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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第四章 次の任務へ

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67.禍巣食う森

 禍巣食う森(わざわいすくうもり)

 草に覆われた休耕地。その向こうに森が待ち構えている。鳥と蝉の声が賑やかだ。

 以前は村人が木の実やきのこ、薬草などを採りに入っていたが、二、三年前から魔物が出るようになった為、近付かないようにしていると言う。


 村で戦えそうなのは、狩人唯一人。

 一人ではどうにもできない。彼の子供たちもまだ幼いので、狩り場を変えた。

 念の為、近くの畑も耕作をやめ、すっかり荒れ地になっている。


 「害意 殺気 捕食者の姿 敵を(とら)える蜂角鷹(ハチクマ)(まなこ)

 敵を(のが)さぬ蜂角鷹の眼 (つまび)らかにせよ」


 ムグラーが【索敵】を唱えた。

 魔法で知覚を拡大した眼で、鬱蒼(うっそう)と生い茂る森を凝視する。

 隊員たちは静かに、ムグラーの探知を待つ。


 「視力の届く範囲には居ません。もっと奥でしょう」

 肉眼でも霊視でも「敵」の姿は見つからなかった。


 ナイヴィスは足が(すく)んだ。無意識に(つか)へ手をやる。


 〈あらあら、木の下が怖くなっちゃったのに、今から森へ入んなきゃいけないのねー。たいへーん〉

 魔剣となった女騎士に茶化されても、怖いものは怖い。


 〈森の中には毒蛇とか飢鬼蜂(うえきばち)とか、熊とか狼とか、普通の生き物でも、キケンなのがいっぱい居るものねー〉

 ……ちょ、ちょっと、脅かさないで下さいよ。


 〈何よ。忠告してあげてるんじゃない。毒のある毛虫とか百足(ムカデ)とか、小さくても危ないし、三界の魔物以外の魔物や魔獣も居るかも……って言うか、今日の任務はそれを倒しに行くことだし〉


 ……えっ、そんな、わざわざ危険がわかってるとこに行くんですか?

 〈あなた、騎士の仕事を何だと思ってるの? シャンとしなさい〉

 女騎士ポリリーザ・リンデニーが、もう何度目かわからない盛大な溜め息をつく。


 〈森に()みついた魔獣とかを倒して、村人がまた森から(かて)を得られるようにするのよ〉


 「お兄ちゃん、ボーっとしてないで。みんな行っちゃうよ」

 「単独での留守番は危険だ。遅れるなよ、ナイヴィス」

 ワレンティナにつつかれ、隊長に警告され、ナイヴィスは震える足を森へ踏み出した。膝が固まったように、足が上がらない。靴の裏で地面を擦りながら前に進む。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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