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74.平凡なる超えし者、モンスターの軍団を見つける……





 印象としては、王都より密度が高いって感じがする。


 建物同士の間隔も近く、道も狭く。だから必然的に擦れ違う人の距離も近い。

 だからかどうかは知らないが、活気がぎゅうぎゅうに詰まっている印象があり、非常ににぎやかに感じる。


 まあ、近くで騒いでる人がいるからかもしれないけど。

 一応大通りになるこの道でさえ、露店が出ていて呼び込みとか派手にやってるし。王都ではたぶん大通りでの出店は基本禁止されているはずだけど、ここではOKみたいだ。


 ここが、ダンジョンの街マイセンである。


 やはりダンジョンが売りなだけに、冒険者や、元冒険者風の者が多いみたいだね。

 そして商人なんかは冒険者向けに様々な物を売る、あるいは買い取ると。


 んー……用途がよくわからない古ぼけた何か、いわゆるわけわからん骨董品とか好きなんだけど、この街にはその手のあやしいアイテムがたくさんありそうだ。露店自体にも並んでいるしね。わけわからんのが。


 でも、そういうわけにもいかないか。

 のんびり歩いて回ってみたい気もするけど、観光している場合じゃないし。


 えーと、とりあえず宝石屋……か、錬金術関係の店はどこかな? ちゃんと準備していかないと現場で困るからな。





 小娘と見てぼったくろうとした宝石商に、「えー? ここって適正価格さえわかんないのかなー? 王都に帰ったら貴族の友達に教えなきゃなー」と大声で白々しく騒いだりした結果交渉に勝利し、目当ての物を安く買うことができた。


 「ドラゴンの心臓」を売ったお金と、キモコウモリのドロップアイテムで、なんとか足りた。

 たぶん正規の料金じゃ、無理だったろうなぁ。まあ、ぼったくろうとした相手が悪かったってことで。


 ちなみにキモコウモリの落し物である「黒い水晶」のようなものは、黒狼石という、どっかに生息する黒い狼の腹の中から出てくる石の一種で、宝石扱いらしい。

 更にルーツを追うと、黒い狼が好んで食べる、とある物質を含んだ植物を食べることで、体内に石が発生するのではないか、と本には書いてあった。

 人で言うところの尿路結石的なものなのかどうかはちょっとわからないが、一例と考えれば、生き物の体内に石ができるって理屈は納得しやすいかもしれない。


 なお、なぜキモコウモリが黒狼石を落とすのかは、ゲームの不思議ということで。ドロップ品に関しては脈絡ないものばっかだからね。


 まあとにかく、これで準備は整った。


 冒険者たちがモンスター討伐に出るのは、明日という話だ。

 だから、今日中に片をつければ問題ないだろう。


 モンスターの規模はわからないが、そっちは冒険者に処理させればいいかな。

 だって討伐部隊の参加者を集めるってことは、どうにかできる見込みがあるからだ。


 どう考えても勝てないと判断すれば、今頃は情報を公開して一般人を避難させているだろう。

 領主がよっぽどマヌケじゃなければね。


 とりあえず、まずいのは魔将軍だ。この問題の中心にいる奴だ。

 魔王の話では、生身の人間では近づくだけで瘴気でやられるらしいから。


 問題の魔将軍がいる今、モンスターの集団に討伐隊が当たれば、戦うまでもなく全滅しかねない。


 カイランくんやゼータも参加するみたいだし、是が非でも阻止せねばならない。





 遺跡の情報について聞き込みでも……と思ったが、別にその必要がないことに気づく。


「あっちか」


 地面なのか、雑草でも植物が続いているからか。

 百花鼠の身体に魔力がそこそこ充実し始めた今では、探ろうと思えば遠くの気配も感じられるようになっていた。


 モンスターが大量にいる場所。

 結構大規模な集団なので、割とすぐに見つけることができた。やや距離があるな。なるほど、街の一般人には見つからない程度には見えない場所にいるようだ。


「申し訳ありません。事故が発生し、明日までは封鎖するよう領主の命が下っておりまして……」


 出入り口の門前では、丁寧な口調だが疲れきっている顔をした若い兵士が、街を出たいと主張してくる人たちにその都度説明し、追い返している。


 そうか。やっぱり封鎖しているのか。


 明日討伐隊が出れば、どこまで戦場が広がるかわからない。巻き込まれたら大変だ。

 それに、外に出た人がうっかりモンスターの集団を見つけたり、近づいて刺激したりしたら、モンスターたちが動き出すきっかけになるかもしれない。


 大事の前の小事ってやつだ。

 明日の討伐依頼を最小限の被害で乗り切るためには、必要な措置だと私は思う。


 ――ただ、私には適用されないだけで。


 私は物陰でネズミに戻ると、街の内外を隔てる高い外壁を登り、脱出した。





 そこは、森の中だった。


「おーおーいるいる」


 人型になって走ることしばし、遠目にも気配的にも、問題の連中が見えてきた。


 森からはみ出している奴もいるが、多くが木陰の中で蠢いている。


 ゾンビ。

 スケルトン。

 ゾンビドッグ。

 グール。

 ポイズンゼリー。

 ゴースト。

 リッチ。

 コールドウィスプ。

 ボーンプラント。

 リビングアーマー。

 などなど。


 おいおい、思いっきり死霊軍団じゃん。魔王軍っぽーい。つかホラー耐性なかったら絶対引き返してたわ。


 あと知らないのは、ゾンビの巨人みたいな奴だな。大きいからかなり目立つんだよね。具体的な名前があるのか、ゾンビって括りでいいのか。

 まあ、でかいだけのモンスターなんて怖くもなんともないけど。


 数は、五千は越えているかな。

 よくもまあアンデッドばっかこんなに集めたなぁ。


 さて行くか、と足を出そうとしたところで、地面から何者かが生えてきた。


 いや、正確には、私の影(・・・)から。


 影をそのまま引き伸ばしたかのような、人型の何か。なかなか強力な魔力を感じる。


「――失礼。名のある獣とお見受けしましたが」


 おっと。しゃべったよ。やはり知能が高い、意思の疎通ができるアンデッドか。


 何分見た目はただの人型の影なので、性別さえわからなかったのだが、声を聞く限り青年って感じだ。

 声には気品があるけど、どこか傲慢な感じもしないでもない。


「そういう君は誰? 心当たりがないんだけど」


「何、ただの吸血鬼ですよ。陽の下なのであなたの影を借りていますがね」


 ああ、日光に弱いタイプね。

 もうすぐ夕方だけど、まだまだ明るいからね。難儀ですなぁ。


「そちらは?」


「幻獣だよ」


「ほう。初めて見ましたね」


 私も影タイプの吸血鬼は初めてだよ。


「君らの大将に用があって来たんだけど、案内してくれない?」


「生憎、今は取り込み中でして。出直していただけませんか」


 あっそう。出発の準備に忙しいと。


「大事な用事があるんだけど。内容も聞かず門前払いしていいの?」


「何者も通すなと命令されておりますので」


 あーそう。ふーん。


「ぜひお引取り――ヲッ!?」


 瞬時に生み出した棍棒で、影をぶん殴ってやった。


 影は霧散した。

 まあ本体は森の中で、今の影は何かしらの魔法で意識だけ飛ばしてきたんだと思うけど。手ごたえもなかったし死んではいないだろう。


「悪いね。君と遊んでる暇ないから」


 忙しいくらいじゃ足を止める理由にはならないからね。


「野蛮な方だ。これだから獣は」


 あ、また出てきた。


「あのさ」


 とんとんと棍棒を肩に担ぎ、じっと影を見つめる。


「手加減してあげてることには、気づいてる?」


「はい? 私はこれでも吸血鬼の王の血を持つ高貴なる存在。下賎な獣風情に遅れを取るはずがないでしょう? 先ほどは不意を突かれましたが、別段何の支障もありませんよ」


 あら、やっぱ傲慢な感じ?


「いいねえ。私、君みたいな奴、嫌いじゃないんだよね」


 少しだけ、棍棒に力を込める。


「今度のはちょっと痛い(・・・・・・)けど、吸血鬼の王? の、血を持つ者として? がんばって耐えてね?」


 私は棍棒――聖樹ベルラルレイア製の聖なる棒に魔力を込め。


 目の前の闇なる魔力に繋がる本体へと。

 聖なる力を流し込み、高速で伝導するように、コツーンとぶん殴ってやった。


 軽くだよ。軽くね。


「――ぎゃああぁぁぁぁ……」


 森の方でかすかに悲鳴が聞こえたけど、まあ、私には関係ないだろう。

 吸血鬼の王? の血を持つ高貴なる存在? が、軽く小突いた程度で音を上げるわけないしね。


 もう影も出てこないみたいだし、行こ行こ。


 私は棍棒をぶら下げて死霊軍団へと歩み寄る。






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