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飛翔する燕  作者: 髙津 央
第一章 最初の任務

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20/91

20.罪人待機室

 烈霜(れっそう)騎士団の詰所は、王都南裁判所と隣接している。


 入口の警備兵が敬礼した。

 隊長は気さくに応じ、ナイヴィスは(かしこ)まって一礼した。


 〈いちいち堅苦しいわ〉

 ……でも、そんな……


 正騎士になって三カ月。

 武官式の挨拶に慣れていない。そして、自分より警備兵の方がずっと強い。威張るどころか、彼らと対等に接することも(おそ)れ多い気がした。


 隊長は、老人を罪人の待機室に入れた。

 「じゃ、係の者が来るまで、ここでお待ち下さい」

 隊長とナイヴィスが待機室前に立ち、警備をする。


 壁・床・天井の全てに【防護】と【消魔(しょうま)】の術が掛かっている。

 この中で魔法を使っても、効力を発揮することは、ほぼ不可能だ。


 〈悪いコトした王族なら、こんな部屋、軽くぶっ飛ばしちゃうんだけどね〉

 魔剣が、実際に起きた事件をナイヴィスの脳裡(のうり)で再現する。


 ナイヴィスの眼は、現在の待機室を見ているが、その視界には、王族の男性が何かの術で壁を破壊する様子が、重なって見えた。

 瓦礫(がれき)の下敷きになり、何人もの兵士や罪人が巻き添えになる。

 男性はそれに構わず、現場から去った。


 部屋の防護は、術を上回る力を加えれば、打ち破ることが出来るのだ。


 〈これね、【鳥撃(とりう)ち】だったのよ〉

 「えっ?」


 【鳥撃ち】は【急降下する(わし)】学派の初歩的な術だ。

 魔法の矢で雀などの小鳥を落とす。

 一般人ならどう頑張っても、鴉や鳩を撃ち落とす程度の威力にしかならない。


 ……あの、参考までに、この後、どうなったんですか?

 〈仕方ないから、このお方よりも強い王子様にお出まし願って、取り押さえていただいたの。下手に騎士団が頑張っちゃうと、却って民にも被害が広がるから。覚えといてね。逆らわずに、他の王族に助けを求めるのよ〉


 それには、心の中で強く同意した。


 ……王家のお方に逆らうとか、ムチャ言わないで下さい。

 〈騎士なんだから、そんな状況だってあり得るのよ?〉


 ………………………………えっ。


 ムルティフローラの王族は、桁違いに強い魔力を持っている。いや、強い魔力がなければ、王族とは認められない。

 王家の血を引く者は、身体のどこかに王家の紋章である野茨(のいばら)(あざ)がある。


 野茨の血族は、十歳になると試験を受ける。

 城に(そび)える「右の塔」に登るのだ。


 城の中庭に聳える左右の塔は、空調管理室の管轄外だが、ナイヴィスも常識として知っている。


 塔の入口の扉は、王家の血筋に反応する。

 野茨の血族でない者は、どれ程腕力や魔力が強くても、開けられない。


 塔内には百枚の扉がある。

 こちらは魔力に反応して開く。上層程、強い魔力を必要とし、七十枚以上開けられなければ、野茨の血族であっても、王族とは認められない。


 野茨の血族は、他の者より遥かに魔力が強い。

 王族と認められなかった者さえ、ナイヴィスの(かな)う相手ではなかった。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
【関連が強い話】
野茨の血族」 その後の護衛任務の話。
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