序章
3話完結の予定ですぅ〜
「今日のおすすめ、お願い。」
「かしこまりました〜」
薄暗い店内に陽気なジャズと話し声が響いている……
「パイパイピーチのカクテルです〜」
グラスの中のドロリとした液体を一気に飲み干す…
「はぁ〜〜」
気分はいつも通り憂鬱だ。俺は"元"勇者。12年前、とある小さな国を支配していた魔物の王を倒して以来、その報酬の金であっちこっち放浪の旅にをしている。いわゆる社会で言う"フリーター"だ。
「会計、お願い。」
「はぁ〜い。………500ペソナになりますぅ。」
チャリ……
「ありがとうございましたぁ〜」
軽くお辞儀をする店員を背に俺は店を離れた……
かつて魔王を倒した俺……今はそれ以上に大きな敵に苦戦している。就職だ。
勇者になった頃は将来の生活なんてちょろいもんだと思っていた。ただただ魔物を倒すだけで、王国からオファーが来て、大して強くない敵を蹴散らし、その金で遊んで暮らす………しかし現実は甘くなかった。
決して勇者は一人ではない。そして勇者にもプロとアマチュアがいる。大して名も広くない俺には、一度依頼が来て以来、めっきり仕事が舞い込んでこなかったのだ。勇者法により、5年間活動がない勇者は強制退職させられる……こうして俺は"元"勇者となったのだ。今では報酬の金も残り少なくなり、働き手を探しているということだ。
「はぁ………」
大きなため息が漏れた。
「そこの男ォ!待てィ!」
「うわっ!」
ついついびっくりして声をだしてしまった。
振り向くと、そこにはガボガボのローブを羽織った老人が道端に座り込んでいた………
寒い……