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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

武装鬼甲オーガ・バースト~鬼よ、異界を救え~

随分と前に書いていたものを投下していくスタイル。
「よっしゃーー!! この一撃で終わりだー!!!」

 無限に広がる大地。
 そして、無限に広がる蒼空。緑豊かなその世界で、赤黒い鉄の巨人が空中でその拳を、対峙する巨人に叩き込んだ。
 刹那。
 衝撃と共に、轟々たる炎を生み、爆発する。

 対峙する巨人は、腹部に多大な損傷を負い、火花散らせ……爆発四散した。
 その爆炎から、ギラリと怪しく輝く眼光はとても鋭く、突起な鉄の体は、異形なまでの威圧感を感じる。
 全長十一メートルほどのその姿はまさに、鬼。
 特徴的な、二本の角と睨むだけで人を殺しそうな顔。
 そんな鬼の頭上に、文字が現れた。

 WIN、と。
 そう、これは現実ではない。ゲームなのだ。この鬼を操縦している者は、現在クーラーで涼しくなっている自室で、コントローラーをしっかりと持ちながらコーラを傍らににこやかな笑顔を浮かべていた。

「いやー。楽勝、楽勝。この調子だと、世界ランクといっちゃうんじゃね?」

 鬼崎きざき謙吾けんごは、今、世間で大人気対戦型ロボットゲーム【武装鬼甲オーガ・バースト】のネットランキング対戦をしている最中なのだ。
 このゲームは鬼をイメージした全長十一メートルのロボット『オーガ』を改造したり、戦わせたりする対戦型ゲームだ。

 アーケードモードやストーリーモードもありオーガを強化するパーツや武装などを集め、レベルを上げることも可能。
 ネット通信で、世界中のパイロットと対戦も出来る。
 デザインもさることながら、日本人には多大な人気を誇っている。

 侍や忍者などの、昔ながらの日本を代表する文明。
 鬼も例外ではない。
 最近では、鬼も色んなメディアが土台としてゲームや漫画、アニメなどに取り上げている。このゲームは、そのひとつで鬼をイメージしたロボットを操縦させ戦わせる。
 鬼の風格と、雄々しさがロボットにすることで増した。

 外国人も、そのかっこよさにに惚れ込んできていると公式で言っていた。
 情報では、世界大会を開くとかなんとか。
 それほどの人気を誇っているゲームなのだ。だが、このゲームを製作した人物は謎に包まれている。公式でも『G』と、名前、年齢、容姿、などは一切公開していない。

 謎に包まれたゲーム製作者。
 どういった経緯で、どんな目的で、このゲームを製作したのかはわからない。しかし、ゲーム会社が発売しても良いと判断し、こうして世の中に広まっているのだ。
 何かの策略ではないことは確かだ。

「うーん。にしても、やっぱりカッコいいよなぁ、ロボット。実際にコックピットの中で操縦してみてーなー」

 次の対戦を待ちながら、謙吾は呟く。
 男なら……いや、女でも一度はロボットに乗ってみたいという願望はあるはずだ。今の世の中では、ロボット開発がかなり進んでいる。
 それでも、人一人が乗って操縦するまでには至っていない。

「でも、本当にロボットに乗れるような世の中になったら……戦争が起こるんだろうなぁ」

 ロボットは、世界を脅かす脅威でもある。
 アニメやゲームなどでは、操縦できるロボットが出てくるものは大抵戦争が起こっている。そうじゃなくても、人知を超えたような兵器だ。
 戦争は起こらなくても、戦いは避けられないだろう。

「あっ、コーラ無くなったか。何か他のジュースでも持ってくるか」

 飲み物がなくなったので、謙吾はリビングの冷蔵庫から他の飲み物を取りに行こうと立ち上がった。

「ん? なんだ……この光は」

 だが、背後より振り向かなくてもはっきりとわかる膨大な光が放出。
 振り向くと、先ほどまでゲームをプレイしていたテレビからだった。その光は、次第に大きくなり謙吾を襲う。

「うおおっ!?」

 そして、次郎の全身を包み、部屋に満ち……謙吾の姿が消えた。

 沈黙する空間。
 光が収まった、テレビの画面にザザザ……とノイズする。浮かび上がるように表示された。

『選ばれし鬼人達よ。我が世界を救ってくれ』



☆★



「……なんだこりゃあ?」

 謙吾は、自分の目がおかしくなったんじゃ? と思う光景を今、目の当たりにしている。
 自分は、確か自室でゲームをし、飲み物がなくなったので代わりを取りに行こうとしていたはずだ。だが、テレビから突如と放出された光に飲み込まれて。

 目の前に広がるのは、無限に広がる大地、無限に広がる蒼空。

「それに、ここは。このコントローラーも」

 今、謙吾は見慣れたコントローラーが見たことの無い部屋に突き刺さっている光景を見ている。部屋はシンプルに椅子と前方に画面、さらには傍らにはモニターが設置されている。
 コントローラー以外には、余計なボタンは無い。
 人一人がぎりぎりは入れるぐらいの広さだ。

「これじゃあ、まるで」

 謙吾が、夢にまで見た。

「コックピットの中じゃねえか!!」

 だが、なぜかコントローラーが設置されている。
 夢にまで見たロボットのコックピットの中。
 しかしながら、周りを見渡す限り、目の前のコントローラー以外操縦できるものはない。ブースターを噴かすペダルすらない。
 どういうことだ。
 これじゃあ、ゲームをしろと言わんばかりの空間じゃないか。

「ん? あっちから近寄ってくるのって」

 うーん、と頭を傾げていると……前方から何かが近づいてくるのがわかった。それに反応して、センサーらしきものがそれを捕らえる。
 画面にそいつの拡大映像が表示。
 なぜか、○ボタンを押せだの書いてある。

「本当にゲームなのかよ。まあいいや。とりあえず、あいつのデータを確認だ」

 詳しい状況は、後回し。
 謙吾は、コントローラーに両手で握り締め、○ボタンを押す。すると、接近する敵のデータが表示された。
 そいつは、漆黒の装甲に守られている大鳥の姿をしていた。
 奴には見覚えがある。何度も、倒したことが、出会ったことがある。
 そう【武装鬼甲オーガ・バースト】の敵じゃないか。

「どうなっているかわからないが……。兎に角、あいつを倒せばいいんだろ? 簡単じゃねえか。たかが雑魚敵!! 未来の世界一の俺をなめるなよー!!!」

 手馴れた手つきで、スティックを倒し×ボタンを押す。
 それにより、画面が動き出す。

「やっぱり、ゲームと同じだな! だったらこのまま……!」

 距離を詰めた次郎は、△ボタンを瞬時に押した。
 △ボタンは、ゲーム内ので強技。 
 スティックの倒す方向との組み合わせによって、ど派手な技が発生する。△ボタンを押すと、画面に《爆炎拳》と表示された。

「燃え尽きろおおおおっ!!!」

 相手が、攻撃の構えをする前に行動に入る次郎。雄々しい炎を纏った拳が、飛んできた大鳥にヒットする。
 それにより、大鳥は燃え上がり悲痛の叫びを響かせた。

「ぐええええええっ!?」
「おっと……。ずいぶんとリアルだな。こんなの現実じゃありえない。……って、ことは夢か?」

 火の玉となり、落下していく大鳥を見つめながら謙吾は思考した。
 次郎がやり込んでいる武装鬼甲オーガ・バーストは、先ほどのように『オーガ』と呼ばれるロボットを敵やオーガ同士で戦わせたりするゲームだ。

 ロボットゲームだが、ファンタジー要素……というか少年の心を揺さぶらせる派手な必殺技のようなものを扱うことが出来る。
 基本は、格闘や武器などを扱い、戦うのだが、そういう要素も含めることでさらに楽しさを増しているのだが武装鬼甲オーガ・バーストなのだ。

 基本操作は、スティックで移動。
 ○ボタンで弱攻撃。□ボタンで防御。△ボタンで強技。×ボタンでジャンプやブースター。スタートボタンで、メニューなどを開き設定などを変えたりすることが出来る。
 これが基本だ。
 後は、操作するプレイヤーの腕の見せ所。

「……あれは、村か?」

 メニューが開くことを確認していた次郎は、ふと真下に村らしきものを発見した。
 藁の屋根で出来た家などが多く建てられている。
 さらに言うと、人が外でなにやら騒がしそうにしているのもわかる。

「げっ!?」

 なんだろうと、村人達が見る先に視線を送ると……森が燃えていた。
 どうやら、先ほど倒した大鳥に灯った火がそのまま森に燃え移ったようなのだ。それで、村人達は大慌てしている、と謙吾は理解することが出来た。
 これは、まずい。
 どう考えても、これは自分の所為だ。そう責任感を感じた謙吾は、すぐに火事が起こった場所に降り立ち、近くに倒れていた木をなぎ倒し火を消して行く。
 何とか消火作業を終えた謙吾だが。

『な、なんだ、この巨人は!?』
『ひえぇ!? また悪獣達が襲ってきたぞ!!』

 どうやら、敵と勘違いされているようだ。
 確かに、普通の人から見えれば謙吾が乗っているロボットオーガは異形なものに見えるだろう。謙吾は何とか説得しようと、音声で言葉を話す。
 メニュー画面を開くと『音声発生』というものがあったので、それを○ボタンで押す。

『えーと……落ち着いてください。俺は、あなた方に危害を加えるつもりはありません』

 が、その説得は逆効果だった。
 さらに、怯えたような声と表情でオーガから離れていく。

『ひ、ひいぃ!? しゃ、喋ったぞー!?』
『喋る悪獣なんて初めてだぞ……新種か!?』
「や、やべっ。逆に怯えさせてしまったか。うーん……どうしよう……ん?」

 どうしようかと、悩んでいると村人達が後去る中、一人だけ勇敢にも近づいてくる一人の少女が居た。
 背中まで伸びたさらっとした漆黒の髪は簡単に束ね、幼い体格は、どう見ても謙吾より歳は下にしか見えない。
 それに似合った黒の着物、赤の帯と、赤い瞳で、謙吾をオーガを見詰めている。

『お待ちしておりました、異界の鬼人さん』
『異界の鬼人? 何のことだ? 君は俺のことを知っているのか?』
『はい。つきましては、詳しくご説明いたしますので、姿を現していただけないでしょうか?』

 怯えることなく、淡々と謙吾に語りかけてくる少女。
 相変わらず、他の村人は怯えているようだが…。
 ともあれ、少女の姿勢に、次郎は従うことにした。

「どうやって出るんだ? ヘルプに書いてあるかな」

 コックピットから出る方法がわからず、ヘルプを確認した。
 運よく、ちゃんと書いてあったので、その通りに傍らにある赤いボタンを押す。すると、無事にコックピットは開き眩しいばかりの日差しが浴びる。
 謙吾が、その姿を現したことで村人達は騒がしくなる。

「ひ、人が出てきたぞ!?」
「ま、まさか、悪獣達は人間が操っていたのか!?」
「これは、どう誤解を解いたら良いやら。それにしても、これって夢じゃない、よな? 日差しの温かさも風の心地良さも……リアル過ぎる」

 機体からワイヤーのようなもので降り、少女の下へと歩いていく。
 近くから見ると、本当に小さい。
 だが、不思議な雰囲気がある。

「初めまして、異界の鬼人さん。わたしはクロハと申します。以後、お見知りおきを」
「これはご丁寧に。俺は、謙吾。鬼崎謙吾だ。好きなように呼んでくれ。俺もクロハって呼ぶからさ?」
「はい。では、謙吾さん。詳しいご説明を致しますので、わたしの家に案内いたします」
「わかった。でさ? こいつはどうしたらいい? このままにしておくのは……ちょっと目立ちすぎると思うんだけど」

 背後に威圧感のある赤黒のカラーリングをした巨大な鬼が跪いていた。
 そのままにしておくのはオーガの大きさから考えるに目立ちすぎるのだ。それに、村人達もまだ怯えている。
 それを、聞いたクロハはスッととあるオーガより高い岩壁を示す。

「あそこに大きな洞穴があります。そこにお隠しください」
「わかった。じゃあ、こいつを隠した後ってことでいいか?」
「かしこまりました。では、入り口でお待ちしておりますので」
「おう。んじゃな!」

 こうして、謙吾はオーガに再び乗り込み、隠すべくブースターを噴かしクロハが教えてくれた岩壁に飛ぶのであった。



☆★



「ふう。とりあえず、こいつはここに置いておくか。しばらく待っててくれよ」

 クロハに教えてもらった岩壁に掘られてあった横穴に謙吾は『オーガ』を隠しておいた。なるべく奥の方に置いたため、木々で見えなくなる……はずである。
 謙吾は、うん、と頷き村への一本道を突き進む。

 途中、見たことのない動物を発見。
 兎……に見えるが、ちょっと違う。周りに生い茂っている草木は、自分の知っているものと同じだ。
 踏む、土も砂利も、踏み慣れた感触。

「異世界っていうやつか。だが、どうして俺が……。それにオーガに乗り込んで。心当たりがあるとしたら、あのテレビから出てきた光、だよなぁ」

 この世界に来る前に、包まれた光。
 あれが、原因だと謙吾は考える。だが、どうやって? どんな目的で? 誰が? それが分からない。どうして、自分なのか。
 どうして、オーガに乗り込んでいるのか。
 考えれば考えるほど、謎が深まっていく。

「まあ、それも何か知っていそうなクロハに話を聞けばわかるだろうし。おっと、着いたようだな」

 歩くこと数分。
 空けた空間に、数件の家が見えてきた。そして、その入り口に先ほど見た着物を着たクロハが謙吾を待っていた。
 謙吾は、それを確認し手を振ってみる。
 すると、クロハも微笑み手を振り返してくれた。

「おっす。待っててくれたんだな」
「ええ。村に着いたとしても、わたしの家がどれか、わかりませんでしょう? それに、村人達は、まだあなたのことを怖がっているようですので、聞くことも難しいでしょう」

 と、村を見ると、確かにまだ次郎のことを見て怯えているように見える。
 確かに、第一印象があれだもんなぁ、と謙吾は頭を掻く。クロハの言うことに確かに、そうだなと苦笑する。

「では、行きましょうか?」
「ああ」

 村人達の視線を気にしながら、謙吾はクロハの案内によりこの村では少し大きく豪華な家へと向かった。豪華、と言っても周りが藁の屋根で、クロハの家が木製、という差程度である。
 これよりもって文明が進んでいる謙吾から見れば、豪華では無い。
 だが、謙吾はこういう家は結構好きである。

「どうぞ。ご遠慮なく」
「お邪魔しまーす」

 案内されるがままに、中へと入っていく。
 室内は、昔ながらの囲炉裏や木製のタンス、釜などが揃えられている。やはり、タイムトラベルしたかのような、そんな感覚だ。
 囲炉裏の前に敷かれている座布団にお互い座り込み、向かい合う。
 クロハは、手馴れた動作でお茶を用意していく。
 湯飲みでホカホカと湯気が立ち上る。

「どうぞ。お熱いうちにお飲みください」
「あっこれはどうも……うん、うまい」
「ありがとうございます。では、さっそく本題にお入りいたしましょう」
「ああ。頼むよ。俺も気になって仕方ないんだ」
「はい。それでは、まずこの世界のことについてです。この世界は【夢想世界アルヴァザール】と言います。あなた方から言えば、ファンタジーな世界に妖怪が住み着いている、みたいな世界です、はい」

 謙吾に分かり安いように、砕けた口調になり説明してくれた。 

「お前、意外とお茶目なところあるか?」
「ふふ。私はお茶目ですよ? 意外ではありません。もっと、お茶目度を上げましょうか?」
「いや、別にいいっす。普通に話を続けてほしい」
「……かしこまりました。では、説明を続けます。この世界では、多種の生物が協力しあい平和に暮らしていました。魔物に襲われれば、助け合い、食料が少なくなれば分け合い、互いに支え合っていたのですが…ある日、この世界の平和を壊す原因が現れたのです」

 雰囲気のある声で、淡々と説明してくれるクロハ。
 謙吾は、空気が変わったのを察して、表情を真剣にする。ごくりと唾を飲み込み、耳を傾ける。

「次元の裂け目を通り、軍勢を引き入れ悪しき獣達は現れました。彼らの世界から漏れ出す瘴気は、我々の世界の植物を生物を汚染し、生態系を壊し、滅亡させようとしているのデス」
「デスって……そこもお茶目要素か?」
「よくお分かりになりましたね。先ほどのように、ちょくちょくとお茶目要素を含んでいくと思うので」

 ふっふっふ……と着物の袖で口元を隠しながら不気味に笑う。
 謙吾としては、真剣に話してほしいと思うところだが。説明しれくるのはクロハだけだ。多少のお茶目は見逃そうっと思う謙吾だった。

「さて、続きですが。その悪しき獣。【悪獣あじゅう】は、漆黒の体が特徴で、小さいものでも全長二メートルはあります。先ほど、謙吾さんが倒したのは全長五メートルの鳥獣ですね」
「悪獣か。村人達はオーガのことを悪獣と勘違いしていたが」
「恐怖心によるものでしょう。それにオーガはこの世界では『破壊の化身』と呼ばれている存在です。古い文献によると神をも殺すほどの強さだとか」
「か、神を殺すだって!? マジで?」
「はい。まあ、古い文献なので。確かではありません」

 そうなのか……と、お茶を啜る。
 だが、神をも殺す、とは破壊の化身とはいったい。いや、破壊とか言っている時点で予想はつく。謙吾の知っている限りでは、ゲームの中のロボットという認識だ。
 ゲームの設定では、『鬼の力が、封じられた戦闘ロボット』と記されている。

 鬼の力。
 偶然ではないだろう。あれは、ゲームの中の設定。だが、そんなことが。

「破壊の化身は、長年の神との戦いでようやく封印まで追い込んだのです。そして、その力は……鋼鉄の鎧によって呪縛されました」
「鋼鉄の鎧……つまり、俺が乗っていたオーガは、その鬼の力を封印するために神が用意したものなのか?」
「神は、おそらくこうなることを予言していたのでしょう」
「予言? あのロボットは、悪獣と戦うために用意された兵器だってことなのか?」
「神の力ならば、破壊の化身を封印した後に、次元へと誘うこと可能だったのです。そうすれば、誰の手にも触れずに永久に破壊の化身は封印されたまま。ですが、神はそれをしなかった。戦いの兵器として利用したのです」

 最大の敵を、戦いのために利用。
 それほど、悪獣という存在は危険なものなのだろう。しかし、そんな危険な存在を操っている自分は大丈夫なのだろうか?

 神をも殺す存在が動力源となっているロボットを操縦している。
 それなのに、自分は平気な顔でいる。
 ゾゾッと背筋に悪寒が。
 残っているお茶を一気に流し込み、ふう……と一息つく。 

「お、俺は大丈夫なのか? そんなすごいものを操縦しているんだが」
「そこのところは大丈夫です。……今のところは」
「今のところかよ……。で? 俺は、どうしてそんなすごいもののパイロットになったんだ? 俺がプレイしていたゲームと何か関係あるのか?」
「その通りです。あのゲームは、オーガのパイロットを選ぶために神が製作したものです」
「こっちの世界の人間じゃだめなのか?」

 そう。別に異世界の人間から選ぶ必要は無い。
 なのに、神はこの世界の人間から選ばず、異世界の人間をパイロットに選んだ。その理由を知るために、クロハの問いかけた。

「……最初は、こちらで用意した者が乗るはずでした。ですが」

 と、意味ありげな声で言おうとした刹那。

「きゃああああっ!!?」

 悲鳴が響いた。

「な、なんだ!?」

 咄嗟に、反応し急いで外へと出て行く。
 そこで、目にしたのは。

「おらおらー!! 大人しくしてれば、命は取らねえでやつよ!!」
「金目のものを全部出せー!! 全部だあぁ!!」
「抵抗した奴は容赦なしに、ぶっ殺す!!!」

 明らかに穏やかなものではなかった。
 村人は悲鳴を上げ、ロープで縛られ、上半身裸で、アイパッチをしている男達が刃を持って、村人達を襲っている。
 謙吾は呆然としていた。
 そこへ、背後よりクロハがゆったりとした口調で説明をしてくる。

「おや? どうやら、山賊が襲ってきたようですね。大変ですわ」
「その割には、すげー落ち着いているようだが」
「いえ。これでも、怖がっておりますよ。ですが、慌てても何も始まりませんので」
「確かに、慌てているよりは落ち着いている方がいいけどさ。どうするんだよ、この状況?」

 そうですねー、と考えていると。

「おい、てめえら! なーに、悠長にお喋りしているんだぁ?」
「げっ!? とうとうこっちに」
「あらあら? これは、困りましたね~」

 全然、大変そうじゃないクロハだった。



☆★



「っで、結局捕まってしまった、と」
「捕まりましたねー」

 その後、謙吾達は山賊に捕まってしまった。
 村の中心に、ロープでグルグル巻きにされ、集められている。村人達は怯え、身を寄せ合いながら震えている。
 そんな中、謙吾とクロハは冷静に状況を判断した。

「これってさ? 俺達は殺されるのか?」
「どうでしょうか。わたしにもわかりかねます。彼ら次第、ではないでしょうか?」
「だよな……」

 目の前で、ニヤニヤ笑いながら、村中から集めた金目のもの。
 小さな村だが、それなりに金目のものはあるようだ。ちなみに、謙吾はスマートフォンを取られてしまった。
 あの後、謙吾は出かける予定だったのだ。
 もちろん財布もあるが、それも取られてしまった。

「兄貴!! あっちの岩壁のほうにすげーものがありましたぜ!!」
「あぁん? すげーもの? なんだよ、そりゃあ?」
「岩壁って……まさか!?」
「オーガのようですね」

 山賊の手下の一人が、周りを探索していたところどうやら『オーガ』を見つけられたようだ。謙吾はやばいと焦りだす。
 あの兵器を山賊に奪われたら。
 今まで以上に、殺戮非道を起こすだろう。

「巨人ですよ! 鉄の巨人!! ありゃあ、帝国で作られている鉄の巨人ゼファーに似ています」
「ほほう? そんな大したものが。おい!! この中で、鉄の巨人の所有者がいるはずだ!! 出て来い!!」
「……クロハ」

 山賊の言葉に、謙吾はクロハに視線を投げる。

「従いましょう。ここは、村の安全が第一です」
「わかった……」

 頷き、その場に立ち上がる。
 正直、心臓の鼓動は半端ではなく高鳴っている。一歩でも間違えば、殺されるかもしれない。だが、ここで名乗り出なければ逆に多くの命が奪われるかもしれない。

「俺だ」
「そうかそうか。んじゃ、一緒に来てもらおう。それと…おい、そこの黒いの。てめえも一緒に来い。人質は一人でも多いほうがいいからな」
「……いいでしょう」 

 謙吾、クロハを人質として山賊達はオーガを隠している岩壁まで連れて行かれた。
 奴隷を運ぶかのような扱いだ。
 背後では、刃を突きつけられ、いつでも殺せると言っている様なもの。 
 そして、いつに岩壁まで辿り着いた謙吾達は、さっそく山賊のリーダーに問いかけられた。謙吾は、手下に押され、無理やり前に出される。
 クロハは、じっと、何も動揺を見せずいつもの落ち着いた様子で謙吾を見守っていた。

「おい、こいつの動かし方を教えろ。拒否権はねえ」
「……あの胸の部分。あそこに、コックピットに入るためにボタンがある。それを押せば中には入れる。後は、中心のボタンを押し、中にあるコントローラーで操縦するんだ」
「ほう。素直にありがとうよ。てめえら、そいつらをしっかり見張ってろ。俺は、あの巨人を動かし村を焼く」

 衝撃の発言。
 それに謙吾は、驚愕し思わず叫んだ。

「おい!! やめろ!! 村を焼くって……ふざけるな!!」

 だが、すぐに手下達に取り押さえられる。
 オーガを操縦できたとしても、謙吾は普通の少年だ。大人数人。さらに武器を持っている山賊にかなうはずも無く。
 呆気なく地面に取り押さえられた。山賊のリーダーは、謙吾を睨み挑発めいた言葉を発する。

「はっはっはっは!! いいじゃねえか? もう、用はねえんだからよぉ? あんな村ひとつなくなったぐらいで、世界は滅びたりするわけでもねえだろ? 黙って見てろ。俺様が、巨人を動かすさまをな? ハーッハッハッハ!!!」

 盛大に笑いオーガへと近づいていく。
 さすがは、山賊のリーダー。コックピットがある胸の部分まですいすいと登っていく。謙吾の指示通り、ボタンを押し、コックピットへと入る。

「こりゃあ、すげーな。見たことのねえものばかりだ」

 山賊のリーダーは、コックピットの中を物珍しそうに観察する。
 そこで、視界に映ったのは、異形な形をしたコントローラー。

「これか」

 コックピットに入ると、自動で閉まる。
 謙吾が説明したとおりに、中心にあるボタンを押し、起動させる。機械音を鳴らし、周りにカラフルなライトがコックピットの中を照らし、正面モニターには、しっかりと自分の手下と人質である謙吾とクロハを確認した。

「へっへっへ。こいつを使えば、今まで以上にいい狩りができそうだぜ」

 想像しただけでも、顔が緩んでしまう。
 コントローラーを握り、オーガを操縦しようとする。

「よーし。さっそくこいつを―――っ!?」 

 悪寒がした。
 その瞬間から、先ほどまでカラフルなライトで照らされていたコックピットの中が闇に包まれる。山賊のリーダーには何が起こったのか理解できなかった。
 だが、すぐにそれは……出てきたのだ。

『汝は、我が力を扱う者には……相応しくない』
「な、なんなんだよ。こりゃあ……!?」

 脳に直接響くような不気味な声。
 闇より現れる、その存在は、紅の炎を纏いて、這い寄って来る。

 やばい。

 すぐに直感する。だが、この闇の中からは出られない。
 入り口を探してもそこには無い。先ほど入ってきたハッチは開かず、最初から無かったかのように周りは闇で包まれていた。

『我が力は、世に破壊を齎す。汝の器は小さきもの。故に、我が力を受け入れるのは……不可能』
「く、くそ! くそう!! なんだってんだよ! こりゃあ!? てめえは一体、何なんだよぅ!?」

 問いかけるも、それは答えることは無かった。
 紅の炎は、闇を照らす。
 その炎は、次第に形を成していき、山賊のリーダーを見下すように睨みつけた。その瞳は、闇。どこまでも、どこまでも……深き闇しかない、そんな瞳だった。

『さあ、力無き器よ。我の力を、その程度で扱おうとした、愚かな行動。魂を捧げる事で、償うがいい』

 迫り寄る、炎の手。
 逃げなければ。だが、どこに? どこにも……逃げるところなどありはしない。

「う、うわああああああああああああっ!!!?」

 そして、魂は消えた。

「な、なんだぁ!?」
「あ、兄貴ぃ!! どうしたんです!?」

 その一方、外で待っていた謙吾達は、突然の叫び声にどうしたのかと、動揺する。

「お、おい。クロハ? あの叫び声は一体」

 何かを知っているとすれば、クロハだ。
 謙吾は、背後で叫び声を聞いても未だに冷静で居る、着物の少女に問いかけた。すると、クロハは意味ありげな微笑みをし、喋りだした。

「あの方は……鬼に襲われたのでしょう」
「お、鬼?」
「おい! 女!! そりゃあ、どういう意味だ!?」

 手下達も、クロハの言葉に耳を傾けてきた。 
 自分のリーダーが、あんな悲鳴を上げたのだ。どうして悲鳴を上げたのかその理由を知りたいのであろう。
 刃を突きつける手下だが、それにも動じず淡々と語っていく。
 その姿は、まるでこの事態が当たり前に起きたかのような、動じることは無いことのような、落ち着きもあり優雅さもあるが……そこに微かな黒さもあった。

「鬼は、力無き小さな器を認めはしない。力無き者は、鬼の手により、魂を黄泉へと誘われる。力を受け入れるだけの器が無いくせに、調子に乗ったお馬鹿なあの兄貴さんは端的に言えば……死にました」

 満面な笑顔。
 その笑顔は、ホッとするようなものでも、ドキッとするようなものでもない。その笑顔は……恐怖を与える笑顔だった。

「ふ、ふざけるな!! 兄貴が死んだだぁ!? んなはずねえだろうが!!」
「そ、そうだぜ!! あんま調子にノッてると」
「ノッてると……どうなるんですか?」
「なっ!?」

 武器を構えた、山賊達。
 だが、それは脅しにもならず、クロハは動いた。背後より轟々とした炎が燃え上がり、背後にいた山賊を燃やす。
 それと同時に、自分を縛っていた縄も燃やしたようだ。

「あ、あぢぃいぃっ!!? うわああああっ!!?」
「て、てめえ! 何をしやがったあっ!?」

 その炎は、まだ燃え上がっている。
 クロハの体に纏わりつくように、まるで体の一部とでも言うようにクロハに纏わり付いている。山賊達は、仲間が炎により焼かれたことでクロハを警戒しだす。
 その優雅な姿は、まるで炎の舞を舞っているような幻覚を見せる。

「く、クロハ? お、お前……その姿」
「ふふふ。隠すつもりはなかったのです。あの時、一緒にご説明するつもりだったのですが。生憎と山賊さん達が、邪魔をしましたので。このような粗末な公開になりましたことを、お許しくださいまし」

 相変わらず、炎を纏ったままいつものように優雅な動作で謝罪をしてきたことに、謙吾はなんとも言えない感覚に陥る。

「あ、いや。別にいいだけどさ……謝る事ねえよ」
「そう言ってもらえるこちらも救われます。では、謙吾さん。もう少し、そこでお待ちくださいませ。今すぐ……お助けしますのでっ!」

 いつもよりも、声音を上げると、炎が反応するように燃え上がった。



☆★



「ひ、怯むな! 相手は所詮、女だ!」
「お、おらあああっ!!」
「やったらあああっ!!」

 地面に伏せられた謙吾を放って置いたまま、山賊達は炎を纏ったクロハへと突貫する。
 普通に考えるのならば、クロハほどの小さな少女が、大人数人、武器持ちに勝つのは不可能。だが、クロハの体に纏う紅の炎が、山賊達を圧倒する轟々しさがある。

 クロハ、クスッと笑い、山賊達の攻撃をひらり、ひらり、と優雅に回避していく。
 舞う炎は、そのまま山賊達に燃え移り、服を肉を焦がす。

「あっつ!? な、なんだこの炎!?」
「き、消えねえぞ!?」

 手で、転がって、自分に纏わりついた炎を消そうとする山賊達だが、その炎は一向に消えない。
 それどころか、抵抗すれば抵抗するほど炎が身を焼いていく。

「あなた方のような下種には、その炎は消せません。ゆっくりと……ゆっくりとその身を焼かれ、燃えカスが残らないぐらい……燃え上がりなさい」
「ひ、ひぃぃ!? た、助けてっ!」
「あ、あぢいぃよ!?」

 刻々と火達磨になっていく山賊達。
 クロハに炎を消すようにと、這いずりながら手を伸ばす。だが、そんな山賊達の姿を見て、クロハは拒絶する言葉を投げる。

「そうやってあなた方は、助けを求めた人達を何人殺してきましたか? 人を殺すということは、自分もいつかは殺されることを覚悟しないといけないのです。覚悟無き者は……死になさい」

 くるっと、完全に火達磨になる前に、残りの山賊達の方へと歩み寄っていく。
 仲間の姿。
 燃え上がるその姿を見て、山賊達は恐怖する。今まで優先だったこっちが、その驚異的な力の前に圧倒され形勢を逆転された。

 このままでは、自分達も今の仲間のようになってしまう。
 武器を握る手は、ガタガタと振るえ、足は自然とクロハへの恐怖から一歩、また一歩と後去って行く。
 だが、そこで、地面に倒れている謙吾を目視。
 ピンッとアイデアが浮かんだかのように山賊の一人は謙吾を力いっぱい地面に押し込み、刃を突きつけた。

「ち、近づくんじゃねえ!! 近づけば、てめえの大事なお仲間さんの首が胴体とお別れすることになるぜ? そ、それでもいいのか!?」
「ぐっ! やっぱり、山賊っていうのは卑怯な手段を使うんだな……」

 恐怖が無いわけじゃない。
 刃を突きつけられれば、こんな体験をしたことの無い普通の少年ならば、殺される、と体が震えることだろう。
 謙吾もそうだ。いくら、クロハが強くてもその目の前の恐怖に冷や汗を流す。

「謙吾さん。ご安心ください。そんな姑息な手段を使う下種など、すぐに倒して助けますので」

 だが、クロハの笑顔、その言葉は不思議と恐怖を消し去り、安心感に変えてしまった。
 圧倒的な力があるからか。それとも、他の何かがあるのか。
 ひとつ言えることは、クロハならこの状況を打破できる、ということだ。謙吾は、その言葉を信じる、という眼差しをクロハに向けた。

「何が助けるだ! こ、この状況でどうやって助けるって言うんだぁ? てめえが一歩でも動いたらこっちはすぐにでもこの小僧の首を切ることができるんだぜ? おい! てめえら、何してやがる! さっさとあの女を殺せ!!」

 謙吾を押さえ込んでいる山賊が、叫ぶ。
 その声に、恐怖はしながらもクロハへと突撃していく山賊達。

「あら? 私はここから一歩も動こうとはしませんよ? だって」

 目の色が変わった。 
 先ほどまで髪と同じ黒だった瞳が、今では纏っている炎と同じ紅色に変色している。それだけではない。頭部を見ると、そこには無かったはずの二本の角が生えてきたのだ。

 瞬間。

「ぎ、ぎゃああああっ!? ひ、火がああぁっ!? なんでっ! 触れてもねえのに……!?」

 謙吾は、自分を押さえ込んでいた山賊の悲鳴を聞き、顔を上げた。
 そこには、いつの間にか炎に身を焼かれ必死に消そうとしている山賊の姿があった。そして、謙吾はその隙を見逃さなかった。
 転がるように、一度山賊から距離を取り、急いで立ち上がる。

「クロハ! もう、大丈夫だ!!」
「はい。では、あなた方の罪を、私の炎にて……燃やし尽くしてあげましょうっ!」
「うわああっ!?」
「た、助けてくれえぇ!!」

 リーダーが死に、仲間が呆気なく燃やし尽くされたことにより、山賊達は戦意を完全に喪失してしまったようだ。
 子供のように泣きじゃくりながら、武器を放り、クロハから逃げていく。
 だが、それを見逃すほどクロハはあまくはなかった。

 山賊達は、抵抗しなければ殺さない、と言ったが、実際には数人ほど見せしめとして殺されているのだ。
 罪も無い善人を躊躇も無しに殺した。
 その怒りが、炎となり山賊達を襲った。

「あの世で、懺悔なさい」
「ぐぅ」
「一人は残したのか……」
「ええ。このまま私だけで、裁くのは村の方々に対して失礼と思いまして。残った山賊さんの処罰は、後にするとして……どうやら、謙吾さんの出番のようですよ?」
「え?」

 クロハが、天を仰ぐと、異世界に飛んですぐに出会った漆黒の獣。
 この世界に、災いを齎している悪獣が空を飛んでいた。謙吾が倒した悪獣と同種が、こちらに飛んできていた。
 さらには、森を薙ぎ倒しながら進んでくる音までが響いている。
 おそらく、地上を駆け抜けているのだろう。
 このままでは、村が発見され、村人達が襲われてしまう恐れがある。

「村の方々には、私が説明します。ですから、謙吾さんは悪獣を」
「わかった。頼んだぞ! クロハ!!」
「はい。謙吾さん。お気をつけて」

 迷うことなく、謙吾はオーガの下へと走る。
 謙吾と別れたクロハは、己の身に纏った炎を消し、角を戻し、村へと向かっていく。また、村人が、謙吾に対して勘違いをさせないために。悪獣が近づいていることを伝えるために、クロハは走った。

 オーガへと乗り込むために、コックピットを開いた謙吾は、中を見て驚く。
 そこにいたはずの山賊のリーダーがいないのだ。
 クロハから魂は、黄泉へと誘われた、と聞いたが、体が無いのはなぜだ? まさか、体ごと誘われたのか? 疑問は湧くが、今は考えている場合じゃない。

 コックピットに乗り込み、起動スイッチを押す。
 コントローラーを、握り、跪いていたオーガを立ち上がらせ、×ボタンと左スティックを同時に倒すことで、ブースターを噴かす。
 一気に、洞窟から外へと飛び立った。

 センサーを働かせて、地上を駆けている悪獣と空を飛んでいる悪獣をターゲットロック。
 先に、空を飛んでいる悪獣から倒すことにした。地上を駆けている悪獣は距離的に、まだ村へは到達しそうに無い。
 少なくとも、二分はかかるだろう。
 その短い間に、飛んでいる悪獣を倒し、地上の奴を叩く。

 頭で、シュミレーションした謙吾は、ブースターを噴かし、距離を詰めていく。
 悪獣はどうやら、接近するオーガに気づいたらしく、攻撃するため飛び掛ってきた。素早い攻撃だったが、謙吾は焦らず左スティックを横に倒し、回避しながら思考する。

(炎熱系の攻撃は駄目だ。あの時の様に山火事になる。だったら……!)

 ○ボタンを押し、一撃。
 吹き飛んだ悪獣は、唸りを上げた。その隙を見逃さず、L2を押しオーガに装備されている武装を転移させた。
 何も無い空間より、粒子が形となりその手に収まる。
 それは、鬼しかり、人間しかり、調理にも、殺しにもよく使われ刃物。

「《極包丁オーガ・ブレード》!!」

 極大まで、大きくなった包丁だった。
 これは、オーガに装備できる武装の中でも、定番の接近用武装のひとつ。本来であるなら、謙吾が登録していた武装はもう少し厨二くさく、質もよく、かっこいいデザインのものだったが、今は、初期装備の極包丁オーガ・ブレードしかなかった。

 しかしながら、切れ味はかなりのもの。
 迷わず、謙吾は、武装を装備したことで攻撃パターンが変わったオーガで攻撃を仕掛ける。
 △ボタン単体で押す。

「ぶった切れろーー!!!」

 十字に、切り裂く。
 接近用斬撃《鬼十字》と呼ばれる強技。その名の通り、敵を十字に切り裂くシンプルな技だ。だが、その威力は悪獣を倒すには十分すぎるものだった。
 四散した悪獣は呆気なく地面へと墜落していく。

「よし! 次だ!!」

 武装をしたまま、地上へと降下。
 十一メートルもあるロボットが地上に降りた事で、若干木々を薙ぎ倒してしまったが、それ以上に木々を薙ぎ倒しながら接近してくる漆黒の獣が居た。
 その姿は、空腹で獲物を求める肉食の獣。
 異常に発達した二本の牙、ギラリと煌く瞳はハンターな鋭さだ。

 全長、五メートルはある。
 オーガとよりは小さいにしろ、人間のサイズと比べれば明らかに大きい。
 そんな獣を、このまま通すわけにはいかない。
 得物を構え、そいつの前に立ち塞がる。

「ぐっ!」

 案の定飛び掛ってきた。
 鋭利な牙がチラつく、口を包丁の刃で□ボタンを押すことで受け止める。

「飛んでけえーー!!!」

 ○ボタンを押し、上空へと打ち上げた。
 すかさず、上空へと飛翔。
 地上では、素早く動けるだろうが、空では身動きが取らないだろう。後は、翼を捥がれた鳥のように、落ちるだ。
 謙吾は、ラストアタックに、△ボタンと○ボタンを同時に押すことで《デュアル・アタック》が発生する。

 簡単に説明するならば、通常の攻撃と強力な攻撃が合わさり、さらに強力な攻撃が完成するのだ。
 コマンドは、単純だが武装によって違う攻撃パターンがあるので、多種多様で楽しい。
 今回の場合、接近用武装ブレードにより、発動する攻撃は。

《連撃斬―鬼乱れ―》

 鋭い刃で、相手に十連撃の攻撃を食らわす。
 単純な連続攻撃だが、武装のランクによっては、ガードの上にから削りダメージを相当与えられる。そして、序盤の敵になら有効な攻撃だと言えよう。

 結果。
 敵は、四散した悪獣以上に細切れにされ、地上へと落下していった。落下した場所は、一箇所に集中させたので、あまり被害は無いと思われる。
 ともあれ、これで悪獣からの脅威は去った。
 後処理は、燃やせば良いだろうが、周りに火が移らないように注意をする必要がある。

「村は、無事みたいだな……ふう」

 方向転換させ、地上にある村を確認すると、こちらにクロハが手を振っていた。
 いや、クロハだけじゃない。
 村人達も、大喜びしながら手を振っていた。最初の頃より、恐怖は無く、むしろ感謝の気持ちが増しているかのような表情だ。

 村に中心は、十一メートルのオーガが着陸できるほどの広さがあり、謙吾は直接、村へと降り立った。
 コックピットから降りた謙吾を村人達は。

「ありがとう! 君が居なかったら、今頃どうなっていたか!」
「ごめんなさいね……。あの時は、怖がったりして」
「俺達を助けてくれたってのに……。すまねえな、兄ちゃん」

 感謝の言葉と、謝罪が同時に襲ってきた。
 ここまで、感謝と謝罪をされたことは今までなかった謙吾は、どう対応して良いか分からず、困惑。
 だが、そこへクロハが割り込み、村人達を一度落ち着くように言葉を送る。

「皆さん。感謝の言葉と謝罪は、また今度にしてくださいまし。謙吾さんは、山賊と悪獣との戦いで、疲れております。また、後日ということにしていただけませんか?」
「そ、そうだな。坊主も疲れてるんだ。休ませてやらねえと」
「そうだわ! 疲れを吹っ飛ばす薬草入りのお茶があるのだけれど」
「いえ。謙吾さんは、私の家で預かります。皆様は、それぞれの家にお帰りになってください。それと……亡骸は私が弔っておきます」

 クロハの言葉に、村人達は、いや謙吾さえも表情が固まった。
 山賊達に、見せしめとして殺された数人の村人。
 その亡骸を、クロハは自分から弔うと宣言したのだ。だが、村人達は、クロハだけに任せてはおけない。自分達も手伝う! と協力の意思を見せた。

「そうですか……。では、共に弔ってあげましょう。我々の家族を」
「クロハ。俺も手伝うぜ」
「……ありがとうございます」

 こうして、山賊襲来と悪獣襲来は謙吾とクロハの共闘のおかげで幕を閉じた。
 だが、これはまだ、始まりでしかない。
 これから、起こりうる出来事の序章に過ぎないのだ。
如何でしたでしょうか? 初のロボットものに挑戦。
ロボットものは好きなので、増えたり……しないかなぁ、なんて。

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