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04 第一王女と第三王女

「アハハ」

「ウフフ」

 暖炉が備えられた談話室で、ソファーの両端に座り、めいめいにアームレストを抱えながら大笑いする二人に対し、あいだに座っているブリジットが怒り半分諦め半分で言う。

「もう。だから、言いたくなかったのよ」

「ごめんなさい。まさか、ブリジットが、そこまで(こじ)らせてると思わなくて」

「パトリシア姉さまの言う通りよ。あぁ、おかしい」

 三人の中で一番年かさの少女が目頭に浮かぶ涙を拭いながら言い、一番幼い少女が続いて共感した。すると、ブリジットは不貞腐れて背もたれに身体を預け、左右を見ながら言う。

「良いわよね、二人は。お姉さまは持って生まれた魅力を駆使してトントン拍子に御輿入れが決まったし、ベアトリスは見た目がお母さまに似てるから、やっぱり何かと得だし」

「あら、ご機嫌斜めね。ブリジットだって、原石は持ってるわよ。磨けば光るんだから、頑張りなさい。――あっ、そうだわ。参考までに、お付き合いの始まりから結婚までの経験談を話してあげましょう」

「えぇー」

「わぁい。聴かせて、聴かせて!」

 ウンザリしているブリジットを挟み、年かさの女は、興味津々の幼い少女に惚気話を聴かせた。

  * 

「さきほどより、お疲れの様子ですね。パトリシアお嬢さまとベアトリスお嬢さまは、つやつやとご機嫌な様子でしたけど?」

 枕を両腕で抱え、ベッドにうつ伏せになるブリジットに、スーザンが生存確認でもするかのように話しかけた。すると、ブリジットはクッション越しのくぐもった声で返事をする。

「そりゃ、そうでしょうよ。私をダシにして、二人で盛り上がったんだから」

「まぁ、そうでしたか。それは、お気の毒さまです」

 労りを込めてスーザンが声を掛けると、ブリジットは腰を捻り、グデッと仰向けに大の字になると、天蓋を見ながらボソッと本音をもらす。

「今日という日を、指折り数えて心待ちにしてたのになぁ」

「失意に泣くお気持ちは、お察しいたします。しかし、ブリジットお嬢さま。諦めるのは、まだ早うございます」 

「どうして?」

 ブリジットが、グリッと首から上だけスーザンのほうに向けると、スーザンは、良い質問だとばかりに得意顔で答える。

「こういうこともあろうかと、別の手立てを進めております」

「別の手立てって何よ?」

 すっくと半身を起こして食いつくブリジットを、スーザンは両肩に手を添えて寝かせつつ、意味深な微笑みを浮かべて言う。

「まぁまぁ。今夜は、このくらいにして、おやすみなさいまし。明日になれば、わかることですから」

「スーザンったら、もったいぶっちゃって。いつも、直前まで教えてくれないんだから」

「オホホ。でも、悪いようにはならないことは、よくご存じでしょう?」

「まぁね。これまでのことをふまえて、一応、信用してあげるわ。――おやすみなさい」

 粘るだけ損だと割り切った様子で、ブリジットは素早く毛布をかぶって横になる。

「はい、おやすみなさいまし」

 スーザンは、ランプの芯を短くして炎を弱め、静々と部屋を出て行く。

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