!」
【もったいないを失くすために━━━━倹約】
と書き加えた。
「後は、んー?」
まだまだありすぎる位のはずなのに、なかなか思い浮かばない。
なのでとりあえずの間は、倹約を目標にする事にした。
次のページに【目標 カルレシア家の倹約】と書いたのである。
そこからのページは簡単に埋まっていった。
《
範囲
できるだけ広く
支出計算
誰かから聞くのが手っ取り早い
今後
自由になる→自分で使える資金が多く必要
許可(どんな事柄、か)
・貯金について
・自由になることについて?
・イネック王子との婚約回避
・(未定)
・(未定)
・(未定)
許可(誰に、か)
・お父様
または
・お母様
許可(いつ、か)
・貯金━━━━できるだけ早く
・自由━━━━できるだけ早く、または、ある程度まとまったら
・婚約━━━━できるだけ早く、加えて、成り行きで自然と
》
という具合に。
こんな感じで合ってたかは覚えていない。
(こんな大ざっぱで良かったっけ?)
でもどうせ、見るのは私だけなんだからいいでしょう。
このノートはまだ使い方も決めていないけど、私以外に見せることはないと思う。そんな気がするし、大した事は書かない。というか自己完結できる事しか書けなと思う。
「あ!」
はっとして、【やることリスト】へページを戻した。
「これを早くしないと、支出の計算も出来ないわ」
そして【物価などについて視察】と、書き足す。
さて、少し頑張ってみるか!
今度こそ自分なりに、嫌われないようにね。