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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第二章 退魔の任務

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37.道守りの歌

 「星巡り道を示す 行く手照らす 光見よ

 迷う者 (みな) 見上げよ

 (とお)らう風の慫慂(しょうよう)受け

 翰鳥(かんちょう)(まなこ) 鵬程(ほうてい)見晴らす

 大逵(たいき)際涯(さいがい)目指す旅を(ほが)う」


 凛とした声が、朝靄の中を流れ、力ある言葉を紡ぎ出す。

 言葉に魔力を乗せ、魔を退ける壁を(うた)い、創り出す。

 細い手が掲げる杖は、白山羊の頭部を模した飾りが三つ。

 ムルティフローラ現国王の第七王女の(しるし)は三つ首山羊だ。


「この道に魔の影なし 行く手清める 光受け

 弱き者 皆 守れよ

 (あわい)に魔は消え 草枕(くさまくら)

 迫る獣を(かわ)して道行く

 大逵(たいき)際涯(さいがい)目指す旅を(ほが)

 日輪(ひのわ)追い 影を(はか)り 四方(よも)の示す (かた)を見よ

 弱き者 皆 (いだ)けよ

 (くが)行く足に祈誓(うけ)う旅

 樹雨(きさめ)避けて道に(したが)

 大逵(たいき)際涯(さいがい)目指す旅を(ほが)う」


 四つ辻の中央で一度、呪文を唱え、結界の起点を指定する。【歌う鷦鷯(ミソサザイ)】学派の呪文は、全て歌だ。

 言葉と魔力と旋律が、魔を退ける不可視の壁を築き上げる。


 「(こと)に乗せ 道を清め 行く手守る 光仰げよ」


 王女は杖の石突きを地に突き立てた。

 石突きは山羊の蹄型で、四つ辻に足跡が刻まれる。

 近衛騎士が周囲を固め、王女は呪文を唱えながら、歩き始めた。


 【道守り】は、呪文を詠じながら歩いた道から魔物を排除し、侵入を阻止する結界の術だ。【道守り】を敷いた道で囲まれた区画も、同時に守られる。

 三つ首山羊の王女(トリ・ガローフ・カザー)は、農村を中心として、その周囲に広がる広大な農地と牧草地を囲む為、出発した。


 村長ら、主だった村人と緑の手袋小隊は、王女一行の姿が見えなくなるまで見送った。

 「さぁ、我々は、内に潜む魔物を祓うぞ」

 ソール隊長の声で、ナイヴィスは我に返った。


 〈歌にうっとりしてる場合じゃないでしょ〉


 魔剣ポリリーザ・リンデニーが、隊長の命令に説明を加える。

 物質的な身体を持たない魔物は、霊視力のない者には視えない。

 日のある内は(やぶ)(くさむら)に潜み、穢れと魔力を喰らって際限なく育つ。


 魔物が物質界の生き物を喰らえば、実体を得て、存在がこの世に定着する。

 完全に実体化し、肉体が完成した魔物を魔獣と呼ぶ。

 肉体を備え、この世に定着した魔獣には、日中に活動する種もある。

 魔力を持つ生き物を喰らえば、その肉体はより大きく強くなり、際限なく育つ。また、この世での肉体で、普通の生物同様、繁殖もする。


 この世で生まれた魔獣の子孫は、最初から肉体を備えているが、魔物から成った魔獣よりも弱い。経験も喰らった魔力も不足しているからだ。

 魔物も魔獣も、体が大きなモノは、強い。

 騎士団だけでなく、町や村の自警団、更にはトルストローグが以前していたような、民間の専門職などが、それなりの頻度で魔物や魔獣を退治している。


 〈だからね、そんな心配しなくても、私より強い魔物や魔獣なんて、そうそう居るもんじゃないから〉

 自信満々に言われたが、その魔剣を振るうのは、文官上がりのナイヴィスなのだ。

 カボチャ畑では、魔獣と接敵する前にすっ転んでしまった。

 己というものをよく理解しているナイヴィスには、何ひとつ安心できる気がしない。ナイヴィスは小さく溜息を吐いた。

 〈そんな心配しなくても大丈夫よ。王女殿下に【道守り】の後、【空の守り(うた)】も掛けていただけたら、楽勝になるんだから〉


 ……じゃあ、それまで出発を遅らせてもよかったんじゃないんですか?


 〈王女殿下だけ働かせて、自分は楽するつもり?〉


 ……あ、いえ、そんなつもりじゃ……


 〈いいから、さっさと行きなさい。どんな魔物や魔獣が居るかなんて、見てみないとわかんないんだから〉

 気が付けば、少し遅れている。ナイヴィスは、慌てて緑の手袋小隊の後を追った。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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