67.禍巣食う森
禍巣食う森
草に覆われた休耕地。その向こうに森が待ち構えている。鳥と蝉の声が賑やかだ。
以前は村人が木の実やきのこ、薬草などを採りに入っていたが、二、三年前から魔物が出るようになった為、近付かないようにしていると言う。
村で戦えそうなのは、狩人唯一人。
一人ではどうにもできない。彼の子供たちもまだ幼いので、狩り場を変えた。
念の為、近くの畑も耕作をやめ、すっかり荒れ地になっている。
「害意 殺気 捕食者の姿 敵を捕える蜂角鷹の眼
敵を逃さぬ蜂角鷹の眼 詳らかにせよ」
ムグラーが【索敵】を唱えた。
魔法で知覚を拡大した眼で、鬱蒼と生い茂る森を凝視する。
隊員たちは静かに、ムグラーの探知を待つ。
「視力の届く範囲には居ません。もっと奥でしょう」
肉眼でも霊視でも「敵」の姿は見つからなかった。
ナイヴィスは足が竦んだ。無意識に柄へ手をやる。
〈あらあら、木の下が怖くなっちゃったのに、今から森へ入んなきゃいけないのねー。たいへーん〉
魔剣となった女騎士に茶化されても、怖いものは怖い。
〈森の中には毒蛇とか飢鬼蜂とか、熊とか狼とか、普通の生き物でも、キケンなのがいっぱい居るものねー〉
……ちょ、ちょっと、脅かさないで下さいよ。
〈何よ。忠告してあげてるんじゃない。毒のある毛虫とか百足とか、小さくても危ないし、三界の魔物以外の魔物や魔獣も居るかも……って言うか、今日の任務はそれを倒しに行くことだし〉
……えっ、そんな、わざわざ危険がわかってるとこに行くんですか?
〈あなた、騎士の仕事を何だと思ってるの? シャンとしなさい〉
女騎士ポリリーザ・リンデニーが、もう何度目かわからない盛大な溜め息をつく。
〈森に棲みついた魔獣とかを倒して、村人がまた森から糧を得られるようにするのよ〉
「お兄ちゃん、ボーっとしてないで。みんな行っちゃうよ」
「単独での留守番は危険だ。遅れるなよ、ナイヴィス」
ワレンティナにつつかれ、隊長に警告され、ナイヴィスは震える足を森へ踏み出した。膝が固まったように、足が上がらない。靴の裏で地面を擦りながら前に進む。




