表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛翔する燕  作者: 髙津 央
第一章 最初の任務

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/91

23.追儺の儀式

 毎年、年末になると、官吏は全ての業務を休止し、総出で城の大掃除をする。

 城に張り巡らされた結界の点検や、物理的な汚れの除去の後、追儺(ついな)の呪歌を歌い、霊的な(けが)れも(はら)い清める。


 城内だけでなく、王都全体、辺境の小村に至るまで、家々では汚れと穢れを清め、三界(さんかい)の魔物を弱体化させる。


 文官だったナイヴィスには、この「後方支援」しか、経験がない。

 元来、キレイ好きなナイヴィスにとって、一年で最も楽しみにしている業務だった。


 ここに封じられた三界の魔物は、あまりにも強大な為、僅かずつ核を縮小させる他ない。


 ナイヴィスたちが大掃除をする間、王城の地下深く、封印の間では追儺の儀式が行われ、国内で最高の力を持つ者達が直接、三界の魔物を削っていた。


 王都を中心とした国土全体から、封印の魔法陣の中心に力が注がれている。

 今を生きる人々の生命力と魔力、亡くなった人々の【涙】に残る力。


 それらを総動員し、十二人の強力な術者が協力してやっと、一度だけ、最大最強の魔物の核を滅する追儺の術を発動し得るのだ。

 力の充填に約一年の時間が必要で、その間に瘴気(しょうき)も蓄積してしまう。


 完全に消滅させるには、何千年の歳月を要するのか、誰にもわからない。


 王族は随時、地方の町や村へ出向き、結界の保守を行う。

 一般人の魔力では、せいぜい自分の周囲数歩分、どう頑張っても一部屋か、家一軒分が限度だ。


 王族の魔力を()ってすれば、町ひとつ丸ごと、或いは、村を周囲の農地や牧草地も含めて守ることができる。

 後は、中の魔物を倒し、汚れと穢れを清めれば、それなりに安全が保たれる。


 「ナイヴィス、捕り物では戦う機会がなく、今回が実質、初陣だ」

 「は、はい」

 隊長が、ナイヴィスの両肩をがっしり掴む。

 「死ぬなよ」


 ……それは、魔物に言っていただかないと……


 〈バカね。食べられて魔物の養分にならないように、最悪、持ち場を捨てて逃げなさいって言われてんのよ〉

 「えぇッ?」


 「万一、ダメだとなったら、我々に構わず逃げるんだ。退魔の魂を渡してはならんぞ」

 「えっ……あの……」

 困惑するナイヴィスに、従妹のワレンティナが笑顔を向ける。


 「私達は防禦の術も色々使えるし、三界の魔物じゃない普通の魔物や魔獣とは、いっぱい戦ったし、逃げるのも上手いよ」

 「心配すんなって。俺たちがちゃんと守るから」


 ワレンティナは、十二歳の頃から町の自警団に参加し、戦ってきた。

 新年に雪晶(ニクス)一族が王都の本家に集まると、その手柄話に夜明けまで付き合わされた。


 トルストローグも、旅人の護衛や遺跡の調査で、数多くの魔物と戦った経験がある。


 「ナイヴィスさんは、トドメだけ、しっかりお願いしますね」

 隊長とムグラーは元々正騎士だ。


 〈君一人、素人なのよねー。心配だわー〉

 ……そう思うんなら、何故、私にくっついてるんですか? ムグラーの方がずっと適任じゃありませんか。代わって下さいよ。


 〈わかってないのねー。城青(じょうせい)警備隊の隊長さんから教えてもらったでしょ?〉

 ……あ、でも、ムグラーたちは相性が合うか、調べてませんよね?

 〈私の声が聞こえもしないのに、合うワケないでしょ〉

 即答され、ナイヴィスはぐうの音も出なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
【関連が強い話】
野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ