18.犯人を捕縛
翌朝早く、トルストローグの【跳躍】で現場へ跳んだ。
トルストローグが足音を忍ばせ、小屋の四方の木に呪符を貼る。
小声で呪文を唱え、呪符の力を解放すると、小屋一帯に【跳躍】禁止の結界が発生した。
突入は、隊長とムグラーで行う。
トルストローグは戸の横で待機。
ワレンティナとナイヴィスは、結界の外で魔獣や他の人間を警戒。
隊長は小屋の戸に手を掛け、無造作に開いた。ムグラーが戸を押え、開けたままにする。
「おはようございます」
「えぇッ?」
「しッ!」
ナイヴィスは思わず驚きの声を発した。ワレンティナに足を踏まれ、涙目で黙る。
話し声が聞こえるが、内容までは聞き取れない。
しばらくして、隊長は一人の老人と共に出てきた。
「儂は村の労働力を増やしてやろうと……」
「あぁ、はいはい、続きは王都でお伺いしますから」
隊長の合図で、二人も小屋に近付く。
老人は、左手首に吸魔の環をはめられていた。
環のサファイアに魔力を吸収され、思うように術を使えなくなる。
「この小屋もカボチャで建てたんだ。こんな役に立つ研究を……」
「はいはい、続きは専門の係に聞いてもらいますから。王都へ行きましょう」
隊長は老人の肩に腕を回し、親しげに話す。
老人は自分の立場が分かっているのかいないのか、自分の研究が如何に素晴らしいものか、熱く語り続ける。
「今はまだ小さいが、いずれは、もっと大きなカボチャで……」
「我々は武官で、難しいことはわかりませんから、王都で専門の係にお話し下さい」
「ふん。なら、さっさと連れて行け」
「おじいちゃん、一人でこんな森の奥まで来たの?」
ワレンティナが無邪気に聞く。
「ん? あぁ、そうだ。あれに乗って来た」
老人が節くれだった指で、跳び縞を差す。
本来、乗用になる魔獣ではないが、術で支配すれば、それすらも可能になる。
結界の外に出て、隊長が指示を出す。
「ムグラーは村への報告、トルストローグ、ワレンティナは現場の保全、ナイヴィスと自分は、ご老人を王都へ。作業が終わり次第、王都へ戻れ。以上」
隊長とナイヴィスは、老人と手を繋いで【跳躍】した。




