00.平凡なる超えし者
そういう家系らしい。
特別に何かがあるとかじゃなく、血液型のようなただの体質なんだと私は聞いた。
私がそう説明されたのは、10歳くらいの頃だったかな。
うちの……弓原の家系は、よく神隠しに遭う家系。
神隠しの正体は、「別の世界に呼ばれる」から消える。
すごく簡単に言えば、弓原家の一族は、召喚獣的なものなのである。
とある世界の占い師の話では、私は「中庸の星」という珍しい魂の色をしているとか。
普遍なる平凡……将棋なら歩、チェスならポーン、ナントカ無双だったら名もなき雑魚兵士。
「特別な者には決してなれない特別な平凡」という、生まれながらにして筋金入りの普通の人で、どこまで行っても普通の人という星の下にいる、らしい。
占いはいい結果しか信じない私だが、なぜだかこの説だけは深く記憶に刻まれている。まったく頑固な油汚れである。
ただ、私は弓原の血を濃く継いでいるそうだ。
はじめての神隠しは9歳の時だし、それからは年に三回はどこぞの世界に呼ばれていると思う。
魔法少女にもなったし。
熱血系スポーツ物語のマネージャー的な者にもなったし。
いじめられっ子が復讐する的なストーリーのいじめられっ子にもなったし、また傍観者的なモブにもなったし。
いわゆる剣と魔法の世界的な異世界の戦乱に巻き込まれたりもしたし。
神がやってくるレストランとかいうわけのわからない世界観の舞台でコックもしたし。
そうかと思えば血なまぐさいドロッドロの魔界のような世界観で、氷結貴公子なるイケメン悪魔貴族に仕える使用人兼コックをやったりもしたし。
まったく人気者の召喚獣で困ってしまう。
おかげさまで、散々振り回されてきた私は色々な能力を身に付け、今や単独で世界を超えることができるようになった。
気に入らない世界ならさっさと帰るし、そうじゃなければ観光程度に楽しんで方針を決める。
気になった世界なら、自分から行くこともできるし。
もはや私にとっての異世界転移や異世界召喚なんて、小旅行に等しい。
ああ、そういえばまだ名乗ってなかったっけ。
私の名前は、弓原結。よろしくね。