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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

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79.紺色の大蛇

 トルストローグは、もう一体を警戒していた。

 葉擦れの音が上から聞こえる。【灯】の範囲に、夜闇に溶け込む紺色のモノが入った。長い。夜の森に紛れ、長い何かが、枝葉を伝って近付いて来る。

 隊長が、長いモノに向き直る。


 ワレンティナは再度、同じ呪文を唱えた。緑の巨体に飛礫(つぶて)が叩きつけられる。

 跳躍しようと身を縮めた緑の雄牛が、蹈鞴(たたら)を踏んで留まった。


 その隙にムグラーが【(さえ)の壁】を建てる。【石の雨】が止んだ瞬間、魔の雄牛が地を蹴った。【網】が絡み、歩幅が狭められる。思うように動けぬ怒りを目に(たぎ)らせ、ムグラーに突進した。


 見えない壁に阻まれ、雄牛の巨体が自らの力でひしゃげる。角が片方、折れて落ちる。重い音を立て、地に突き立った。


 ナイヴィスの手で、抜き身の魔剣が魔力を収斂(しゅうれん)し、刃を実体化させる。


 〈私が「振れ」って言ったら、振り下ろすのよ〉

 「えっ?」


 長剣を握った右腕だけが前へ出る。

 右腕に引きずられ、足も前へ。折角、戻った簡易結界から引きずり出される。


 「ギャーッ! 無理むりムリッ! やめて止めてーッ!」

 〈いいから出なさいッ! あんなの雑魚よ〉


 引きずられながら、視線を左へ向ける。

 頼みのソール隊長は、トルストローグと共に、紺色の大蛇と戦っていた。


 蛇の頭を更に引き伸ばした頭部。大きく開けた口の中には、鋭い牙が二列、びっしり生えている。

 頭部だけで、大人の身長並の長さだ。闇に溶け、全体は定かでない。【灯】の範囲に入った部分だけでも、相当な長さだ。


 木の幹に巻き付いたまま、解いた上体を鞭のようにしならせ、凄まじい速さで草地の人間を襲う。【真水(さみず)の壁】に阻まれ、()え無く弾かれた。

 紺色の大蛇が触れた瞬間、【壁】が青く色付く。


 緑の雄牛が、姿勢を低くした。

 角が赤熱したように輝く。ムグラーが左手袋の【不可視(みえず)の盾】を展開した。

 健全な角と、折れ残ったもう一本の間に、火花が散る。その数が次第に増し、斜めに(いびつ)な線が現れた。線の中央で縦に激しく火花が弾ける。


 「なっ……」

 ナイヴィスは言葉が続かない。

 魔剣が、ナイヴィスの疑問と混乱を代弁し、次の行動も示す。


 〈あれが何で、これから何が起こるのか、ですって? 今回はこのコが守ってくれるみたいだから、見てなさい〉


 「えぇっ?」

 思わず声が裏返る。


 角の間で光球が膨れ上がり、辺りが明るくなる。緑の雄牛が、大きな動作で首を振り、光球が放たれた。まばゆい軌跡を描き、二人を襲う。


 ムグラーが【不可視(みえず)の盾】を構え、雄牛とナイヴィスの間に立ち(はだ)かった。


 光球が【盾】に触れる。


 地を鞭打つような音と同時に、輝きが消えた。

 辺りが唐突に【灯】が照らす薄闇に戻る。


 ほんの一瞬の出来事の筈だが、ナイヴィスにはとてつもなく長く感じられた。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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