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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

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88.森の夜明け

 ナイヴィスがワレンティナの手当てを終えると、隊長が言った。

 「ワレンティナ、あぁ言う場合は、自分から術を解いて避けるんだ」


 「はーい。以後、気をつけます」

 ワレンティナは、元気いっぱいに返事をした。ケロリとしている。食い殺されそうになった恐怖は、微塵もない明るい声だ。


 ナイヴィスは従妹(いとこ)の図太さに呆れた。

 同時に、その(たくま)しさが羨ましくなった。


 ソール隊長の声にも、ワレンティナの不注意を咎める様子はない。


 〈生き残ったから、実戦が勉強になるのよ〉

 ……はい。


 〈頭でわかってても、咄嗟に体が動くとは限らないでしょ〉

 ナイヴィスは【盾】の訓練を思い出し、(うつむ)いた。


 その後は、朝まで何事もなく、静かだった。


 ムグラーは、夜明けの少し前に意識を取り戻した。

 「ご迷惑をお掛けして、すみません」

 「うむ。足下には気を付けるようにな」

 「ま、みんな生きてるし、任務は大成功だ」

 「ご褒美、何がもらえるかな?」


 ナイヴィスには、さっぱりした顔で笑いあう四人が別世界の住人に見えた。

 自分の不甲斐なさに(うつむ)く。隊長の【真水(さみず)の壁】がなければ、ナイヴィスではムグラーを守れなかったかもしれない。


 〈そんなこと、くよくよしたって仕方ないでしょ〉

 ……でも……………………


 藍色の空の端が白む。

 星々が輝きを失い、ひとつ、またひとつと姿を消す。

 代わりに空の東から、薄く明るい色が広がってゆく。


 ムグラーが横になったまま、頭を巡らせ、目礼した。

 「ナイヴィスさん、治療、ありがとうございました。お蔭で助かりました」

 「ひぇっ、あの、私がもっとちゃんと戦えれば、あんな怪我……」

 隊長がナイヴィスの肩を軽く叩いた。


 その先を言わせず、優しい声音で言う。

 「戦場で必要とされるのは、何も直接の武力だけではない。

 癒しや補給などの支援がなくては、戦えん。勿論、持ち場や作戦、役割分担はあるが、各々ができることで助け合うのだ」

 以前も、女騎士ポリリーザ・リンデニーに同じことを言われた。


 「俺だって【(ワシ)】や【(タカ)】系の術は、まだ覚えてないっす」

 考古学や歴史学の【(あゆ)(トキ)】学派を修めたトルストローグが、軽い調子で笑った。

 剣では戦えるが、魔法では戦えない。だが、騎士になる前に積んだ様々な経験を、任務に活かしている。


 「烈霜(れっそう)騎士団は、様々な学派の力を必要としている。戦えないことを過度に気に病む必要はない」

 隊長の言葉に、声もなく(うなず)く。


 明けゆく光に鳥が目覚め、鳴き交わしながら(ねぐら)()つ。

 微風(そよかぜ)にさざめき、澄んだ泉が光の破片をきらめかせる。

 梢が朝日を受け、闇を抜けた空へやわらかな光を返す。

 森の夜が明けた。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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