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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第三章 討伐の任務

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45/91

45.小さな林で

 この区画には他に農具小屋はなく、昨日同様、薮の雑妖を退治して回った。

 茄子(ナス)畑の隣は休耕地で、一面が雑草に覆われていた。草地に分け入ると、バッタが飛び出す。柵で鳴いていた蝉も飛び立つ。


 生い茂った葉陰にも、雑妖が居た。

 毎日、夜間に発生して、昼には消えるのか。目につく雑妖は、どれも存在そのものが希薄で、小さく、形も成さない。


 トルストローグが、手で草の葉を掻き分ける。

 葉陰に日が射し、靄のような雑妖が消滅した。


 休耕地にも、灌木(かんぼく)のような大型の草が生えている。それに葉の大きな蔓草が巻き付いて出来た茂が、あちこちにあった。


 「落ち着いたようだな。【白銀の網】は張れそうか?」

 五つ目の茂みで、隊長に声を掛けられた。

 完全に腫れもの扱いだが、ナイヴィスには、それを不快に思う気力すらなかった。


 「多分、大丈夫です」

 自信のなさに声が小さくなる。


 「昨日いっぱいしたし、大丈夫よ」

 ワレンティナがノーテンキに笑う。


 隊長の気遣いも、ワレンティナの笑顔も、ナイヴィスの心に重くのしかかった。


 顔を上げると、トルストローグと目が合った。力強く頷いて、両掌を差し出された。

 ナイヴィスは幽かに首を動かし、震える手を差し出した。


 そんな有様で唱えた呪文でも、【白銀の網】は正しく発動した。

 青い実の生る茂みを絡め、勢いよく引く。昨日と同じ。雑妖が音もなく消えた。


 「白銀(しろがね)の蜘蛛の糸編み網と成し (あや)かしを絡める(あや)現世(うつしよ)の物は掛からじ 魔を捕る網よ」

 ワレンティナもムグラーと組み、声を合わせて【白銀の網】の呪文を唱える。


 二人の手の間に【白銀の網】が現れる。

 少しずつ距離を空け、隣の茂みを囲む。

 ワレンティナはゆっくりと網を広げるが、風に煽られたように揺れ動き、捻じれて絡まった。


 「あ、また……」

 集中が切れたのか、魔力の網が消えてなくなる。

 隊長が苦笑した。

 「うむ。ここまでは良いのだがなぁ……」



 日が天高く昇り、影は足下で縮こまっている。

 「そろそろ、飯にするか」

 隊長が小さな林を見遣る。


 樹木は二十本足らず。中心に平らな岩がある。

 この畑を耕作する年には、村人たちの休憩場所になっているのだろう。

 静かな場所だ。近付くと、岩の傍に湧き水が見えた。


 ワレンティナが一番乗りで、林に足を踏み入れる。

 「おなかすいたー。早く食べよー」

 「待てッ!」

 ムグラーが鋭い声で制止した。【索敵】の目が樹上を警戒する。

 ワレンティナは足を止め、剣を抜いた。


 「騎士様、そんなおっかない目で睨まんで下さいよ」

 樹木の上から、のんびりした男の声が聞こえた。

 ナイヴィスは、人の良さそうな声にホッとした。


 隊長とトルストローグが、抜き身の剣を手に、ナイヴィスの前へ出る。二人も、枝葉が茂る樹上を注視している。


 「ここは涼しいし、水もありますよ」

 声は招くが、姿は見えない。

 騎士たちは、動かなかった。

 場に緊張の糸が張り詰める。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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