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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

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85.戦い終えて

 「図体が大きい分、しぶとくてな……」

 ソール隊長が、荒い呼吸を整えながら、ナイヴィスたちに近付く。


 ムグラーの(かたわ)らにしゃがんで容体を確認し、ナイヴィスを(ねぎら)った。

 「そちらも、何とかなったな。よくやった」


 トルストローグが、地面から何かを拾い集めている。ワレンティナは、地に刺さった赤い角を引っこ抜いていた。


 〈あれ、何してるかわかる?〉

 ……わかりません。

 〈魔獣の体って、薬や道具の素材になるものがあるから、残ってたら拾って帰るの〉


 魔法で本体を倒す前に切り離された部分は、灰にならずに残る。

 物質の武器か、魔法でも「存在の本質」を傷付けずにトドメを刺せば、死骸は丸ごと残るが、相当な腕が必要だ。


 魔獣の死骸をそのまま残しておくと、雑妖や三界の魔物の苗床(なえどこ)になってしまう。必要な部分を採った後で、残りは灰にする。


 緑の雄牛の角と、濃紺の魔獣の牙。

 それが何の素材になるかまでは、女騎士ポリリーザ・リンデニーも知らなかった。


 ナイヴィスの視線に気付き、隊長が説明する。

 「そう言えば、ナイヴィスには説明がまだだったな。

 魔獣の角や牙などは、回収することになっている。一旦、国庫へ入れて、例えば、薬になるものなら施療院の調剤部へ送られる」


 「それでね、いいものだったら、私たちにご褒美がもらえるの」

 ワレンティナが赤い角を手に、笑顔で言い添えた。この部分だけでも、ワレンティナの腕くらいの長さだ。

 トルストローグが、回収した牙を隊長に見せる。大人の指程もある物が四本、短い破片が数個あった。


 「そうですか……」

 ナイヴィスは、褒美には全く興味がそそられなかった。


 一刻も早く、家へ帰りたい。

 ムグラーを医師に診せたい。


 そのふたつの思いで胸がいっぱいだった。


 「ムグラーは意識が戻るまで動かせんな。皆も疲れている。朝までここで待機する」

 二組に分け、まず、ワレンティナとトルストローグが休むことになった。


 泉の水を起ち上げ、返り血と泥を洗い流す。

 隊長は、ムグラーを中心に簡易結界を敷いた。


 「あ、あの、何か、お手伝いできることは……」

 「うむ。荷物をまとめておいてくれ」

 「は、はいッ」

 慌てて立ち上がり、空の背負い袋を手に、ナイヴィスは自分が散らかした荷物を拾い集める。


 簡易結界が完成し、隊長も術で身体を洗い清めた。

 ワレンティナとトルストローグが、ムグラーを間に挟んで横になる。草刈り跡がちくちくするが、疲れているのか、気にする様子はなかった。


 森に静けさが戻る。

 荷物の片付けが終わり、ナイヴィスは結界の外に腰を降ろした。

 隊長が念を入れて、森と簡易結界の間に【真水(さみず)の壁】を建てる。


 誰も言葉を交わさず、時が過ぎる。


 月光のように淡い【灯】に照らされ、森の闇の中に泉がぼんやり浮かび上がっていた。

 どこからともなく、虫の音がする。耳を澄ますと、風にそよぐ木立の葉擦(はず)れや、遠くで鳴く(フクロウ)の声も聞こえた。


 物音がするのに、それが却って静けさを感じさせる。

 ナイヴィスは、先程までの死闘と今の静寂が不思議だった。


 〈視るつもりで聴けば、樹や泉、風の精とかの声も聞こえるけど、今は魔獣や獣を警戒するのよ〉


 ナイヴィスは無言で頷いた。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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