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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第三章 討伐の任務

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63.提案と回答

 「お兄ちゃーん、お昼、食べられそう?」

 声を掛けながら、ワレンティナが部屋へ入って来た。


 「えっ? ウソッ? お兄ちゃん、仕事してんの? 身体、大丈夫?」

 「えっ? あ、あぁ、大丈夫だ」

 ナイヴィスは、机の上を片付けながら答える。丁度、おかみさんの証言を一通り書き終えたところだ。


 窓の外へ目を遣ると、影はすっかり短くなっていた。


 「隊長に休めって言われたら、ちゃんと身体を休めないとダメなんだからね」

 「ティナは何してたんだ?」

 「私? 村の子と遊んでたよ。鬼ごっことか、駆けっことか」


 ……それ、身体は全然、休まってないんじゃないか?

 声に出すと面倒なことになるので、「ふーん」とだけ返した。

 魔剣がその心を読んで笑う。


 この家の家族と食卓を囲みながら、ナイヴィスは、村長や他の村人にも話を聞いた方がいいと思った。

 可能なら、三界の魔物と化した男の母親や姉妹、親戚にも。

 流石にそれを独断で行っては、問題になるだろう。


 食後、ナイヴィスは許可を得ようと、隊長に相談した。

 「…………うーん」

 ソール隊長は、ナイヴィスの説明に渋面を作った。


 ……もしかして、越権行為で、してはいけなかったんでしょうか?

 〈違うみたいよ〉


 「かなり、大規模な調査になるな。我々本来の業務をしながら、片手間にできるようなことではない。一度、裁判所や他の部署にも相談しよう」

 「……そうですか」


 隊長は、ナイヴィスが作った報告書の束をペラペラめくった。

 「目の付けどころはいいぞ。我々の職掌(しょくしょう)からは外れるから、すぐには実行できんがな」

 「えーっと……ありがとうございます」

 イイ笑顔で褒められたが、ナイヴィスの表情は冴えなかった。


 〈あらあら、アテが外れて残念だったわねー。大好きな書類仕事、なくなっちゃった〉

 魔剣がくすくす笑う。

 ナイヴィスはこっそり溜め息をついた。


 する事がなくなってしまった。

 ナイヴィスは魔剣に勧められるまま、外へ出た。


 丁度、トリアラームルスとチィトゥィーリェリーストが巡邏(じゅんら)しているところだった。

 小走りに駆け寄り、礼を言う。

 「お礼が遅くなってすみません。お二方のお蔭で、命拾いしました。ありがとうございました」


 「もう大丈夫なのか?」

 「はい、お蔭様で……」

 「うん。そのことは、そんな気にしなくていいよ。手に負えないと思ったら、一時退却するか、応援を呼ぶか。君は適切な時に正しい判断をしたんだ」


 トリアラームルスはやわらかな笑顔で、ナイヴィスの頭を撫でた。丸っきり子供扱いだが、大きく力強い(てのひら)は心地よく、悪い気はしなかった。


 〈彼、三十路(みそじ)手前のあなたが子供に見えるくらい、長く生きてるのね〉


 ……長命人種と言うことですか? リーザ様のお知り合いではないんですね?

 〈知らない。私は自分が何年、物置暮ししてたのかもわからないのに。姫君は長命人種であらせられるから、百年や二百年じゃ、そうお変わりないし〉


 ……今、印暦二二一三年の七月です。

 〈ふーん。じゃあ、百二十年くらい寝てたのね〉

 そんな遣り取りが、ナイヴィスの頭の中で、瞬時に交わされる。


 「初陣(ういじん)なんだってな。いきなり三界の魔物と対峙して、殺されたり取り込まれたりせず、無事に生き残れただけでもスゴイぞ」

 「いえ、あの、お二方が来て下さらなかったら、多分……」

 チィトゥィーリェリーストに褒められ、ナイヴィスは慌てて否定した。


 「まぁ、そう謙遜するな。恐怖に(すく)まず、三界の魔物の断片をきちんと始末するのは、なかなか勇気が要ることなんだ」

 「怖かったろうに。よく頑張ったね」

 よしよし、とトリアラームルスは、ナイヴィスの頭をわしゃわしゃ撫で、巡邏(じゅんら)の仕事に戻った。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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