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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第三章 討伐の任務

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46.肉色の何か

 「お嬢ちゃん、かわいいねぇ」

 その声に、ナイヴィスは言い知れぬ不安に駆られ、魔剣の柄に手を掛けた。


 〈どうして降りて来ないと思う?〉


 ……わかりません。

 ナイヴィスは即答した。


 〈上からの方が、攻撃しやすいからよ〉


 「えっ? 攻撃?」

 思わず口に出した瞬間、林から何かが飛んで来た。

 ワレンティナが後ろに跳び退がる。一瞬前まで立っていた場所に、何かが斜めに突き刺さった。


 肉色の太い綱……いや、もっと生き物に近い。植物の(ツル)のようにも、人の腕を()じったようにも見える。

 捻じれた何かは、瞬く間に林へ戻った。


 ワレンティナが剣を構えたまま、呪文を唱える。

 「夢醒まし、石よ意志持ち、地より出で……」

 「援護する。ムグラー!」

 「はッ!」


 隊長とムグラーが散開し、ワレンティナの左右、斜め前に立つ。二人は同時に呪文を唱えた。

 「想い磨ぎ 光鋭き……」


 「……頚木(くびき)逃れて、地より降れ」

 先にワレンティナの術が完成し、周囲の土が耕されたように乱れ、大小様々な石が飛び立つ。

 足下から樹上へ、飛礫(つぶて)が襲う。石の雨が上下逆に降るような激しい攻撃に、木々の枝が音を立てて次々と折れる。


 「……槍と成せ」

 【光の槍】が二本、樹上の一点に吸い込まれて消えた。手応えを得た隊長が、樹冠(じゅかん)を見上げたまま問う。

 「やったか?」

 「いえ、まだです……来るッ!」

 ムグラーは【索敵】で拡大した視力で、敵の姿を捕えて叫んだ。


 捻じれた何かが、数本同時に三人を襲う。

 今度は(かわ)さず、三人は剣で()いだ。


 「広がれッ、(やいば)の網ッ!」

 鋼の剣が、ワレンティナの力ある言葉に応える。

 刀身が糸のように(ほど)け、網目状に広がった。肉色の綱が網に触れる。


 捻じれた何かが血飛沫(ちしぶき)を上げながら、樹上へ引っ込んだ。

 鋼糸の一本一本が、刃の切れ味を保ったまま、網を成していた。攻防一体の網が、逃げるモノに追い(すが)る。


 ワレンティナが柄を引くと、刃の網が絞まった。包まれた部分が千切れ落ちる。地に落ちた肉色の何かは、血染めのボロ雑巾と化していた。

 赤黒い血溜まりが林床(りんしょう)を汚す。


 隊長とムグラーも、飛来した何かを断ち切った。切り口から粘度の高い鮮血を噴き出し、樹上に引っ込む。

 ナイヴィスは、地に転がったモノを見て言葉を失った。


 〈何してるのッ! 早く私を抜いてッ!〉

 魔剣の叫びで、弾かれたように鞘を外す。


 トルストローグが、ナイヴィスを庇う位置に立って言う。

 「ナイヴィス、俺たちの攻撃は届かんぞ?」


 ワレンティナの【石雨】に打たれた枝が、音を立てて落ちる。


 「えっ、でっでも、あの、あれっ……」

 ナイヴィスは、恐怖に(すく)み、言葉もままならない。


 地に落ちたモノを一瞥し、隊長が顔を(しか)めた。


 地面を赤黒く染めるそれは、人間の指先だった。

 綱のように捻じれ、大きさは大人の腿程もあるが、先端には垢の詰まった平たい爪が付いている。


 再び、樹冠から肉色の綱が伸びる。

 三人の剣が(あやま)たず、斬り飛ばした。


 剣を振り切った瞬間、下から肉色の塊が跳んだ。防禦が間に合わず、ムグラーとワレンティナが、先に切り落とした指先の体当たりをまともに喰らう。


 隊長に(かわ)された指先が、その勢いのまま、ナイヴィスたちの方へ飛んで来る。


 トルストローグが【盾】を展開し、粘つく血飛沫の尾を引き、飛来するそれを弾いた。

 「お、おい、何だよ、これ……」


 〈三界の魔物……肉体を持ってるわ〉


 「さっ……さんかいの、まもの……」

 ナイヴィスは、震える声で退魔の魂の言葉を復唱した。


 隊長とトルストローグが、驚いた顔を向ける。ムグラーとワレンティナは同時に立ち上がり、肉塊と距離を取った。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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