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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

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81.戦う意志を

 「ムグラーッ!」

 ワレンティナが悲痛な叫びを上げる。


 盾の展開が間に合わない。角を振り立て、雄牛が突き上げた。(かわ)し切れず、脇腹が(えぐ)られる。

 騎士の身体を引っ掛け、雄牛が首を大きく横に振った。長身のムグラーが、軽々と跳ね飛ばされる。


 「あぁッ!」

 ムグラーが背中から地に叩きつけられ、激しく咳込む。


 ナイヴィスは、自分が攻撃を受けたような衝撃を覚えた。勿論(もちろん)、ナイヴィスの身体は無事だ。自分もムグラーに駆け寄り、助け起こしたいが、足が(すく)んで動けない。


 雄牛は草地を駆け、木立の手前で大きく泉を回り込んだ。今度は、小柄なワレンティナに突きかかる。


 「霹靂(かむとけ)(あめ)()りたる(いかづち)は、魔縁(まえん)(から)めて魔魅(まみ)捕る網ぞ」

 ワレンティナは呪文を唱え、横へ跳び退()きながら、剣を横に()いだ。稲妻のように輝く網が広がる。


 魔獣は頭から【紫電(しでん)の網】の中心に突っ込んだ。

 網が魔獣の上体を包み、収縮する。緑の雄牛は激しく身を(よじ)り、苦痛に吠えた。もがけばもがく程、上半身が網目状に切り刻まれ、青黒い血を(ほとばし)らせる。


 ワレンティナは、魔獣の動きを目で追いながら、木立の間を移動した。


 〈あなたは、どうしたいの? 攻撃? 防禦?〉

 「たっ……たすっ……」

 全身が震え、言葉にならない。


 ワレンティナが雄牛の背後に回り込んだ。苦痛に跳ねる雄牛へ、再び【紫電の網】を投げる。輝く網が右腿に食い込み、巨体が倒れる。


 ……ムグラーを……助けたいのに……ッ!


 焦燥感に胸が締め付けられるが、身体は恐怖に(とら)われ、動かない。

 ムグラーが脇腹を押え、片膝をついた。剣を支えに立ち上がろうとする。鎧の【防護】でも防ぎきれず、出血が酷い。


 「う……う、後ろーッ!」


 ワレンティナとムグラーが、同時に振り向く。

 濃紺の長い魔獣が、立ち上がろうとするムグラーの背後に迫っていた。ムグラーは横へ倒れ、その一撃を紙一重で(かわ)した。そのまま地を転がり、距離を取る。


 魔獣は地面で(したた)か鼻面を打ち、その勢いで牙が数本折れ、跳ね上がった。


 ナイヴィスは、自分の大声に驚いた。

 生まれてこの方、腹の底からこんなに叫んだのは、初めてだ。


 〈はい、大変よくできました。で、あなたはどうしたい? 攻撃? 防禦?〉

 「なっ、何でもいいので、ムグラーを、助けたいです」

 木の幹を背に震えながらも、今度は言えた。


 〈そう。じゃ、攻撃ッ!〉


 命令と同時に「攻撃」を選択した理由が、幾つも同時に提示される。


 簡易結界は突破された。

 ナイヴィスに使える【不可視(みえず)の盾】は、不慣れな上に使い捨て。

 身を守る手段は、鎧の各種防護魔法のみ。それも突破された。

 ナイヴィスは、まだ【壁】を建てられない。

 まだ、攻撃の呪符も使いこなせない。


 魔獣はどちらも手負い。魔力を持つ人間を喰らい、傷を癒したがっている。

 負傷したムグラーは、恰好(かっこう)の標的。


 まず、緑の雄牛にトドメを刺す。

 繋がった心が、大量の情報と、言葉にならない思いを、瞬時に伝えあう。


 〈さあ、あのコの所へ走りなさいッ!〉


 真名(まな)への命令ではない。ただ一言の命令が、ナイヴィスを突き動かした。

 右手で柄をしっかり握り直す。女騎士の見えない手が、強く握り返した。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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