11.犯人の目的
森の手前で、トルストローグが立ち止まった。
「ここからは、慎重に行こう」
物思いに耽っていたナイヴィスも、足を止める。
農道から森の奥へ、小道が続く。村人が、木の実拾いや狩りに行く道だ。
小道から外れた場所に、下草が踏みしだかれた跡が、森の奥へ続く。
跳び縞は体長こそ長いが、細身だ。森の中では、木々の間をすり抜けて走る。
ナイヴィスは、ふと思いついた疑問を口にした。
「跳び縞の口では、カボチャを食べられないんですよね?」
「そうっすね」
トルストローグが、鈍重な外見に似合わぬ軽い調子で応じた。
ワレンティナは、首を傾げた。
「それがどうかした?」
「今の時期のカボチャは、まだ固くて小さくて、人間が食べても美味しくありません」
「まぁな。もうちょい待てよって思うよな」
「跳び縞を使役してる人の目的は、何なんでしょう?」
「ん?」
「あれっ?」
そう言われて初めて、犯人の目的が不明なことに気付き、二人も考え込んだ。
少なくとも、食用や種子の採取ではない。
「まだ固いから、ぶつければ痛いけどね」
ワレンティナが、何でも武器にする【飛翔する鷹】学派らしいことを言う。
トルストローグは、その発想に疑問を呈した。
「そりゃ、痛いだろうけど、武器にするのはどうかなぁ?」
「なんでよ」
「わざわざカボチャなんか盗まなくても、石でもぶつけた方が、殺傷力は高いだろう」
「あぁ、そう言われれば、そうねぇ……」
そうなると次に考えつくのは、薬か道具の素材だ。
三人は【思考する梟】学派の薬を作る術を知らず、道具を作る各種学派の術も知らない。
未熟なカボチャで何をする気なのか。
犯人の目的がわからないことは不気味だが、ここで考えていても仕方がないので、森へ入ることにした。




