32.迷惑掛ける
〈あなた、ホントに後ろ向きねぇ。与えられた環境で最善を尽くそうとか思わないの?〉
……そんなこと言われましても、与えられた環境って言うか、降って湧いて巻き込まれて引きずり込まれたと言うか……大体、二十七にもなって、こんな真逆の方向に転職って、身が持ちませんよ。
〈年寄り臭いこと言わないの。どうして自分にはできないと思うの?〉
……わかりきったこと聞かないで下さいよ。
今回の任務には、幼い頃から苦手なことばかりが、ぎっしり詰まっている。
未経験で適性もなく、出来る筈もない自分を支える為に、緑の手袋小隊のみならず、赤い盾小隊の手までも煩わせている。
ナイヴィスを外した方が、上手くいきそうなものだ。
〈え? 何? 「自分なんかの為に誰かの手を煩わせるのが申し訳ない」って? 何様のつもり?〉
……何様でもないから、周りの人にそこまで手厚く手間を掛けさせて迷惑掛けるのが、嫌なんですよ。
〈バカじゃないの? あなたは「魔剣使い様」なのよ。迷惑掛けたくなきゃ、さっさと一人前になればいいじゃない〉
……誰のせいで、魔剣使いをさせられてると思ってるんですか?
ナイヴィスの心に暗い怒りがこみ上げる。
〈私の声を聞いて、私を手に取ったのは、あなたよ〉
……あんなの、罠みたいな騙し討ちで……
〈自分の意志じゃないって? 触るなって言われてたのに、触ったのはあなたよね?〉
……えぇ、上司の言いつけを守らなかった私が悪うございましたよ。
〈そう言うこと言ってるんじゃあないのよ。私、軽かったのよね?〉
……刃がないんですから、そりゃ、軽いでしょうよ。
何を言い出すのか。
女騎士ポリリーザ・リンデニーの心には、幾重にも砦があり、ナイヴィスの方からは、ほとんど読み取れない。
ポリリーザ・リンデニーが自ら寄越す思考を押しつけられるだけだ。
ナイヴィスは、心を読ませない砦の築き方を知らないので、読まれ放題。
この理不尽さも、怒りの燃料だった。
〈退魔の魂はね、一人の全存在を変換した武器なの〉
……知ってますよ。
〈何を知ってるの? だから、ホントはすごーく重いのよ。普通の人はどんなに腕力が強くても、持ち上げることもできないの〉
魔剣使いが死ねば【転移】が発動して棚に戻るけど、と棚に帰還する様子を再現して付け加える。
帰還することは嘘ではないようだが、重量に関しては嘘か真か、ナイヴィスには図り兼ねた。
〈あ、疑ってる。だったら、外して誰かに持たせてみなさい〉




