1 本来の日常
エピソード1は、ゲームの内容についての設定が沢山あるので、専用のページも作っています。
わからない言葉については、このページの次と交えて読んで頂く事をお勧めします。
私、アリコス・カルレシアは、おしとやかに育てられたカルレシア公爵家の第三子、次女。
おしとやかといえど、たった12歳の、まだまだ少女でございます。
それでも、自分で言うのもなんですが、愛する家族に囲まれて、幸せいっぱいの生活をしておりますわ。だって、お父様とお母様の愛娘ですもの。
ところでただいま私は、国の決まりで、16歳で国立共通学校へ入学。そして同時期に婚約パーティーがあるため、それらに向けてお勉強中の身にございます。
筆記に、ダンスはもちろんのこと、15歳に個々に発表のある魔法の基礎知識、その他簡素な剣術も。差し支えながら、まだ幼い私にできるのはそれくらいの事ですから。
それにしても、私、最近不思議な夢を見るんです。
どうか聴いてくださいな。
黒いスーツを着た方々が何人も、鉄の塊に乗って移動するんです。不思議でしょう?
そもそも黒いスーツは《黒い騎士》を指すので、ご法度のはずです。
それに《黒い騎士》は非常に稀ですから、そんな何人も一度に集まれるはずもありません。
そして何より、あの鉄の塊にどうして乗る必要があるんですしょうか。今の時代、魔法も発展しましたから、魔女の極々一部の《流儀を守る者》以外は、瞬間移動だってできるのでしょう。
えっ?ああ、そうでしたか。瞬間移動は、魔法量の多いBクラス以上の方々の内の、魔法を鍛えた方だけがなせる技だったのですね。
!…で、でも、鉄の塊なんて重い物に頼るより、馬車の方がずっと速いでしょう。それにある程度、身分も財力も高い方々はお父様達のように、ペガサスで移動なさると聞きます。ペガサスなら馬車よりもずっと、ずーっと速いのですから、スーツを着られる程に身分の高い方々なら、馬の一匹や二匹は当然持っていると思うのです。しかも、あんなにたくさんの鉄…。多すぎて、お父様でも持ちきれませんわ!
えっと…具体的にですか?
そうですね。大体、お父様が四人乗れるくらいですから、固めればお父様二人分の大きさでしょうか。
ええ?おわかりにならないっ!まあ、そんなぁ。
全く、たかが夢なのに、私ったら。こんな事では次の筆記の授業では、家庭教師の先生に怒られてしまいますね。
…はあ。
さて、昨日『新発明だ!』と、お父様も相当興奮なさっていた、例の件ですが、折角お呼ばれしている事ですし、日が暮れる前にお父様の研究室へ伺いますか。
ああ、歩きながらで申し訳ありませんが、ある程度の事はご説明致しますね。と言ってもその発明品までは私も存じかねますから、研究室についてだけに限らせていただきます。
お父様はもともと、カルレシア公爵家の次男坊でいらっしゃって、ご長男の叔父様もお父様も、魔法量はAランクだと思ってらしたそうです。なので、当然叔父様が家を継ぐからと、9歳の誕生日にはもう、お祖父様に研究室を作ってもらい、大好きな研究に没頭していらしたんですって。なんせ、お父様の昔の夢は錬金術師でしたからね。
でも叔父様は、Sクラスの魔法量をお持ちでしたので、法律上の理由により、叔父様は国衛副隊長になり、お父様がカルレシア公爵家当主となったわけです。
それでもお父様は、未だに研究が好きですからね。人を雇って、共に研究を続けているわけです。
丁度きりがいいですね。さあ、着きましたよ。
「お父様、アリコスが参りました」
「おお、アリー。よく来てくれた。さあさあ早く見てくれたまえ、私の発明を」
………
……
…
お父様に促され、部屋に入ってまず感じるのは、微量の熱と、光という言葉にピッタリだと思わせる、力の流れ。
白とも黄色ともとれる色に、魔法とはまた違う“力”が重なっている。
「お父様、これは何なのですか?」
「聞いて驚くな。これはとキデンいうものだ」
(…キデン…。)
何故か知っている気がして、心の中で繰り返し唱えてみる。
「これは、私の作ったものだ。私の発明品なんだ。おととい、たまたま《光の騎士》に出くわして、仲良くなった弾みで、光の魔法を分けて貰って、それを利用して作ったんだ。どうだ、綺麗だろう」
「ええ、とても綺麗ですね」
お父様が、光と言ったところで、心臓が波打ったのを感じた。
そして───
「ほら、な」
と、透明なガラスの中にキデンを溜めたものを、私に渡した。私がそれを受け取った瞬間、私は突然に、
ビリッ
とした感覚を覚え、何かに重大な事に気が付き、倒れたようだった。漠然としていて、膨大な記憶の波に揺られながら。
そして私はたくさんの夢を思い出した。そこで私は、おぼろげな眠りの中に、多くの事を知る事になる。
例えばキデンにまつわる夢と、自身の正体。
12歳の少女には大きすぎる、とてもたくさんの事実を。
必要に応じて説明ページの項目も増やすつもりなので、わからない言葉についてなどは、お手数ですが、知らせていただきたいです。
これからも引き続き書き進めていくつもりです。
どうぞ、末永くよろしくお願いします!