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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第二章 退魔の任務

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25.三枝と巡邏

 街道沿いの村で昼食と休息をとる。

 三つ首山羊の王女(トリ・ガローフ・カザー)は、村長の家の一室で休憩する。


 赤い盾小隊と緑の手袋小隊はその間、交替で昼食を摂り、混合で村の警備にあたる。

 ナイヴィスは、一緒に巡邏(じゅんら)する相手を見て恐縮した。


 赤い盾小隊の副隊長、三枝(トリアラームルス)だ。

 隊長の双羽(ドヴァーピェーリャ)は、チヌカルクル・ノチウ大陸の東の果ての島国・日之本帝国(ひのもとていこく)に長期派遣され、滅多に帰国出来ない為、実質的に隊長と言っていい。


 トリアラームルスは、筋骨逞しい偉丈夫だ。短く刈った黒髪が、(いか)めしい顔を更にコワモテにしている。

 若いのか年を取っているのか、判然としない。


 「あ、あの、ど、ど、どうも、宜しくお願いします」

 「うん。よろしく。この辺は去年やったばかりで、まだキレイだから、そんなに心配しなくていいよ」

 (いか)つい顔に似合わぬやさしい物言いに、ナイヴィスは少し、肩の力が抜けた。


 「今回が、初めてなんだって?」

 「は、はい」

 トリアラームルスは、ナイヴィスより頭ひとつ分、背が高い。並んで歩くだけで、威圧感があった。

 根本的な「存在の持つ力」が違うのかもしれない。


 ナイヴィスは、短くなった影を見詰めて歩いた。

 「三界(さんかい)の魔物は厄介だから、我々に任せてくれていいよ。君たちは、他の魔物をなんとかしてくれるだけで充分だ」

 「いいんですか? 私はみんなから、魔剣で三界の魔物にトドメを刺すようにって、言われたんですけど……」


 隊長や隊員だけでなく、当の魔剣ポリリーザ・リンデニーにまで、念押しされた。

 ナイヴィスはその為だけに、空調管理室の文官から、烈霜(れっそう)騎士団の魔剣使いに転属させられたのだ。


 「でも、初めてなんだし、無理に戦わなくてもいいよ。焦って怪我すると、却ってよくないからね」

 「そう言うものなんですか?」


 見るからに屈強な、叩上げの武官から意外なことを言われ、ナイヴィスは困惑した。

 もっとヤル気を出せとか、逃げるなと言われるかと思っていたのだ。


 「最初は誰だってそうだよ。生き残って経験を積んで、それからだ」

 「視えるようになった三界の魔物は、強いって聞きました。最初は、弱い魔物にしてくれればよかったのに……」


 隣を歩くトリアラームルスのやさしい言葉に、つい、弱音が口を突いて出る。

 トリアラームルス副隊長は、複雑な表情で遠く……国土を囲む山脈に目を遣った。


 「視えない魔物を、どうやって倒すか、知っているか?」

 「えっ? いいえ」

 「三界の眼をお借りするんだ。【刮目(かつもく)】で七日間、嫌でも視えたままになる……何もかもが、な」


 【導く白蝶】や【飛翔する蜂角鷹(ハチクマ)】には、術者の視力を他人に貸す術がある。

 肉眼の視力……物質を見る力を借りた場合は、瞼を閉じれば見えなくなる。


 霊視力や三界の眼を貸す側は、訓練や日々の慣れによって知覚を認識から外し、用のない時は「視なかったこと」にできる。

 だが、借りた者は、その知覚を遮断できない。


 「視えたまま……ですか? えーっと……」

 それのどこに不都合があるのかわからない。


 〈あなたって、お勉強はできるのに、バカよね。経験不足のせい?〉


 ……どう言うことですか?

 流石にムッとすると、魔剣は溜め息交じりの思念を返した。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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