よねねぐ告白。
予想外の告白。
俺は今しがた聞いた言葉を、理解する事ができなかった。
「この世界は仮想世界だ」
そうストガさんは言ったのだろうか。
まるで、陽炎のように掴みどころの無い話だ。
頭の中でゆらりゆらゆら揺れるその言葉は、不敵に嗤っている気がした。
「パラレルワールドって、ご存知ですか」
「パラレル……平行世界? 」
「知ってるんですね」
その瞬間、ストガさんの瞳にある種の危うい輝きが宿った。
その輝きもまた、消えそうに揺らめいている。
「この世界も、パラレルワールドなんですよ」
「待って、タンマ! 何、どうしてそんな話するの? 中二的展開をご所望なら、違う作品に行ってよね! 俺は平々凡々な、いち男子中学生に過ぎないんだから……」
「何を焦っているんですか? もしかして……覚えてるんですね?」
「……何を? 」
「トマト君は忘れたフリがお好きなんですね」
ストガさんに詰め寄られて、俺は机の上に築かれた教科書の山を突き崩してしまった。
次に崩れたのは、俺の膝だ。
俺はストガさんを見上げた。
「今なにが起きてるか、思い出したいですか? 」
ストガさんの唇の動きが、瞬きが、酷く無機質で、機械的に見えた。
背筋を、冷たい汗が撫でた。
「トマト君、ちょっとだけですよ」
そう言うと、ストガさんのあたたかい手が俺の手を包んだ。
ああ。
俺は、何か、わすれている。
その瞬間に、今まで封じ込めていた疑問が、一気にこの世界に溢れ出した。
どうして俺のそばには良川五月という存在があるのだろう。
どうして俺には10歳までの記憶が抜けているのだろう。
どうして俺には……
どうして俺には、両親がいないんだろう。
その疑問は、ひとたび咀嚼すると、全部嘘になった。
俺は嘘の中で生きていた。
嘘の世界は四角く分解されて、やがて真っ白になった。