ぶったまげだじゃ。
びっくりしました。
ここまでの復習。
俺の隣の席は、ワケありの転入生。
何故か名前を教えてくれそうにないので、俺はストガさん(ストレンジガールの略。ただし、ストレンジにおかしなって訳を付けないでほしい。あくまで、ストレンジャーの意味)と呼ばせていただくことにした。
ストガさんだって、俺をトマト君なんて呼ぶんだからおあいこ。
……おあいこ。
いや。
そもそも俺はアダ名つけるとかアダ名で呼ぶとか、そーいう風潮は大嫌いなんだけど。
アダ名なんて、身体の特徴とかでつけるでしょ。
それが嫌なんだって。
たぶんストガさんは俺の赤毛を見てトマト君って、アダ名した。
なりたくて俺、赤毛になったワケじゃないからね。
結構俺の半生、ディープだよ。ウエットだよ。
そんなの、赤の他人のストガさんが受け止めれる筈ないじゃない。
話す気もないけど。
けど……
放課後になり、過半数以上が運動部の我が6組はあっという間にもぬけの殻になった。
残っているのは、俺と、ストガさんだけ。
二人きり。
机から教科書を出し、いつもの3倍はテキパキと、持って帰る教科書と置き勉する教科書とを選別した。
マシンのような速度で教科書をえり好みする俺の横で、ストガさんは肩掛けの学生カバンをリュックのように背負い、机に座ってケータイを弄っている。
同じ中学生のはずなのに、顔立ちや表情などは酷く大人びて見えるのは何故だ。
「トマト君は、あの動画に覚えはありますか」
静寂を断ち切ったのは、ストガさんのその一言だった。
そしてその動画とは、あの動画らしかった。
良川に見せてもらったとき、再生数は4桁くらいだった。
あの中にストガさんも含まれていたのか。
そう考えると、世界って狭い。
「ストガさんも、ああいう実況動画好きなんだね」
「……まぁ、そんな感じです」
ストガさんはケータイを閉じた。
そして、目線で俺の返答を要求した。
「俺もびっくりしたって。だって、あの日のあの時間は俺、家に居たんだし……なんでおっさんと問答してんだろ」
良川は近いうちに答えをくれるだろうが、俺は気が長い方じゃない。
もしストガさんが何か知っているのなら、今ストガさんに聞きたい。
ストガさんはその無駄に輝く瞳で、俺をみつめていた。
そこに、俺が映っている。
「この世界は仮想の世界なんです」
「は」
瞳の中の俺は、ポカンと口を開けていた………