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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第一章 最初の任務

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22.三界の魔物

 五日後、カボチャ泥棒に判決が下った。


 裁判官は【(ただ)しき燭台(しょくだい)】の記録を見て本人の言い分を聞き、被害の大きさなどを考慮し、法に照らして判決を下す。

 嘘も言い訳も通用しない代わりに、冤罪(えんざい)も発生しない。


 「理由を説明して、水晶か何かで対価を払えば、分けてもらえたかも知れないのに、何で盗んだんでしょうね?」

 「知りたければ、後で判決文でも見せてもらえ。それより、次の任務だ」

 ソール隊長は、ナイヴィスの疑問を切って捨て、命令書を広げた。


 いつにも増して、隊長の顔が険しい。

 命令は「三つ首山羊の王女(トリ・ガローフ・カザー)殿下に同行し、三界(さんかい)の魔物を討伐せよ」だった。


 「護衛ですか?」

 「討伐だ」

 ムグラーの質問に隊長が簡潔に答えた。


 〈やっと私の出番ね〉

 ……出番ねって、あの、それって……?

 ナイヴィスの脳裡(のうり)にウキウキと弾んだ声が響く。


 同時に、女騎士ポリリーザ・リンデニーの知識が流れ込む。


 王城の地下深くには「三界(さんかい)の魔物」と呼ばれる特殊な魔物が封印されている。

 三界の魔物は、存在の核を物質界と幽界、冥界の三つの世界に置く魔物の総称だ。

 遥か(いにしえ)、遠く離れたアルトン・ガザ大陸の大国で生み出された魔法生物。


 魔道士に対抗する為に作られた生物兵器だ。

 瘴気(しょうき)を撒き散らし、人々の暗い情念と瘴気で増殖し、魔力を持つ者を喰らい、成長し続ける。


 存在の位相をずらして姿を隠し、攻撃を(かわ)す。

 核を破壊しない限り、周辺の魔力を糧に膨張しつつ再生する。

 通常の武器では、物質界の肉体を破壊するに留まる。魔法や魔法の武器ならば、幽界までは届くが、冥界には届かない。


 三つの世界に同時に届く武器が必要だった。


 三界の魔物は、戦場で爆発的にその数を増し、やがて軍の制御を離れ、人の手を離れ、作成時に与えられた本能に従い、破壊と増殖を繰り返した。


 人間は停戦し、三界の魔物に対抗すべく各国が協力し合った。

 先に三界の魔物に蹂躙(じゅうりん)されたアルトン・ガザ大陸からは魔力が枯渇し、皮肉にも三界の魔物の弱体化をもたらしていた。


 一人の全存在を変換した「退魔の魂」と呼ばれる武器が開発され、多くの人間が自ら武器となり、三界の魔物への反撃が始まった。

 三界の魔物は「退魔の魂」によって、その多くが消滅した。


 千年以上の長きに(わた)る戦いの末、最初に作りだされた最も大きく強力な三界の魔物をチヌカルクル・ノチウ大陸西部、ラキュス湖の北方に封じた。

 ムルティフローラ王国は、その封印の維持の為に建国されたのだ。


 隊長が、重々しく告げる。

 「三つ首山羊の王女(トリ・ガローフ・カザー)殿下は、三界の眼ではないので、そこそこの魔物を相手にすることになる」


 三界の魔物が発する瘴気(しょうき)が穢れに触れて(こご)ると、新たな三界の魔物が生じる。

 結界では、瘴気を封じることができない為、現在でもムルティフローラ国内のあちこちで発生する。


 死者の怨念や、穢れから発生した直後の三界の魔物は虚弱だが、並の人間の眼では捉えられない。

 この世界の穢れや生物、魔力を持つ者を喰らい、力を付けると、通常の霊視力でも視えるようになる。

 それを放置し、より力を付けさせると、肉眼でも見えるようになるが、並の戦士では太刀打ちできなくなる。


 野茨の血族は強い魔力だけでなく、三界の魔物を検知する能力も持つ。

 物質界、幽界、冥界の三界を同時に視る特殊な視力で、「三界(さんかい)()」と呼ばれる。

 封印の監視者として王家を創設したが、三界の眼の能力者は、稀にしか生まれない。


 「みんな、ナイヴィスをしっかり援護してやってくれ」

 「えっ? えぇッ? 私が戦うんですか?」

 「魔剣ポリリーザ・リンデニー様は、退魔の魂だ。忘れたのか?」

 「あ、いえ、そうでした……」

 〈ちょっと、私の話、聞いてなかったの?〉


 一瞬で大量の情報を流しこまれ、ナイヴィスには把握しきれなかった。


 ソール隊長が、ナイヴィスの細い両肩を叩き、励ます。

 「三界の魔物にトドメを刺せるのは、退魔の魂だけだ。我々が弱らせるから、安心しろ」

 「……は、はい、頑張ります」

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
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野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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